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パーキンソン病(Parkinson's disease, PD)は、非運動症状(睡眠障害、便秘、嗅覚異常 etc.)の後に、運動症状(安静時振戦、筋強剛、無動/寡動、姿勢反射障害 etc.)をきたし、重症化すると歩行が困難になります。

運動症状は、早期の段階ではL-DOPAやドパミン受容体アゴニストなどの薬物療法で改善できますが、症状が進行すると、薬物療法だけでは対応できず、脳深部刺激療法(deep brain stimulation, DBS)などの外科的処置を組み合わせたりします。

このような進行期PD患者さんの多くは、歩くために足を出そうとしても足が前に出てこず止まってしまう、「すくみ足(freezing of gait)」と呼ばれる現象で困っています。

このすくみ足で困っている患者さんの歩行を助けたい!……とゆーことで、米国ボストン大学のDr. Terry Ellis、ハーバード大学のDr. Conor Walshらの研究グループは、すくみ足の歩行を助けるウェアラブルロボットを開発しました [1]

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パーキンソン病患者さんの歩行を助けるロボ

彼らが開発したのは、ウェアラブルな装置で、股関節屈曲(足の前方への振り出し)を助けます。

その装置は、ケーブル駆動のアクチュエータ(電気エネルギーを機械的な力へ変換する)と、ウェストと太ともに着用するセンサーで構成されています。

センサーで収集された運動データをもとに、アルゴリズムで歩行サイクルの様子を推測して、生体筋肉と強調して運動を補助します。

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この装置を、すくみ足で困っている73歳のPD患者さんに装着し、6ヶ月間、繰り返し測定が行われました。

歩行の最初のフェーズ(つま先を持ち上げる動き)で、装置が股関節屈曲をサポートし、患者さんのすくみ足がなくなり、歩行速度と歩行距離が改善しました。

これは、すくみ足を引き起こす様々な状況(同時に話すなどの二重タスク etc.)や様々な場所(実験室、屋外歩行 etc.)で複数日に渡って有効であることが示され、また事前の訓練なしに効果が現れました。

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以上の結果から、このようなウェアラブルデバイスは、進行期PD患者さんの歩行を助ける、有用なツールとなる可能性が示唆されました。

My View

去年の秋ごろにも、脊髄を刺激するデバイス(neuroprosthesis)の移植が、DBSとDA細胞移植の相乗効果を示して、進行期PD(病期30年)の歩行を改善したという報告がありました [2]

また、このブログでも、脳幹梗塞でしゃべれなくなった患者さんの脳の電気信号を読み取り、言語化するというデバイスを紹介しました [3]

病期のメカニズムを解明して、治療法を開発する、というアプローチも重要ですが、「じゃあ、今困っている患者さんに対して、どんな事ができるの?」という事で、このように患者さんのQOLを改善させるデバイスの開発も非常に重要だと思います。

References

  1. Wearable robot helps man with Parkinson's disease to walk. Nat Med. 2024 Jan 15. doi: 10.1038/s41591-023-02756-z. Epub ahead of print. PMID: 38225368.
  2. Milekovic T, Moraud EM, Macellari N, Moerman C, Raschellà F, Sun S, Perich MG, Varescon C, Demesmaeker R, Bruel A, Bole-Feysot LN, Schiavone G, Pirondini E, YunLong C, Hao L, Galvez A, Hernandez-Charpak SD, Dumont G, Ravier J, Le Goff-Mignardot CG, Mignardot JB, Carparelli G, Harte C, Hankov N, Aureli V, Watrin A, Lambert H, Borton D, Laurens J, Vollenweider I, Borgognon S, Bourre F, Goillandeau M, Ko WKD, Petit L, Li Q, Buschman R, Buse N, Yaroshinsky M, Ledoux JB, Becce F, Jimenez MC, Bally JF, Denison T, Guehl D, Ijspeert A, Capogrosso M, Squair JW, Asboth L, Starr PA, Wang DD, Lacour SP, Micera S, Qin C, Bloch J, Bezard E, Courtine G. A spinal cord neuroprosthesis for locomotor deficits due to Parkinson's disease. Nat Med. 2023 Nov;29(11):2854-2865. doi: 10.1038/s41591-023-02584-1. Epub 2023 Nov 6. PMID: 37932548.
  3. Moses DA, Metzger SL, Liu JR, Anumanchipalli GK, Makin JG, Sun PF, Chartier J, Dougherty ME, Liu PM, Abrams GM, Tu-Chan A, Ganguly K, Chang EF. Neuroprosthesis for Decoding Speech in a Paralyzed Person with Anarthria. N Engl J Med. 2021 Jul 15;385(3):217-227. doi: 10.1056/NEJMoa2027540. PMID: 34260835.
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