グリアを神経に変えて病気を治す……という論文には間違いがあったらしい
以前このブログで、「グリアに遺伝子改変操作を加えて機能性ニューロンに変化させる」という内容の論文を紹介しました。 上記2つはマウスのPtbp1をノックダウンしてアストロサイトをニューロンに変える [1, 2] という方法 でしたが、 他にもNeuroD1を過剰発現させてニューロンに変える [3, 4, 5] という方法もあります。 両者とも主に中国からの報告が多く、「最近の中国は凄いな」と思ってい […]
以前このブログで、「グリアに遺伝子改変操作を加えて機能性ニューロンに変化させる」という内容の論文を紹介しました。 上記2つはマウスのPtbp1をノックダウンしてアストロサイトをニューロンに変える [1, 2] という方法 でしたが、 他にもNeuroD1を過剰発現させてニューロンに変える [3, 4, 5] という方法もあります。 両者とも主に中国からの報告が多く、「最近の中国は凄いな」と思ってい […]
クライオ電子顕微鏡法(cryo-electron microscopy, cryo-EM)でのフィラメント構造解析については、このブログでも何回かとりあげました。 主に、イギリス・MRC分子生物学研究所の Dr. Goedert、Dr. Scheres らの研究グループからの報告が多く、ここ数年の間にタウオパチーやシヌクレイノパチーのフィラメント構造を次々と解明してきました。 今回彼 […]
ミクログリアは脳内のお掃除屋さんで、アミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)、タウ、αシヌクレイン(α-synuclein, α-syn)など、神経変性疾患に関わる様々な病的蛋白を貪食・分解・除去してくれています。 でも、ミクリグリアにだってキャパシティがあり、あまりにたくさんの病的蛋白を処理しなければならないと、お腹いっぱいですぐにキャパ超えしてしまいます。 そんな時、ミクログリア達はど […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の90%は孤発性で、リスク遺伝子多型に関しては今までにも何度かゲノムワイド関連解析 (genome-wide association study, GWAS) が行われてきました。 今までで一番大きいGWAS解析では、71,880症例のAD群と383,378症例のコントロール群のGWAS解析で、29のリスク多型を報告 […]
家族性アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の殆どはAβ産生系の遺伝子に変異があり、10%はアミロイド前駆蛋白 (Amyloid precursor protein, APP) の遺伝子に変異が報告されています。 今回、スウェーデン・Uppsala大学の Dr. Ingelsson らの研究グループは、新たな変異として、APPのUppsala変異を報告し […]
筋萎縮性側索硬化症 (Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS) は、主に上位下位の運動神経が障害されていく疾患で、約10%が家族性、90%が孤発性に発症します。 ALSで同定されているものの中で最も多い遺伝子変異は C9orf72の6塩基反復配列の伸長で、家族性ALSの約40%、孤発性ALSの約8%に認められています。 C9orf72がALSを発症する機序の一つとして […]
運動がアルツハイマー病などの認知症予防に効果的であることは、このブログでも何度かとりあげました。 機序的にも疫学的にも、運動の認知機能に対するポジティブな効果は疑いようがないんじゃないかと思います。 でも運動の効果って、年齢や性別、基礎疾患などによって様々なような気がしますね。 今回、アメリカ・Rush 大学の Dr Desai らの研究グループは、血漿中のタウをバイオマーカーとして、運動の有無や […]
COVID-19 で自宅待機が長らく続き、精神的に辛い日々を過ごされた方は多いんじゃないかと思います。 外を出歩けず、対面で人と話せず……社会的に隔離されたように感じていたかもしれません。 アメリカでは、COVID-19 で自宅待機が続く間、精神科受診が必要な人達が 30% 以上上昇したというニュースもありました。 実際社会から孤立すると、脳内ではどのような変化が起こるのでしょうか? 今回、アメリ […]
睡眠時、海馬で観察される脳波の一つにリップル波(sharp wave ripple)があり、学習直後の睡眠時に一過性に上昇して記憶の定着に関与することが知られています [1]。 また一方で、海馬は視床下部とのコネクションも強く、ホルモン調節にも関与しているのではないかと言われているそうです [2]。 今回、アメリカ・ニューヨーク大学の Dr. Tingley, Dr. Buzsáki らの研究グル […]
神経変性疾患分野では、老化細胞 (senescent cells) への注目が集まっていると思います。 以前、老化したグリアを除去するとモデルマウスのタウ病理と認知機能が改善したという論文を紹介しましたが、 今回は、そのメカニズムに注目した論文。 アメリカ・テキサス大学の Dr. Kayed らの研究グループは、アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) や […]
ミクログリアが神経シナプスの剪定を行い、シナプスの再編や可塑性に重要な役割を果たしている事は周知の事実ですが、 その働きについては主に興奮性シナプスについて研究されてきました [1, 2]。 ただ、最近明らかになってきたように、ミクログリアには非常に広い多様性があり、それぞれのサブタイプによって働きが大きく異なります [3, 4]。 今回、アメリカ・ハーバード大学の Dr. Fishell らの研 […]
脳卒中や筋萎縮性側索硬化症 (Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS) などの疾患で、手足も動かせず、言葉も発せられない患者さん達は、自分の考えていることを周りに伝えることができません。 私が患者さんの立場だったら、 「今思っていることをテレパシーで伝えられたら」 と歯痒い気持ちでいっぱいになると思います。 今回、アメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ […]
TREM2 (triggering receptor expressed on myeloid cell 2) は、アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のリスク遺伝子の一つで、 TREM2 の変異をヘテロで持つ人達は、low-of-function で約3倍 AD になりやすいといわれています [1, 2]。 また TREM2 ノックアウトマウスでは、 […]
抗 アミロイドβ 抗体ドナネマブ (Donanemab, LY3002813) の第2相臨床試験の結果を受けて、 イーライリリー (Eli Lilly) とバナー・アルツハイマー病研究所(Banner Alzheimer’s Institute)がドナネマブの第3相試験を行うことを発表しました。 対象者は、 「認知症を発症していないけれども、血漿 p-tau217 が上昇 […]
パーキンソン病 (Parkinson’s disease, PD) と多系統萎縮症 (Multiple system atrophy, MSA) の主体病理は α-シヌクレイン (α-synuclein, α-syn) の凝集体で、 その凝集体の構造の違いが、病理の脳内分布や臨床症状の違いに影響を与えている、という考えが一般的になっています [1] 。 以前、ベルギーの Dr. Bae […]
高齢になればなるほどアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) に罹患する人たちの数は増えていきますが、 同じ年齢でも AD になる人とならない人がいます(どんな病気でもそうですが。) その原因を究明すべく、研究者たちは日夜頑張っているわけですが、 今回、アメリカ・マウントサイナイ医科大学の Dr. Tu らの研究グループは、 AD の人たち AD じゃない人 […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) などの神経変性疾患において、ニューロンだけでなくグリアやサイトカインの役割も次々と明らかになってきています [1]。 インターロイキン3 (Interleukin-3, IL-3) は、炎症や自己免疫疾患との関わりが強いサイトカインですが [2]、 AD のリスク [3, 4, 5, 6] や重症度 [7, 8] と […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) と脂質異常症の関係は以前から報告されており、Low-density lipoproteins (LDL) とアミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) 、タウとの関係も研究されてきました。 ADと脂質異常の関係で最も頭に浮かんでくるタンパクはアポリポタンパクE (Apolipoprotein E, APOE) […]
外傷性脳損傷 (traumatic brain injury, TBI) は、外傷による神経障害を指し、特に後にタウやTDP-43が異常凝集し、神経変性が起こる慢性外傷性脳症候群 (chronic traumatic encephalopathy, CTE) が社会問題となっています。 外傷後にどのように神経変性が起こるのかについては、様々なメカニズムが推測されており、治療ターゲットとしていくつか […]
APOE4は、孤発性アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の最大のリスク多型ですが、 動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクも高く、血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)など、血管障害のメカニズムについても研究が進んでいます。 アメリカ・カリフォルニア大学の Dr. Zlokovic らの研究グループは、以前、 […]
筋萎縮性側索硬化症 (Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS) は、運動神経変性を主とする神経変性疾患ですが、 90%が孤発性で、家族性ALSは10%くらいと言われています。 その家族性ALSの原因遺伝子として最初に同定されたのは Cu/Zn superoxide dismutase (SOD1) 変異です。 ALSの病態機序はまだ完全には解明されておら […]
家族性アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の患者さんを対象に、薬剤の治療効果を観察する DIAN-TU 研究で、 ガンテネルマブ (Gantenerumab) ソラネズマブ (Solanezumab) の4-7年間の観察結果が報告されました [1]。 結果だけみるとネガティブなんですが、バイオマーカーは下がったところもあるよう……アデュカヌマブと似てま […]
昨年、寿命に関わる膜タンパク Klotho遺伝子 の、F352V (rs9536314) とC370S (rs9527025) の二つのミスセンス変異をヘテロで持つ人達(Klotho-VShet)はアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) になりにくいという論文を紹介しましたが[1] 、 今回、ドイツ・ミュンヘン大学の Dr. Neiuzel、Dr. Ewe […]
「アデュカヌマブ」が初めてのアミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) 抗体としてFDAの限定承認を受け、良くも悪くも注目されている Biogen ですが、 もちろん、他のアプローチによるアルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) 治療についても続々と薬を開発しており、 どんどん臨床試験を進めています。 先日は、タウ抗体「ゴスラネマブ ( […]
アデュカヌマブのFDA限定承認で注目を集める、アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の免疫療法ですが、 もちろん、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) だけでなく、もう一つの AD 主要病理であるタウに対する免疫療法(ワクチン、抗体療法)もどんどん開発され、続々と臨床試験が行われています。 今回、Axon Neuroscience SE社が […]
「頭部外傷 (traumatic brain injury, TBI) 」には、 一回の強い外傷によって生じる頭部外傷 複数回の慢性的な外傷によって生じる脳障害 に分けられます。 後者の中に、「慢性外傷性脳症 (chronic traumatic encephalopathy, CTE) 」も分類されます。 CTE は、複数回の頭部外傷後に進行性の認知機能低下を生じる神経変性疾患です [1]。 ボ […]
アポリポタンパクE (Apolipoprotein E, APOE) は、孤発性アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の最大のリスク多型ですが、その多くはアストロサイトから分泌されます [1]。 以前、アストロサイト由来のAPOEがAD病理に与える影響について取り上げました [2, 3]。 でも、ニューロンから極わずかに分泌されているAPOEも、ADの病 […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) のバイオマーカーは年々進化していっているように感じています。 私が修練医だった頃は、髄液中Aβ42/40比の有用性は報告されていたものの、たいていは神経診察と脳MRI、SPECTやFDG PETくらいで診断していました。 今では、アミロイドPETに加えてタウPETが登場し、近年は髄液中ではなく血漿のリン酸化タウが測定 […]
脳の髄膜リンパ管が “再発見” されてから [1, 2]、神経変性疾患と髄膜リンパ管との関連についての研究が立て続けに報告されています [3, 4, 5]。 それと並行して、髄膜内の免疫系についても注目が集まっているようです (Glossary 参照)。 今回、アメリカ・メイヨー・クリニックの Dr. Mesquita, Dr. Kipnis らの研究グループは、 加齢によ […]
パーキンソン病 (Parkinson’s disease, PD) や多系統萎縮症 (Multiple system atrophy, MSA) の主要病理、レヴィ小体やオリゴデンドログリア細胞内嗜銀性封入体 (glial cytoplasmic inclusion, GCI) の主要成分は、α-シヌクレイン (α-synuclein, α-syn) と言われています。 1960年代か […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の主要病理の一つ、タウは、リン酸化の他、アセチル化、ユビキチン化、SUMO化、ニトロ化など、色々な翻訳後修飾(post-translational modification, PTM)を受けており、様々な機序で病態に関与すると言われています。 今回、アメリカ・アインスタイン メディカルセンターの Dr. Cuervo […]
アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の主要病理の一つ、神経原線維変化 (neurofibrillary tangles, NFTs) は、主に過リン酸化タウで構成されています。 このタウ病理の広がり方については、Dr. Braak の提唱する「Braak仮説」が最も有力とされています [1]。 ただ、実際の AD 患者さんの脳MRIをみていると、Pos […]
アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) の抗体療法は、アルツハイマー病 (Alzheimer’s disease, AD) の治療として最も期待がかかっている治療法の一つですが、 治験の結果は、マウスの実験結果ほど手応えがない……というのが現状です。 マウスとヒトとで脳内環境が異なる、というのがその答えになるとは思いますが、 では具体的にどこを改善したら、ヒトでもAβ抗体療 […]
Alzheimer’s disease (AD) の 主要病理の一つである アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) プラークですが、その形態によって、いくつかの種類に分かれています [1, 2]。(Glossary参照) その中でも、孤発性 AD の脳内で多くを占める Aβプラークは、 中心にコアを持つ、典型的老人斑 (cored plaques) 中心にコアを持たない、び […]
神経変性疾患で大きなトピックとなっているタンパク凝集体の実験について。 リコンビナントのタウやα-シヌクレイン (α-synuclein, α-syn) の凝集体は、実際の患者さん脳内のタンパク凝集体と構造が異なることが、度々問題になってきました。 でも、ヒトの脳からタンパク凝集体を抽出するのは毎回大変だし、サンプル数も限られている…… という事で、うちのラボで必死になってやっているのが、 「ヒト […]
アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) もタウもα-シヌクレイン (α-synuclein, α-syn)も、 モノマー → オリゴマー → フィブリル とだんだん大きく凝集していき、 神経細胞やそれ以外の場所に蓄積していきます。 またフィブリル等の一部が離れてシードとなり、別の細胞内で新たなフィブリルを形成し、病態を伝播させるとも言われています。 このざっくりと3つに分 […]