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一人抄読会

TMEM106B凝集体はLATE症例にも多く存在していた

TMEM106Bは、後期エンドソーム/リソソームの膜タンパクで、TDP-43プロテイノパチーのリスク多型となる遺伝子の一つでもあり [1]、以前から注目されていました。 特に昨年、FTLD-TDPや、普通のAging脳内にTMDM106B凝集体がたくさん存在していたという事で [2, 3, 4] 、このブログでも3回に渡って詳しく取り上げました。 この論文が出てすぐ、あちこちのラボで「これまでの脳 […]

家族性ADに打ち勝つ遺伝子変異:RELN-COLBOS変異(RELN H3447)

以前、PSEN1-E280A変異という強力な家族性ADの遺伝子変異を持ちながら、70歳まで認知症を発症しなかった、APOE3 R136S変異(Chistchurch変異)の症例 [1] について取り上げましたが、 今回同様に、PSEN1-E280A変異を持っていても67歳まで認知機能正常だった症例について、報告されました [2] 。 家族性ADに打ち勝つ遺伝子変異:RELN-COLBOS (H34 […]

2023年 注目の科学(Nature)

新年を迎えました。 2023年、サイエンス界でどのようなイベントが注目されているのでしょうか? Nature誌の ”2023年に注目すべきサイエンスイベント” からの情報。 今年注目されている領域は、月面再着陸、mRNAワクチン、地球温暖化対策 etc. のようです。 2023年 注目の科学(Nature) 次世代ワクチン COVID-19 の mRNA ワクチンの成功を受けて、様々な製薬会社が様 […]

2022年 今年のブレイクスルー研究(Science)

年の瀬、各誌この1年のブレイクスルーや来年の展望etc.をまとめています。 帰国後、臨床が忙しすぎて一人抄読会も全くできていませんでしたが、やっぱり Sience誌の Breakthrough of the Year だけはまとめておきたいかな……と思い、筆をとりました。 2022 BREAKTHROUGH OF THE YEAR 宇宙望遠鏡 JWST の華々しいデビュー 今年のブレイクスルーに選 […]

低複雑性ドメインのアミノ酸主鎖同士の水素結合が、特定のタンパクの液液相分離および凝集化に関与

タンパク質は、通常、20種類のアミノ酸がバランス良く含まれている事が多く、それらのタンパク質はAnfinsenのドグマに従い、特定の構造に折りたたまれます。 しかしながら、20%程度のタンパク質の中には、限られた種類のアミノ酸のみで構成された領域がみられ、これらは低複雑性ドメイン(low-complexity domain, LCD)と呼ばれています。 このLCDは、細胞内での液液相分離(liqu […]

タウの “マスター” リン酸化部位

Alzheimer’s disease(AD)の主要病理の一つ、過リン酸化タウ。 タウには、リン酸化、ユビキチン火、アセチル化、メチル化、SUMO化、糖化……と、様々な翻訳後修飾(post-translational modification, PTM)が報告されており [1]、ADにおけるPTMの経時変化についても、色々と調べられてきました [2]。 その中でも特にリン酸化タウに関し […]

“細胞外” のAβプラークの起源は “細胞内” のオートリソソームだった

「オートファジー」は、生態系の恒常性を維持する為になくてはならないものであり、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)を含む数々の変性疾患でオートファジー機能障害との関連性が示唆されています [1]。 ミスフォールドされたタンパクは、ユビキチン・プロテアソーム系(ubiquitin proteasome system, UPS)やマクロオートファジー、シャペロ […]

CCR5は、記憶同士をリンクする時間枠の窓(temporal window)を閉じる

記憶の形成というのは色々と複雑な機序が絡み合っているという印象がありますが、「最初に入ってきた記憶が、そのちょっと後に入ってきた記憶の整理に影響する」というのは、私達の実社会でもなんとなく実感が湧くと思います。 マウスでも、ブザーがなった後に電気刺激を与えると、そのブザーと電気刺激の記憶がリンクして、ブザーがなるだけで「あの怖いヤツだ」と思って体が竦んでしまいます。 Fear Conditioni […]

黒質ドパミン神経細胞の中でも、パーキンソン病で特にやられやすいサブタイプ

パーキンソン病(Parkinson’s disease, PD)は、黒質緻密部(substantia nigra pars compacta, SNc)のドパミン(DA)神経細胞が障害され、それに伴って振戦・固縮・動作緩慢・姿勢反射障害などのパーキンソン運動神経症状が現れます。 なぜこの部分のDA神経が最も障害されやすいかについては酸化ストレス [1] やカルシウム代謝 [2] 、投射 […]

TDP-43のC末断片はゲル状の細胞内封入体を作る

先日、TDP-43の凝集体はアミロイドフィブリル状の構造をしておらず、もっとグチャッとしている……のような内容の論文 [1] について考察しましたが、 それに関連して……今回は、TDP-43のC末断片(TDP-25)凝集体のお話。   TDP-43凝集体の構成成分の中に25-35kDaのTDP-43C末断片が多く存在しているという報告があり、これはTDP-43封入体を持つ前頭側頭葉変性症 […]

α-シヌクレインのNAC領域の変異(E83Q)の解析

α-シヌクレイン(α-synuclein, α-Syn)は、パーキンソン病(Parkinson’s disease, PD)やレヴィ小体型認知症(dementia with Lewy bodies, DLB)の主要病理であるレヴィ小体の構成蛋白の一つで、この蛋白をコードする遺伝子 SNCA の変異は、家族性PDの原因遺伝子の一つにもなっています。 SNCAの点変異 A53T [1] A […]

アルツハイマー病では、神経細胞の遺伝子がより多く変異している

私達は、普段何気なく生活しているこの瞬間にも、どこかの体細胞の遺伝子が傷つき、損傷と自己修復を繰り返しています。 増殖抑止機能の部分の遺伝子修復が追いつかなかったりして、自己増殖能がイカれた細胞の一部はがん細胞として独り歩きしだしたりするわけですが、がん細胞にまではならなくても、損傷・自己修復の過程で生じた遺伝子変異は蓄積するそうです。 脳内の神経細胞では、その遺伝子変異の数が正常加齢と共に増えて […]

ジワジワと進展してきたタウが下前頭回でAβと出会った時、新皮質への爆発的広がりの扉が開く

私が研究を始めた頃、アミロイドβ(amyloid beta, Aβ)がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の根本的原因とする「アミロイド仮説」が全て、のような雰囲気がありました。 「Aβが溜まり始め、それがタウのリン酸化を引き起こし、神経原線維変化(neurofibrillary tangles, NFT)となって神経細胞が死んでいき、認知機能が低下してい […]

ナイアシン受容体のHCAR2がミクログリアを活性化し、ADに保護的に働く

ビタミンB群が神経保護的に働く事は時々聞きますが、その中の1つであるナイアシンは、ビタミンB3に該当し、ニコチン酸(nicotinic acid)とニコチンアミド(nicotinamide)の総称になります。 ニコチン酸は小腸から吸収されると、肝臓で酸化型のNAD+ (Nicotinamide adenine dinucleotide) に代謝され、還元型の NADH の間で電子のやり取りをするこ […]

髄液中の可溶性TAM受容体(sAXLとsTyro3)はアルツハイマー病のバイオマーカーになり得るか

神経炎症は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)を含む多くの神経変性疾患で認める初見で、病態との関連も多く報告されています。 炎症を語る上で外せない細胞の1つがミクログリアですが、そのミクログリアの活動を調整する因子の1つに TAM受容体ファミリーがあります (Glossary参照) [1, 2] 。 TAM受容体は TYRO3 AXL MER の3種類が […]

神経変性疾患の新たなキープレイヤー!?③:FTLD-TDPにみられるアミロイドフィブリルはTDP-43じゃなくてTMEM106B!?

TMEM106B凝集体のcryo-EM解析第3段。 前回までのおさらいですが、最近、TMEM106B凝集体に関する論文がCellに1報、Natureに2報掲載されました。 Cellの論文は、アメリカ・コロンビア大学のDr.Fitzpatric、カナダ・英コロンビア大学のDr.Mackenzieらの研究グループからで、FTLD-TDP, PSP, DLBの患者さんの脳内でTMEM106Bの凝集体があ […]

神経変性疾患の新たなキープレイヤー!?②:TMEM106Bの凝集体は神経疾患の他、健常高齢者脳内でも観察される

前回 [1] に引き続き、 TMEM106Bに関する論文。 今回は、Nature誌に掲載された、イギリス・MRC研究所のDr. Goedert、Dr. Scheresらの研究グループからで、色々な神経変性疾患の他、健常高齢者の脳内でもTMEM106Bの凝集体が観察された、というcryo-EMでの解析 [2]。   ざっくりおさらいですが、TMEM106Bは274aaのII型膜貫通型蛋白で […]

神経変性疾患の新たなキープレイヤー!?①:TMEM106Bの凝集体が色々な変性疾患で観察される

先日、TMEM106Bに関する驚きの論文がCellに1報、Natureに2報掲載されました。 Cellの論文は、アメリカ・コロンビア大学のDr.Fitzpatric、カナダ・英コロンビア大学のDr.Mackenzieらの研究グループからで、FTLD-TDP, PSP, DLBの患者さんの脳内でTMEM106Bの凝集体があることをcryo-EMとMSの解析から明らかになった、というもの [1]。 N […]

Glymphaticドレナージは細胞外タウを洗い流して、タウ凝集化や神経障害を防ぐ

私達の脳は液体で満たされており、 脳の間質内:脳間質液(interstitial fluid, ISF) 脳室や脳周囲:脳脊髄液(cerebrospinal fluid, CSF) と名付けられています。 ISFは、間質に溜まった脳内の代謝産物などをCSFへ送り出し、CSFはそれらを篩骨篩板や鼻のリンパ節などを経由して深部頸部リンパ節へ排出するというドレナージ機能がありますが [1] 、 その排出 […]

ガンテネルマブの2回目の第3相治験が始まる:SKYLINE

Roche社は、抗アミロイドβ(Aβ)抗体のガンテネルマブ(gantenermumab)の2回目の第3相治験についてアナウンスしました。 ドナネマブはAβフィブリルに結合するヒトIgG1抗体でAβのN末と中央部を認識します。 多くのAβ抗体が静注薬剤の中、このガンテネルマブは皮下注で使用するので、より患者さん-friendlyなAβ抗体製剤といえると思います。   DIAN研究でも選ばれ […]

CSF中sTREM2から、ミクログリアの善戦の跡を垣間見る

TREM2 (triggering receptor expressed on myeloid cell 2) は、脳内では主にミクログリアに発現する膜貫通型の糖蛋白です。 このTREM2をコードする遺伝子TREM2の点変異はアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のリスク遺伝子で、この変異をヘテロで持つ人達は、low-of-function で約3倍 A […]

PSPとCBDの脊髄にTDP-43病理

前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration, FTLD) は、人格変化、情動異常、言語障害などを特徴とする認知症の1つで、若年性認知症(65歳以下)の症例数としては、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)に次いで2番目に多いとも言われています [1]。 この疾患は遺伝学的、病理学的観点から、筋萎縮性側索硬化症(Amy […]

リコンビナントのタウでも本物に近い構造の凝集体が作れる

タウは微小管結合タンパクで、その異常凝集体はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の主要病理の1つと言われています。 他にも、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia, FTD)、進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear palsy, PSP)、cortico basal degeneration(CBD)、 […]

変異GCaseはシャペロン介在性オートファジーを阻害する

ゴーシェ病の原因遺伝子 GBA1。 GBA1 はリソソーム脂質加水分解酵素グルコセレブロシダーゼ(Glucocerebrosidase, GCase)をコードする遺伝子で [1] 、GBA1のホモ変異でGCaseの活性が低下し、基質のグルコセレブロシドが肝脾、骨髄、脳内などに蓄積し重篤な症状をきたします。 この変異をヘテロで持つキャリアの人達は、ゴーシェ病への罹患は免れますが、晩年パーキンソン病( […]

タウのインターラクトームマップ

タウは、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の主要病理の1つである神経原線維変化(neurofibrillary tangles, NFT)の構成タンパクの1つで、これまでに色々なタンパクとの相互作用が報告されてきました [1, 2] が、 生理状態のタウと変異タウとでインターラクトームを直接比較した研究はあまりありませんでした。 今回、アメリカ・Glad […]

Alzforum: 2021年のまとめと2022年の展望

今年に入ってから、身内の手術やメンターの他界などであまり頭が働かず、論文もアブストをさらっと見るだけで、内容をまともに読めていませんでした。 でも、このまま停滞していても良くないので、一人抄読会を再開しようと思います。 仕切り直しの初回は、論文ではなく Alzforum から。 先月に投稿されていた2021年のまとめ記事で、頭を整理し直したいと思います。 Aβ抗体による治療 アデュカヌマブ(Adu […]

進行の早いアルツハイマー病のタウの構造の違いを間接的に検証

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)は、認知症をきたす疾患の中で最も症例の多い疾患ですが、同じADでも、10年以上かけてゆっくり進行するタイプもあれば、発症から数ヶ月~1年程度で急激に症状が悪化するタイプもあり、その臨床経過は様々です。 以前より、発症から2-3年以内に急激に臨床症状が悪化し、死亡してしまうタイプのADを「急性進行形AD(rapid pro […]

Aβ38が多いと認知機能低下がマイルド

アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の主要病理の1つ、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) 。 Aβは、アミロイド前駆蛋白 (Amyloid precursor protein, APP) から、まずβセクレターゼでN側が切断され(β切断)、次にγセクレターゼでC側が切断され(γ切断)、Aβとして細胞外に分泌されます [1, 2]。 この […]

Aβがp181タウとp217タウを誘導する

アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の2大病理といえば「アミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)」と「タウ」ですが、 この2つの病理はどちらが先か、という議論は以前から続いていました。   10年以上前までは「アミロイド仮説(Aβ → タウ)」が主流で、Aβがタウをリン酸化する経路も多く報告されました [1] 。   その後、「 […]

加齢による炎症増加のメカニズムに核ラミナの減少が関与

加齢による慢性炎症は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患と密接に関係しており、 炎症がこれら変性疾患の二次的変化だけでなく、増悪因子として働く事は周知の事実だと思います。 でも、どうして歳をとると慢性炎症が起こりやすくなるのでしょうか? 今回、アメリカ・MDI生物学研究所の Dr. Samuelらのグループは、 「加齢により各ラミナが減少し、それによって炎症遺伝子の発現が上がる」 […]

2022年 注目の臨床試験(Nature Medicine)

2022年、医療科学界で注目されている臨床試験について、Nature Medicine が各領域のリーダー達にインタビューしています。 感染症から変性疾患まで、11の臨床試験がピックアップされました。 2022年に注目すべき11の臨床試験 Treatment Condition or disease Sponsor Phase and size Mosaic nanoparticle immuno […]

2022年 注目の科学(Nature)

新年を迎えました。 2022年、サイエンス界でどのようなイベントが注目されているのでしょうか? 今回は、Nature誌の ”2022年に注目すべきサイエンスイベント” からの情報。 今年注目されている領域は、コロナウイルスのオミクロン株、惑星探査、物理のビックデータ etc. のようです。 2022年 注目の科学(Nature) COIVD-19 は続く COVID-19がパンデミックを起こしてか […]

2021年 今年のブレイクスルー研究(Science)

年の瀬、各誌この1年のブレイクスルーや来年の展望etc.をまとめています。 今回は、Science誌の ”2021 Breakthrough of the Year” から。 2021 BREAKTHROUGH OF THE YEAR 全ての蛋白構造決定がAIで可能に 今年のブレイクスルーに選ばれたのは、AIのタンパク構造解析でした。 1972年のノーベル賞受賞式で、アメリカ人生化学者 Chris […]

2021年 Nature選出サイエンスニュース(Nature)

年の瀬、各誌この1年のブレイクスルーや来年の展望etc.をまとめています。 今回は、Nature誌の ”The science news that shaped 2021: Nature’s picks” から。 2021年 Nature選出サイエンスニュース(Nature) コロナウイルス変異株はワクチンが効きにくい!? 今年もコロナウイルスの話題でもちきりー特に新たに現れた変異株達。 2020 […]