
前回、帰国直後に半年間の外病院勤務の指令がでて、それでもなんとか研究が続けられるよう交渉中の出来事を書きました。
「忙しい」という言葉は、私の中で最も口にしたくない言葉の一つです。 自分の能力の低さを主張しているかのように聞こえるからです。 修練医時代、同じ仕事量でも、仕事ができる人はらくらくこなせるのに、それまでの勉 …
コアラボChairからは結構好印象なお返事が返ってきましたが、私を直接雇用するラボ(直ラボ)PIに打診する必要があるので、数日待つように言われました。
ところが……数日待ってもお返事はありません。
一週間以上経過して、簡素なメールが届きました。
「遅くなりましたが、○曜日か△曜日の日本時間の✕✕時でオンラインmeetingはいかがでしょうか。」
私はそのメールを見て、
「これは雲行きが怪しそうだな。」
と思いました……行間から不穏な空気を感じます。
・
・
・
当日、コアラボChairと、直ラボPI、主人と私の4人でのミーティングが始まりました。
内容としては、私のお願いした条件をすべて用意することができたとのこと。
すべて受けてくれるとは思っていなかったので、私は大変感謝し、その意を伝えました。
すると、この後から長い話が始まりました。
「正直、先生が感謝の意を表してくれて、ホッとしている。」
私は言われた言葉の意味がわかりませんでした……普通に丁寧にお礼を述べただけです。
すると、コアラボChairから次の言葉が返ってきました。
「先生を受け入れてくれるラボ内では、みんな先生が帰ってくるのを恐れているそうだ。」
詳しく話を聞くと、現在、受け切れ先の直ラボでは、私の事を
「大変なお願い毎を簡単に人に依頼して感謝の気持ちも足りない人間だ」
と思われており、私が配属されることで、
「せっかくの平和な空気がかき乱されるのではないか」
と、ラボのメンバーがみんな恐れている、という話でした。
コアラボChairは言いました。
「君にも異論はあると思う。けど、君がみんなにそんな印象を与えたのは事実だ。」
私は、渡米前の自分のどんな言動がそのような印象を与えてしまっていたのか検討がつかなかったので、具体的にどのような言動に対して言っているのか、質問しました。
しかしながら、具体例を上げてしまうと個人名が特定される可能性がある、という事で、特定の事象については教えてもらえませんでした。
その後、
- 技術補佐員の雇用は、直ラボPIではなく、コアラボChairのお金で雇ってもらえる事(つまり、直ラボPIは拒否したという事)
- このお金は「貸す」だけであって、いずれ私がグラントを獲ったらコアラボChairに返す事
- コアラボChairはそれまでの私を高く評価していたからこそここまでしてくれるが、これはいわゆるボランティアで、将来私が立派な研究者になるための投資だという事を肝に命じる事
などを強調されました。
そしてコアラボChairは言いました。
「君も女性が男性社会で上がっていくのは大変だと感じているのだろうが、残念ながら、君は今のこの男性社会でうまくやってきなかければならない。トップにいる他の女の先生たちをみたらわかると思うが、みんなうまくやっているよ。」
私はそれらの言葉に大変なショックを受けましたが、私の何らかの言動がそのような印象を与えてしまったのは事実ですし、
このような背景を知らずにそのラボに入って、地雷を踏みまくる発言をしていたら大変なことになっていたと思うので、
コアラボChairと直ラボPIに丁寧にお礼を言って、ミーティングは終了しました。
ミーティングが終了した後、主人が私の様子を伺うように話しかけてきました。
「なんかやばい事になっているね。どうしよう。色々と考えないと。」
私はなんとか笑顔をつくり、できるだけ明るめの声でそう返しました。