bus

我が家には車がなく、子供たちはそれぞれ、徒歩か公共交通機関を利用して習い事に通ってもらっています。

次男(8歳)も、バスや電車を利用して、半径2.5km圏内を一人で移動します。

今では道も覚え、違う系統のバスに乗っても「道が違う」と気づいて、軌道修正できるようになりました。

ところが、時には、軌道修正できない事態も……

GPSは自宅からどんどん離れて……

ある日、いつものように習い事に行っていた次男。

帰宅時間になっても、家に帰ってきません。

「おかしいな。。。」

 

彼の携帯のGPSを確認すると、シグナルは自宅付近をどんどん離れていっていました。

「あれ?」

 

慌てて次男に電話をかけましたが、電話は繋がらず、私はコールを切りました。

そして数分後……彼から電話がかかってきました。

知らないところで降りちゃった

「バスの中で寝ちゃって、電話が鳴って起きちゃった。」

彼は、降車予定のバス停を過ぎてしまっていることに気付き、次のバス停で慌てて下車したとのこと。

 

「今どこにいるかわかる?」

と尋ねると、

「わからない。知らないところで降りちゃった。」

とのこと。

 

実は、追っていたGPSは、一旦自宅近くのバス停を離れていっていましたが、1.5kmほど南に下った後で折り返し、自宅近くまで戻ってきていました。

ちょっと歩いて角を曲がれば、よく買い物にいくスーパーが見えるはずですが、次男にとっては、周りを見渡してもヒントになるような景色はなく、どの方向に進めば良いのかわからないでしょう。

 

「今から自転車で迎えにいくから、そのバス停で待っててくれる?5分くらいで着くからね。」

 

私がそう言うと、彼は

「わかった!ありがとう。」

と元気に返事をしました。

バス停に着くと

私は自転車に乗って、GPSの止まったバス停まで向かいました。

そこは大きな停留所で、たくさんの人たちがバスを待っていました。

次男は、ベンチにちょこんと座っていました。

 

「次男くん。」

 

私が声をかけると、彼はぱっと振り向き、

「あ、お母さん!」

と言って、ぴょこんと立ち上がりました。

 

彼は私に向かってニコッと笑いましたが、次第にその顔がくしゃっと歪み、両目からポロポロと涙をこぼし始めました。

電話の声はずっと元気だったので、私は驚きました。

周囲の大人たちも、ベンチに大人しく座っていた子どもが突然泣き始めたので、驚いて振り返りました。

きっと彼は、強い不安の中、今すべきこととすべきでないことを一生懸命考えながら、行動していたのでしょう。

 

 

彼は自転車に歩みより、「ごめんなさい。」と言いました。

私は、

―― 謝ることなんてないのに。

と思いながら自転車を停め、彼が何に対して謝りたくなったのか、考えを巡らせました。

「一人でよく頑張ったね。」と言って彼を抱きしめると、彼は「きゅぅ」とイルカのような声を上げました。

帰り道

次男を後ろに乗せ、私は自転車を走らせました。

 

角を曲がると、いつものスーパーが見えてきました。

「あ、ここ知ってる!」

そしてほどなくして、いつも水槽の水を汲みにくる川が見えてきました。

「あ、この川、いつもの川だ。なーんだ、本当におうちの近くにいたんだね!」

 



 

息子の、ちょっとした大冒険でした。

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