神経活動が抗体を呼び、C1q依存性シナプス喪失を引き起こす
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)では、病初期から海馬などの一部の神経回路に過剰な活動がみられます。また、ADを含むさまざまな神経変性疾患では、古典的補体経路の開始因子であるC1qが脆弱なシナプスに沈着し、シナプス喪失に関与することが報告されています。 発達期の脳では、過剰に形成されたシナプスが神経活動に応じて除去され、成熟した神経回路が形成されます。特に発達期の視覚 […]
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)では、病初期から海馬などの一部の神経回路に過剰な活動がみられます。また、ADを含むさまざまな神経変性疾患では、古典的補体経路の開始因子であるC1qが脆弱なシナプスに沈着し、シナプス喪失に関与することが報告されています。 発達期の脳では、過剰に形成されたシナプスが神経活動に応じて除去され、成熟した神経回路が形成されます。特に発達期の視覚 […]
ウイルス感染とアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) との関係は、これまでにも多くの報告があります [1, 2, 3] 。 ミクログリアは脳内の免疫細胞として日々働いているわけですが、ウイルス感染、特にサイトメガロウイルス(human cytomegalovirus, HCMV)感染では、特徴的な変化が起こっているようです。 今回、アメリカ・ASU-Ban […]
アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) のオリゴマー、フィブリルなどの集合体には神経毒性があり、シナプス障害を引き起こし、認知機能低下に繋がる事が示唆されています [1] 。 また、Aβがあると、神経活動が異常に興奮する事も分かっています。 では、Aβはどのように神経毒性を発揮するのでしょうか? これまでの研究では、 Aβは、細胞膜や細胞内の膜構造のイオンチャネルを調節す […]
脳の掃除屋、ミクログリア。 アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の脳内に蓄積するアミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) プラーク周囲にも集族し、Aβプラークを除去しようと頑張ります。 けれどもミクログリアは、Aβだけでなく神経シナプス剪定にも関与しており、活性化したミクログリアは神経シナプスも貪食してしまいます。 ……なんとかミクログリアシ […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の治療法として、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) に対する抗体療法が開発されましたが、 その臨床試験が開始されてから今まで、副作用として最も多く報告される「アミロイド関連画像異常(Amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)」をどう防ぐかについて、数多く議論 […]
「アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のタウやパーキンソン病 (Parkinson’s disease, PD) のα-シヌクレイン (α-synuclein, α-syn)が、プリオンのように脳内を伝播する」 とわかった時、多くの人達は、 「じゃあ、ADもPDも、狂牛病のように伝染しちゃうんじゃないの?」 と考えました。 けれども、下垂体 […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) に対する抗アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) 抗体が承認され、「疾患修飾薬はない」と言われ続けていたAD治療の分野は大きく前進しました。 けれども、Aβを除去しても、Aβによって活性化したミクログリアやアストロサイトは脳内に炎症物質をまきちらし、現場は焼け野原となっているはず。 「Aβ」だけじゃなくて […]
アポリポタンパクE(apolipoprotein E, APOE)司る遺伝子には、ε2, ε3, ε4の3つのアイソフォームがあり、APOE2はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)のリスクを下げ、APOE4は上げると言われています [1, 2] 。 この違いは、構造の違いによるものと言われており、APOE2は開いた構造をとって脂質に結合しにくく、APOE4 […]
10年以上前の事ですが、外来で他科から紹介を受けた症例の脳MRIをみて驚いた事があります。(上のイメージは、Lancet の “Picture Quiz” より引用しました。) その方は、軽度の認知症と空間認識の障害、鬱様の症状があり、脳MRIでは後頭葉を中心とした強い萎縮がありました。 最初は後頭葉の機能障害が起こりやすいレヴィ小体型認知症 (Dementia with […]
去年、FDAの迅速承認を受け、大きな波紋と議論を呼び起こした、Biogenとエーザイで開発されたアデュカヌマブ。 先日(1月31日)、Biogenはそのアデュカヌマブの生産を終了するとアナウンスしました。 今後は、アデュカヌマブの後に承認されたレカネマブ等に集中する、という方針のよう。 ……まあ、当然の流れでしょう。 様々な議論を呼びはしましたが、アデュカヌマブのFDA […]
私達にとってはおなじみのリン酸化タウ抗体AT8。エピトープはタウのS202とT205のリン酸化部位です [1] 。 このp-tau202/205抗体は、AD脳の神経原線維変化を綺麗に検出します。 じゃあ、これって、アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のCSF中で増えて、バイオマーカーとして使えるんじゃないの?……ということで、スウェーデンGothenb […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の二大病理のひとつ、タウ凝集体の病理は、シナプスを介して広がっていくことが分かっています [1,2,3]。 また、二大病理のもう一つ、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) は、異常な神経活動過活動を誘発し、神経ネットワークを介したタウ病理の脳内進展を増悪させます [4,5,6] 。 ADの患者脳内では、 […]
頭は停滞していても、Alzforumのチェックだけは欠かすべからず。 去年はこれをまとめるだけの気力がなかったですが、今年は挽回……とゆーことで。 Alzforumの2023年のまとめ記事。 治療 レケンビ(レカネマブ) 去年、最も世間を賑わせたのが、Leqembi(Lecanemab)ですね。 2023年7月に承認を受けてから、アメリカの複数の大学ですぐに実用化されました。 日本でも2023年9 […]
以前、PSEN1-E280A変異という強力な家族性アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の遺伝子変異を持ちながら、70歳まで認知症を発症しなかった、APOE3 R136S変異(Chistchurch変異、APOE3ch)の症例 [1] について取り上げましたが、 今回、米国ワシントン大学のDr.Holzmanらは、APOE3chのモデルマウスを作製し、マウス […]
以前、PSEN1-E280A変異という強力な家族性ADの遺伝子変異を持ちながら、70歳まで認知症を発症しなかった、APOE3 R136S変異(Chistchurch変異)の症例 [1] について取り上げましたが、 今回同様に、PSEN1-E280A変異を持っていても67歳まで認知機能正常だった症例について、報告されました [2] 。 家族性ADに打ち勝つ遺伝子変異:RELN-COLBOS (H34 […]
Alzheimer’s disease(AD)の主要病理の一つ、過リン酸化タウ。 タウには、リン酸化、ユビキチン火、アセチル化、メチル化、SUMO化、糖化……と、様々な翻訳後修飾(post-translational modification, PTM)が報告されており [1]、ADにおけるPTMの経時変化についても、色々と調べられてきました [2]。 その中でも特にリン酸化タウに関し […]
私達は、普段何気なく生活しているこの瞬間にも、どこかの体細胞の遺伝子が傷つき、損傷と自己修復を繰り返しています。 増殖抑止機能の部分の遺伝子修復が追いつかなかったりして、自己増殖能がイカれた細胞の一部はがん細胞として独り歩きしだしたりするわけですが、がん細胞にまではならなくても、損傷・自己修復の過程で生じた遺伝子変異は蓄積するそうです。 脳内の神経細胞では、その遺伝子変異の数が正常加齢と共に増えて […]
私が研究を始めた頃、アミロイドβ(amyloid beta, Aβ)がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の根本的原因とする「アミロイド仮説」が全て、のような雰囲気がありました。 「Aβが溜まり始め、それがタウのリン酸化を引き起こし、神経原線維変化(neurofibrillary tangles, NFT)となって神経細胞が死んでいき、認知機能が低下してい […]
ビタミンB群が神経保護的に働く事は時々聞きますが、その中の1つであるナイアシンは、ビタミンB3に該当し、ニコチン酸(nicotinic acid)とニコチンアミド(nicotinamide)の総称になります。 ニコチン酸は小腸から吸収されると、肝臓で酸化型のNAD+ (Nicotinamide adenine dinucleotide) に代謝され、還元型の NADH の間で電子のやり取りをするこ […]
神経炎症は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)を含む多くの神経変性疾患で認める初見で、病態との関連も多く報告されています。 炎症を語る上で外せない細胞の1つがミクログリアですが、そのミクログリアの活動を調整する因子の1つに TAM受容体ファミリーがあります (Glossary参照) [1, 2] 。 TAM受容体は TYRO3 AXL MER の3種類が […]
TREM2 (triggering receptor expressed on myeloid cell 2) は、脳内では主にミクログリアに発現する膜貫通型の糖蛋白です。 このTREM2をコードする遺伝子TREM2の点変異はアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のリスク遺伝子で、この変異をヘテロで持つ人達は、low-of-function で約3倍 A […]
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タウは、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)の主要病理の1つである神経原線維変化(neurofibrillary tangles, NFT)の構成タンパクの1つで、これまでに色々なタンパクとの相互作用が報告されてきました [1, 2] が、 生理状態のタウと変異タウとでインターラクトームを直接比較した研究はあまりありませんでした。 今回、アメリカ・Glad […]
今年に入ってから、身内の手術やメンターの他界などであまり頭が働かず、論文もアブストをさらっと見るだけで、内容をまともに読めていませんでした。 でも、このまま停滞していても良くないので、一人抄読会を再開しようと思います。 仕切り直しの初回は、論文ではなく Alzforum から。 先月に投稿されていた2021年のまとめ記事で、頭を整理し直したいと思います。 Aβ抗体による治療 アデュカヌマブ(Adu […]
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)は、認知症をきたす疾患の中で最も症例の多い疾患ですが、同じADでも、10年以上かけてゆっくり進行するタイプもあれば、発症から数ヶ月~1年程度で急激に症状が悪化するタイプもあり、その臨床経過は様々です。 以前より、発症から2-3年以内に急激に臨床症状が悪化し、死亡してしまうタイプのADを「急性進行形AD(rapid pro […]
運動の認知機能等に対する効果については、このブログでも何度かとりあげてきました。 運動がアルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)などの変性疾患病理を抑えたり神経新生を促したりして、認知機能を保つ効果がある事については多くのエビデンスがありますが、 そのメカニズムは一つではなく、複数の機序がシナジー的に効力を発揮していると考えられます。 その中でも […]
睡眠不足とアルツハイマー病(Alzheimer’s disease, AD)との関係については、以前から研究されており [1, 2]、 このブログでも以前、 「睡眠不足になるとアミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)やタウが脳内に溜まりやすくなる」 という内容の報告を取り上げました [3]。 逆に、「ADになると睡眠の質が落ちる」という事も報告されており、ADのモデルマウス達( […]
Accelerated Approval Pathway で FDA の承認を受けたアデュカヌマブ。 この動きに乗って、その他のAβ抗体(レカネマブ(エーザイ/バイオジェン)、ドナネマブ(イーライリリー)、ガンテネルマブ(ロシュ)も、次々と申請済みもしくは申請準備を進めています。 アデュカヌマブの承認の根拠となった 第3相臨床試験は、EMERGEとENGAGEですが [1]、 Aβ抗体治療の副作用 […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の90%は孤発性で、リスク遺伝子多型に関しては今までにも何度かゲノムワイド関連解析 (genome-wide association study, GWAS) が行われてきました。 今までで一番大きいGWAS解析では、71,880症例のAD群と383,378症例のコントロール群のGWAS解析で、29のリスク多型を報告 […]
家族性アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の殆どはAβ産生系の遺伝子に変異があり、10%はアミロイド前駆蛋白 (Amyloid precursor protein, APP) の遺伝子に変異が報告されています。 今回、スウェーデン・Uppsala大学の Dr. Ingelsson らの研究グループは、新たな変異として、APPのUppsala変異を報告し […]
TREM2 (triggering receptor expressed on myeloid cell 2) は、アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のリスク遺伝子の一つで、 TREM2 の変異をヘテロで持つ人達は、low-of-function で約3倍 AD になりやすいといわれています [1, 2]。 また TREM2 ノックアウトマウスでは、 […]
抗 アミロイドβ 抗体ドナネマブ (Donanemab, LY3002813) の第2相臨床試験の結果を受けて、 イーライリリー (Eli Lilly) とバナー・アルツハイマー病研究所(Banner Alzheimer’s Institute)がドナネマブの第3相試験を行うことを発表しました。 対象者は、 「認知症を発症していないけれども、血漿 p-tau217 が上昇 […]
高齢になればなるほどアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) に罹患する人たちの数は増えていきますが、 同じ年齢でも AD になる人とならない人がいます(どんな病気でもそうですが。) その原因を究明すべく、研究者たちは日夜頑張っているわけですが、 今回、アメリカ・マウントサイナイ医科大学の Dr. Tu らの研究グループは、 AD の人たち AD じゃない人 […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) などの神経変性疾患において、ニューロンだけでなくグリアやサイトカインの役割も次々と明らかになってきています [1]。 インターロイキン3 (Interleukin-3, IL-3) は、炎症や自己免疫疾患との関わりが強いサイトカインですが [2]、 AD のリスク [3, 4, 5, 6] や重症度 [7, 8] と […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) と脂質異常症の関係は以前から報告されており、Low-density lipoproteins (LDL) とアミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) 、タウとの関係も研究されてきました。 ADと脂質異常の関係で最も頭に浮かんでくるタンパクはアポリポタンパクE (Apolipoprotein E, APOE) […]
外傷性脳損傷 (traumatic brain injury, TBI) は、外傷による神経障害を指し、特に後にタウやTDP-43が異常凝集し、神経変性が起こる慢性外傷性脳症候群 (chronic traumatic encephalopathy, CTE) が社会問題となっています。 外傷後にどのように神経変性が起こるのかについては、様々なメカニズムが推測されており、治療ターゲットとしていくつか […]