CSF中のpTau217

アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)のバイオマーカーとして、

血漿中のAβ/タウ/NfLの組み合わせの報告(こちら)、

血漿中のp-tau181の報告(こちら)等、

色々でてきていますが、

今回は脳脊髄液(cerebrospinal fluid, CSF)中のp-tau217が、Aβ PET陽性となる前から上がっていて、CSF中p-tau181よりも特異度が高い、というお話。

p-tau217とp-tau181の比較

From ワシントン大学/Gui de Chauliac病院/Montpellier大学

一つ目は、アメリカ・ワシントン大学のBarthelémyら、フランス・Gui de Chauliac病院のGabbelleら、Montpellier大学のLehmannらの研究グループから

ADのバイオマーカーとして、p-tau181が注目されているが、完全にAD specificとは言えない。

もっと特異度の高いマーカーを探すため、Montpellier Memory Research and Resources Centerに登録されたAD患者のCSFを調べた。

また、2ndコホートとして、認知機能正常、軽度認知機能障害(mild cognitive impairment, MCI)、AD患者のPiB-PETデータと比較した。

  • Montpellierコホート:AD, n = 10; non-AD, n = 40 (FTLD n = 9, LBD n = 9, PSP n= = , ACIH, n = 6, mixed dementia n = 2, 癌脳転移 n = 1, 認知機能正常n = 5)
  • WUSTLコホート:Amyloid(-), n = 51; Amyloid(+), n = 33

結果、pT217はpT181よりも、ADと他のタウオパチーとを識別できた。

pT217はAD患者で6倍上昇しており、pT181は1.3倍だった。

CSF中pT217量の多い患者は、Amyloid PETでも陽性を示し、特異度は90% (AUC 0.961; CI 0.874 to 0.995)、相関率は0.72(p <0.001)だった。

From Lund大学/Janssen Research & Development/イーライリリー

もう一つは、スウェーデン・Lund大学のHansson、Hanelidzeら、アメリカ・Janssen Research & DevelopmentのKolb、イーライリリーのDageらの研究グループから

CSF中のp-tau217がp-tau181よりも優れたバイオマーカーとなり得るかどうか、調べた。

Swedish BioFINDERコホート(n = 194)では、p-tau217はタウPET([18F]flortaucipir)によるタウ蓄積量と強い相関を示し、経時的に増える様子も確認できた。

p-tau217はp-tau181に比べてCSF中AβやアミロイドPETでのAβ蓄積量との相関が強く、ADとAD以外の認知症をよりよく識別できた。

もう一つのコホート(EXPEDITION3、n = 32)でも同様の結果を得た。

これらの結果は、p-tau217はp-tau181よりも優れたバイオマーカーとなり得る事を示唆している。

My View

今回は、CSFでのバイオマーカーとして、p-tau217の方がp-tau181よりも感度・特異度が高く、ADとそれ以外のタウオパチーとの識別に有望との事。

p-tau181は血漿中でも測定可能(Janelidze et al., Nat Med, 2020; Thijssen et al., Nat Med, 2020)という事なので、需要は高いと思いますが、そのうち血漿中p-tau217の報告も出てくるのでしょう。

以前、凝集タウの構造の違いを認識して、ADやそれ以外のタウオパチーを識別する抗体を作ろうと色々考えていましたが、リン酸化の場所で識別できるのであれば、そして特異度が高いのであれば、そっちの方が簡単でいいかも、と思いました。

バイオマーカー、どんどん出てくるな……

References

  1. Barthélemy, N.R., Bateman, R.J., Hirtz, C. et al. Cerebrospinal fluid phospho-tau T217 outperforms T181 as a biomarker for the differential diagnosis of Alzheimer’s disease and PET amyloid-positive patient identification. Alz Res Therapy 12, 26 (2020). https://doi.org/10.1186/s13195-020-00596-4
  2. Janelidze, S., Stomrud, E., Smith, R. et al. Cerebrospinal fluid p-tau217 performs better than p-tau181 as a biomarker of Alzheimer’s disease. Nat Commun 11, 1683 (2020). https://doi.org/10.1038/s41467-020-15436-0
  3. Janelidze, S., Mattsson, N., Palmqvist, S. et al. Plasma P-tau181 in Alzheimer’s disease: relationship to other biomarkers, differential diagnosis, neuropathology and longitudinal progression to Alzheimer’s dementia. Nat Med 26, 379–386 (2020). https://doi.org/10.1038/s41591-020-0755-1
  4. Thijssen, E.H., La Joie, R., Wolf, A. et al. Diagnostic value of plasma phosphorylated tau181 in Alzheimer’s disease and frontotemporal lobar degeneration. Nat Med 26, 387–397 (2020). https://doi.org/10.1038/s41591-020-0762-2
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