Cell-2020-brain-mapping

脳の様々なエリアは連携して思考や運動など様々な活動をコントロールしている。

しかし、今までの機能的MRI(functional magnetic resonance imaging, fMRI)や脳波(electroencephalogram, EEG)では、グリア等、様々な細胞の電気活動も一緒にひろうため、神経1細胞あたりの電気活動を観察する事はできなかった。

また、ホムンクルスが提唱されてから今まで、体の様々な部位の運動は、中心前回の異なる部位がそれぞれ司っているとされていたが、

神経一細胞あたりが、それぞれの体の動きに対してどのように神経活動を相互作用させているのかはよくわからなかった。

スタンフォード大学のWillettらは、微小電極アレイを使って、神経の電気活動を1細胞あたりで検証した。

この研究は、BrainGate2 pilot clinical trialの一環として行われた。

脳マッピング:手の運動を司る領域は、体全体の運動の時も連動して活動している

彼らは、2人の四肢麻痺の患者(1人は頚髄損傷、1人は筋委縮性側索硬化症, amyotrophic lateral sclerosis, ALS)の、前頭前皮質(prefrontal cortex, PFC)の中心前回(precentral gyrus)にあるhand knob areaを調べ、顔、頭、腕、足を動かそうとするときの同部位の神経活動の違いを検証した。

それぞれの場所を動かそうとするとき、hand knob areaの神経活動は異なったパターンを示した。

また、腕を上げる、肘を伸ばす、手首を曲げる、指を開くなど、異なった動きをそれぞれの四肢で行ったところ、hand knob areaの神経活動は、それぞれの四肢で同じようなパターンを示した。

この"compositional coding" は、四肢を動かそうとする動きをコンピューターで解読し、モーターによって動作するbrain-computer interface (BCI)へ応用できる。

My View

BCIは、部分的には成功していますが、体全体を動かすためには、脳全体のマッピングが必要かと思っていました。

今回の結果では、hand knob areaは、手の運動だけでなく、体の他の部分の運動を行うときにも連動して活動している事、その神経活動パターンに違いがある、との事。

この神経活動パターンを読み解く事ができれば、その部分だけの解読で四肢の動きも再現可能かも。

修練医時代には、ALSでlocked-in syndromeになってしまった患者さんにも何人かお会いしましたが、自分がその立場に置かれる事を想像すると、胸がつぶれる思いでした。

BCIの実現を心待ちにしています。

References

  1. Willett et al., Hand Knob Area of Premotor Cortex Represents the Whole Body in a Compositional Way.Cell. 2020 Mar 13. pii: S0092-8674(20)30220-8. doi: 10.1016/j.cell.2020.02.043.
  2. Cell Press. "Brain mapping study suggests motor regions for the hand also connect to the entire body." ScienceDaily. ScienceDaily, 26 March 2020.
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