神経活動が抗体を呼び、C1q依存性シナプス喪失を引き起こす
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)では、病初期から海馬などの一部の神経回路に過剰な活動がみられます。また、ADを含むさまざまな神経変性疾患では、古典的補体経路の開始因子であるC1qが脆弱なシナプスに沈着し、シナプス喪失に関与することが報告されています。 発達期の脳では、過剰に形成されたシナプスが神経活動に応じて除去され、成熟した神経回路が形成されます。特に発達期の視覚 […]
原著論文の紹介と感想
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)では、病初期から海馬などの一部の神経回路に過剰な活動がみられます。また、ADを含むさまざまな神経変性疾患では、古典的補体経路の開始因子であるC1qが脆弱なシナプスに沈着し、シナプス喪失に関与することが報告されています。 発達期の脳では、過剰に形成されたシナプスが神経活動に応じて除去され、成熟した神経回路が形成されます。特に発達期の視覚 […]
親としては、自分たちの子どもを分け隔てなく育てたいもの。 けれども、実際には、片方の子どもを贔屓してしまう……ということは、よく起こっているようです。 今回、アメリカ・Brigham Young大学(BYU)のDr. JensenとDr. Jorgensen-Wellsは、この問題について、メタ分析を行いました。 親は片方の子どもを贔屓しやすい 彼らは、これまで報告された論文のデータを基にマルチレ […]
ウイルス感染とアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) との関係は、これまでにも多くの報告があります [1, 2, 3] 。 ミクログリアは脳内の免疫細胞として日々働いているわけですが、ウイルス感染、特にサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus, HCMV)感染では、特徴的な変化が起こっているようです。 今回、アメリカ・ASU-Ban […]
「社会的に活動的な人は、健康で長生きする」という研究結果は、これまでにも多く報告されています [1, 2] 。 逆に言うと、「社会的に孤立している人は、病気になりやすい」という事にもなるわけで……。 今回、中国・Fudan大学の研究グループは、UKバイオバンクに登録されている血清データを元に、「社会的孤立や孤独が、疾病や死亡率に与える影響」について、生化学的に検証しました [3] 。 […]
加齢により、私達の記憶力は低下しますが、同時にミトコンドリアの機能も低下しています。 けれども、この2つの現象、実はつながっている可能性があったようです。 今回、中国・浙江大学(Zhejiang University School of Medicine)のDr. Maらの研究グループは、神経活動がミトコンドリアDNAの転写を促進し、記憶を改善することを発見しました [1]。 今回の発見 興奮‐転 […]
今年最初の一人抄読会は、今、私が最も気になっているテーマの一つ、細胞老化のお話から。 生物の加齢に伴い、脳内の細胞も老化していきますが、その老化に対する感受性や抵抗生は、細胞の種類や解剖学的場所によって様々です。 今回、アメリカ・Allen脳科学研究書の Dr. Zeng, Dr. Tasicらの研究グループは、マウスの脳内の細胞老化の、細胞毎や解剖学的部位毎の特徴について、シングルセルRNAシー […]
先日、頭部MRIで偶発的に見つかった片側視床の腫瘤性病変。 それが何なのか現時点でははっきりとはわかりませんが、脳外科の主治医によると、このような子どもの症例は、時々見かけるそうです。 そのまま大きくならずに経過している症例も多いそうですが、数年後に急に大きくなって有症候性となり、治療的介入を要する症例もある……ということで、息子の所見も、これから定期的に画像フォローしていくこととなりました。 現 […]
Science誌で、去年のBreakthrough賞に選ばれたのは、「GLP-1受容体作動薬」でした。 GLP-1受容体作動薬は、現在、2型糖尿病の治療法として一般的に使用されています。 この薬は、GLP-1受容体の活性を上げることで、腸管からの糖の吸収を抑える働きがあります [1] 。 同時に、食欲も抑え [2]、アメリカでは抗肥満薬としてもFDAに認可されています。 それだけでなく、心不全や血 […]
運動によって脳が健康になることはこれまでも何回か取り上げてきました [1, 2, 3, 4] もちろん、脳だけでなく、体全体を張り巡らしている「血管」自体の健康も促す事は周知の事だと思います。 今回、アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校の Dr. Hsial らのグループは、 「運動をすると、血管内皮から発現したstearoyl-CoA desaturase 1 (SCD1) の活性が亢進し […]
ストレス社会と言われる現代。 テレビでも、ストレスでうつ病になったり、病気に罹りやすくなったりする人達の特集が組まれているのをよく見かけます。 でも、なぜストレスで心と体にこんなにも影響が出るのでしょうか? アメリカ・マウントサイナイ医科大学の Dr. Russo らのグループは、 「ストレスで末梢血の骨髄由来細胞で matrix metalloproteinase 8 (MMP8) の発現が上が […]
アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) のオリゴマー、フィブリルなどの集合体には神経毒性があり、シナプス障害を引き起こし、認知機能低下に繋がる事が示唆されています [1] 。 また、Aβがあると、神経活動が異常に興奮する事も分かっています。 では、Aβはどのように神経毒性を発揮するのでしょうか? これまでの研究では、 Aβは、細胞膜や細胞内の膜構造のイオンチャネルを調節す […]
TMEM106Bは、TDP-43陽性封入体を伴う前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar denegeration with TDP-43 immunoreactive inclusions, FTLD-TDP)のリスク遺伝子として同定されました [1]。 またTDP-43タンパク凝集体はFTLD [2] や辺縁系優位型加齢性TDP-43脳症(limbic-predominant […]
脳の掃除屋、ミクログリア。 アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の脳内に蓄積するアミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) プラーク周囲にも集族し、Aβプラークを除去しようと頑張ります。 けれどもミクログリアは、Aβだけでなく神経シナプス剪定にも関与しており、活性化したミクログリアは神経シナプスも貪食してしまいます。 ……なんとかミクログリアシ […]
APOEにはAPOE ε2、ε3、ε4の3つのアイソフォームがあり、APOE4はアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の最大のリスク多型となります [1] APOE2はADにはなりにくいですが、III型脂質異常症や進行性核上性麻痺 (Progressive supranuclear palsy, PSP) などのリスクになります。 じゃあ、APOEの機能 […]
先日、TDP-43プロテイノパチーにおける cryptic exons の発現が筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis, ALS)などで発症前から増加するという論文 [1] を紹介しましたが、 cryptic exonsは、ALSや前頭側頭型認知症(fronto-temporal dementia, FTD)だけではなく、アルツハイマー病 (Alzheime […]
α-シヌクレイン (αsynuclein, αsyn)は、パーキンソン病 (Parkinson’s disease, PD) やレヴィ小体型認知症 (Dementia with Lewy bodies, DLB) 、多系統萎縮症 (Multiple system atrophy, MSA) などのシヌクレイノパチーの主要病理蛋白になります。 これまで、αsynは、 140アミノ酸からな […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の治療法として、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) に対する抗体療法が開発されましたが、 その臨床試験が開始されてから今まで、副作用として最も多く報告される「アミロイド関連画像異常(Amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)」をどう防ぐかについて、数多く議論 […]
TAR DNA-binding protein 43(TDP-43)には様々な機能が報告されていますが、その中でも重要なものとして、「遺伝子を正確に転写させる機能」があります。 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis, ALS)や 前頭側頭型認知症(fronto-temporal dementia, FTD)などのTDP-43プロテイノパチーでは、このTDP […]
「アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のタウやパーキンソン病 (Parkinson’s disease, PD) のα-シヌクレイン (α-synuclein, α-syn)が、プリオンのように脳内を伝播する」 とわかった時、多くの人達は、 「じゃあ、ADもPDも、狂牛病のように伝染しちゃうんじゃないの?」 と考えました。 けれども、下垂体 […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) に対する抗アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) 抗体が承認され、「疾患修飾薬はない」と言われ続けていたAD治療の分野は大きく前進しました。 けれども、Aβを除去しても、Aβによって活性化したミクログリアやアストロサイトは脳内に炎症物質をまきちらし、現場は焼け野原となっているはず。 「Aβ」だけじゃなくて […]
アポリポタンパクE(apolipoprotein E, APOE)司る遺伝子には、ε2, ε3, ε4の3つのアイソフォームがあり、APOE2はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)のリスクを下げ、APOE4は上げると言われています [1, 2] 。 この違いは、構造の違いによるものと言われており、APOE2は開いた構造をとって脂質に結合しにくく、APOE4 […]
まだプレプリントだけど、驚いたので早めに書き留めておきます。 進行性核上性麻痺 (Progressive supranuclear palsy, PSP) 。 60-70歳くらいに多い、進行性の認知症、眼球運動障害、体幹部に強い筋強剛、強い姿勢反射障害などをきたし、発症から7-9年くらいで死に至る事が一般的です [1, 2] 。 病理学的には、一次性タウオパチーに分類され、4Rタウで構成される凝集 […]
10年以上前の事ですが、外来で他科から紹介を受けた症例の脳MRIをみて驚いた事があります。(上のイメージは、Lancet の “Picture Quiz” より引用しました。) その方は、軽度の認知症と空間認識の障害、鬱様の症状があり、脳MRIでは後頭葉を中心とした強い萎縮がありました。 最初は後頭葉の機能障害が起こりやすいレヴィ小体型認知症 (Dementia with […]
パーキンソン病 (Parkinson’s disease, PD) の4大症状は、振戦、固縮、無動・寡動、姿勢反射障害と言われており、進行性に運動障害をきたします。 また、便秘、嗅覚障害、レム睡眠行動異常(Rapid eye movement (REM) sleep behavior disorder, RBD)、精神症状、認知症など、多彩な非運動症状をきたし、それらの多くは運動症状よ […]
脳の神経活動と脳血流は密接に連動しています。 神経活動が高まれば、その分多くの酸素を消費する必要があり [1]、その酸素を供給するため、神経活動の高い部分により多くの血流が流れます。 この現象を Neurovascular Coupling(NVC)と呼びますが [2]、そのメカニズムについて、これまでも色々と調べられてきました。 今回、中国西湖(Westlake)大学のDr. Ji […]
私達にとってはおなじみのリン酸化タウ抗体AT8。エピトープはタウのS202とT205のリン酸化部位です [1] 。 このp-tau202/205抗体は、AD脳の神経原線維変化を綺麗に検出します。 じゃあ、これって、アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のCSF中で増えて、バイオマーカーとして使えるんじゃないの?……ということで、スウェーデンGothenb […]
パーキンソン病(Parkinson’s disease, PD)は、非運動症状(睡眠障害、便秘、嗅覚異常 etc.)の後に、運動症状(安静時振戦、筋強剛、無動/寡動、姿勢反射障害 etc.)をきたし、重症化すると歩行が困難になります。 運動症状は、早期の段階ではL-DOPAやドパミン受容体アゴニストなどの薬物療法で改善できますが、症状が進行すると、薬物療法だけでは対応できず、脳深部刺激 […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の二大病理のひとつ、タウ凝集体の病理は、シナプスを介して広がっていくことが分かっています [1,2,3]。 また、二大病理のもう一つ、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) は、異常な神経活動過活動を誘発し、神経ネットワークを介したタウ病理の脳内進展を増悪させます [4,5,6] 。 ADの患者脳内では、 […]
パーキンソン病 (Parkinson’s disease, PD) はその多くが孤発性ですが、10%程度に遺伝性で発症する家族性PDがあります [1]。 その中で、主要病理蛋白であるα-シヌクレイン (α-synuclein, α-syn) をコードするSNCA遺伝子のコピー数が2倍体 [2]、3倍体 [3] と、α-synの発現量が増えることで家族性PD(PARK4)を発症することが […]
以前、PSEN1-E280A変異という強力な家族性アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の遺伝子変異を持ちながら、70歳まで認知症を発症しなかった、APOE3 R136S変異(Chistchurch変異、APOE3ch)の症例 [1] について取り上げましたが、 今回、米国ワシントン大学のDr.Holzmanらは、APOE3chのモデルマウスを作製し、マウス […]
TMEM106Bは、後期エンドソーム/リソソームの膜タンパクで、TDP-43プロテイノパチーのリスク多型となる遺伝子の一つでもあり [1]、以前から注目されていました。 特に昨年、FTLD-TDPや、普通のAging脳内にTMDM106B凝集体がたくさん存在していたという事で [2, 3, 4] 、このブログでも3回に渡って詳しく取り上げました。 この論文が出てすぐ、あちこちのラボで「これまでの脳 […]
以前、PSEN1-E280A変異という強力な家族性ADの遺伝子変異を持ちながら、70歳まで認知症を発症しなかった、APOE3 R136S変異(Chistchurch変異)の症例 [1] について取り上げましたが、 今回同様に、PSEN1-E280A変異を持っていても67歳まで認知機能正常だった症例について、報告されました [2] 。 家族性ADに打ち勝つ遺伝子変異:RELN-COLBOS (H34 […]
タンパク質は、通常、20種類のアミノ酸がバランス良く含まれている事が多く、それらのタンパク質はAnfinsenのドグマに従い、特定の構造に折りたたまれます。 しかしながら、20%程度のタンパク質の中には、限られた種類のアミノ酸のみで構成された領域がみられ、これらは低複雑性ドメイン(low-complexity domain, LCD)と呼ばれています。 このLCDは、細胞内での液液相分離(liqu […]
Alzheimer’s disease(AD)の主要病理の一つ、過リン酸化タウ。 タウには、リン酸化、ユビキチン火、アセチル化、メチル化、SUMO化、糖化……と、様々な翻訳後修飾(post-translational modification, PTM)が報告されており [1]、ADにおけるPTMの経時変化についても、色々と調べられてきました [2]。 その中でも特にリン酸化タウに関し […]
「オートファジー」は、生態系の恒常性を維持する為になくてはならないものであり、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)を含む数々の変性疾患でオートファジー機能障害との関連性が示唆されています [1]。 ミスフォールドされたタンパクは、ユビキチン・プロテアソーム系(ubiquitin proteasome system, UPS)やマクロオートファジー、シャペロ […]
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