アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)の代表的な病理といえば、
- アミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)
- タウ
- 神経炎症
- 血管病変
- 神経障害
などが挙げられるかと思います。
これらの変化をリアルタイムで見る方法として、AβやタウのPETトレーサーが開発されてきました。
そして、最近は神経炎症の変化を追うため、活性化ミクログリアをターゲットとしたトレーサーも開発され、実用化への動きが進んでいます。
今回、アメリカ・ピッツバーグ大学の Dr. Pascoal, Dr. Rosa-Neto らの研究グループは、
活性化ミクログリアPET、アミロイドPET、タウPETを使って、活性化ミクログリアの広がりがタウ病理の広がりに先行することを報告しました [1]。
活性化ミクログリアがタウ病理の広がりを介在する……かも
今回著者らは、130人の被験者に対して、下記3つのPETおよび脳脊髄液(cerebrospinal fluid, CSF)検査を行いました。
- [11C]BR28:活性化ミクログリア
- [18F]AZD4694:Aβ
- [18F]MK-6240:タウ
です。
まず彼らは、活性化ミクログリアのマーカーとして使用されているCSF中の可溶性TREM2量と[11C]BR28の陽性所見に正の相関があり、[11C]BR28がうまく機能している事を示しました。
また、[11C]BR28は他の炎症系マーカーの上昇と正の相関を示しました。
続いて、この活性化ミクログリアの広がりをタウPETの広がりと照合すると、
タウのBraak Stageと同じように活性化ミクログリアの広がりがあり、またタウ病理の進展に先行するように活性化ミクログリアが進展していくデータが得られました。
また、Aβ PETと照合すると、活性化ミクログリアはAβの蓄積量によって規定されるようなデータが得られ、「タウ病理の広がりには、『Aβ→ミクログリアの活性化』のファクターが必要」という可能性が示唆されました。
最後に、Aβ、タウ、ミクログリア、APOEなどのファクターの組み合わせで認知機能を評価すると、
「Aβ+タウ+活性化ミクログリア」の組み合わせを持つ人達が最も認知機能障害が強く、
「Aβによって惹起された活性化ミクログリアが、タウ病理の伝播を介在する」という可能性が示唆されました。
Microglial activation and tau accumulation propagate together in patients with Alzheimer’s disease, suggesting an interaction that determines disease progression.
References
- Pascoal TA, Benedet AL, Ashton NJ, Kang MS, Therriault J, Chamoun M, Savard M, Lussier FZ, Tissot C, Karikari TK, Ottoy J, Mathotaarachchi S, Stevenson J, Massarweh G, Schöll M, de Leon MJ, Soucy JP, Edison P, Blennow K, Zetterberg H, Gauthier S, Rosa-Neto P. Microglial activation and tau propagate jointly across Braak stages. Nat Med. 2021 Sep;27(9):1592-1599. doi: 10.1038/s41591-021-01456-w. Epub 2021 Aug 26. Erratum in: Nat Med. 2021 Oct 15;: PMID: 34446931.