1999年にSchenkらの研究グループがアミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)抗体による、ADモデルマウス脳内のAβプラーク消失と認知機能改善を報告 [1] して以来、現在まで多くのAβ抗体が開発され、臨床応用に向けて様々な努力が続けられています。
Aβ抗体のAβ除去メカニズムについては、諸説ありますが、現在ではミクログリアの貪食作用を介したAβ除去説が一番に考えられています。
他には、Aβ凝集抑制作用、peripheral sink仮説、Aβオリゴマー中和作用 etc.が報告されているようですが、
今回、スウェーデン・Lund大学のDr. Linse, Hanssonらの研究グループは、今まで製薬会社が臨床試験を行ってきた4つのAβ抗体について、
Aβの凝集過程における各抗体の作用機序について調べました。
Aβ抗体の持つ、Aβ凝集阻害機能について検証
調べた抗体は、下記4種類
- アデュカヌマブ(aducanumab)
- ガンテネルマブ(gantenerumab)
- バピヌズマブ(bapineuzumab)
- ソラネズマブ(soranezumab)
結果、
- ソラネズマブは一時核形成を阻害
- バピヌズマブとガンテネルマブはフィブリル伸長を阻害
- アデュカヌマブはフィブリルからオリゴマーの二次核形成を阻害
- アデュカヌマブはフィブリル表面を覆うことで、オリゴマーの二次核形成を逃れる
というもので、顕微鏡下では同じようにプラークを減少させる抗体達の作用機序が少しずつ異なる、という事。
このように、各抗体の作用機序がわかってくると、
違う作用機序の抗体を組み合わせて臨床試験を組んだり、
同じ作用機序の抗体でより効果の強いものを開発・使用したりと、
臨床応用の幅が広がってくるように思います。
今回の論文では、現在治験中の他の抗体達(crenezumab, donanemab, BAN2401 etc.)は含まれていないので、
できれば今後、それらも同様にみてほしいなーと思います。
Glossary
進行中のAβ抗体療法(Passive)[2]
Name | Synonyms | FDA Status | Company |
Aducanumab | BIIB037 | AD (Phase 3) | Biogen, Neurimmune |
BAN2401 | mAb158 | AD (Phase 3) | Biogen, Eisai Co., Ltd. |
Crenezumab | MABT5102A | AD (Phase 2) | AC Immune SA Genentech Hoffmann-La Roche |
RG7412 | |||
Donanemab | N3pG-Aβ mAb | AD (Phase 2) | Eli Lilly & Co. |
LY3002813 | |||
GSK933776 | AD (Inactive) | GlaxoSmithKline (GSK) | |
Gamunex | Intravenous Immunoglobulin, | AD (Phase 2/3) | Grifols Biologicals Inc. |
Human Albumin Combined With Flebogamma | |||
Gantenerumab | RO4909832 | AD (Phase 3) | Chugai Pharmaceutical Co., Ltd. Hoffmann-La Roche |
RG1450 | |||
LY3372993 | AD (Phase 1) | Eli Lilly & Co. | |
MEDI1814 | AD (Phase 1) | Eli Lilly & Co. | |
Octagam®10% | Intravenous Immunoglobulin | AD (Inactive) Mild Cognitive Impairment (Inactive) |
Octapharma |
NewGam | |||
RO7126209 | RG6102 | AD (Phase 1) | Hoffmann-La Roche |
Brain shuttle gantenerumab | |||
SAR228810 | AD (Phase 1) | Sanofi | |
Solanezumab | LY2062430 | AD (Phase 3) | Eli Lilly & Co. |
進行中のAβ抗体療法(Active)[2]
Name | Synonyms | FDA Status | Company |
ABvac 40 | AD (Phase 2) | Araclon Biotech | |
ACI-24 | Pal1-15 acetate salt | AD (Phase 2), Down's Syndrome (Phase 2) | AC Immune SA |
Lu AF20513 | AD (Phase 1) | H. Lundbeck, Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd. | |
UB-311 | AD (Phase 2) | United Neuroscience |
References
- Schenk D, Barbour R, Dunn W, Gordon G, Grajeda H, Guido T, Hu K, Huang J, Johnson-Wood K, Khan K, Kholodenko D, Lee M, Liao Z, Lieberburg I, Motter R, Mutter L, Soriano F, Shopp G, Vasquez N, Vandevert C, Walker S, Wogulis M, Yednock T, Games D, Seubert P. Immunization with amyloid-beta attenuates Alzheimer-disease-like pathology in the PDAPP mouse. Nature. 1999 Jul 8;400(6740):173-7. doi: 10.1038/22124. PMID:10408445.
- Alzforum, https://www.alzforum.org/therapeutics/
自宅から行きやすい一つの神経内科に行きましたが、神経内科の領分とは一切関係無いので精神科へ行けの一点張りで門前払いでした。他に行きやすい所は紹介状が必要な大きな病院です。法律上特別料金を払えば重篤な患者さんは診ていただく事も可能なようですが、一刻をあらそうような患者さんが多い中気が引けますし、診ていただけるか疑問です。他にもう一つ入院も可能な中規模?の病院もややアクセスしづらい所にありますが、レビューに医療ミスの告発が多く、医療業務はとても大変な事は重々承知ですが不安です。どちらの病院へ行くべきか当方には判断が難しいです。何度も申し訳ございませんが、再びお知恵を貸していただく事は可能でしょうか。
そうだったんですか。それはお辛かったですね。
私はお母様を実際に診察していないので、精神疾患なのかどうかよくわかりません。ただ、脳神経内科は精神疾患の方々も多く受診され、自分達の専門外の領域の疾患に対してはなかなかお力になれない事が多いので、今回のように対応される事もあり、申し訳なく思います。
病院に関してですが、良いレビューの病院でも、在籍する医師の質には幅があると思います。逆もまた然りです。
医療ミスは治療や侵襲のある検査中に起こる事が多いと思いますので、今回のように診察を受けるだけなら、そこまで気にしなくてもよいかもしれません。(もちろん、あまりに多いようなら病院全体のシステムに問題がある可能性が高いですが。)
どちらにしても、今まで診療されていた医師からの紹介状があったほうがスムーズに診察を受けられるはずです。これまでの経過や処方内容(担当医師がそれらを処方した理由等)を知らずに診察するのは大変ですし、診断ミスにも繋がります。
今まで処方を受けていた精神科のDr.に「診療情報提供書(紹介状)」の作成をお願いしたほうが良いと思います。これは担当医師の義務でもありますので、依頼して断られる事はないはずです。
その紹介状を持って、行きやすいと仰っている大きな病院に行かれてみてはどうでしょうか。脳神経内科医が複数在籍している場合は、ホームページで専門を確認されると良いと思います。
大変ご丁寧な返信感謝の念が尽きません。推薦頂いた本も読んでみます。検査も早いうちに行いますね。以下母の追加情報です。もしお時間がございましたら、何かお気づきの点についてご意見を頂けると幸いでございます。現在57歳。痩せ型(若い頃はぽっちゃり)。恐らく慢性で2002年頃から不随意運動がたまに出始め、生活に大きな支障をきたし始めたのは2009年頃に集合住宅の両隣に新しい家族が引っ越して来たのですが昼夜問わず騒音の凄いご家庭と、夜に喧嘩の騒音が凄いご家庭に挟まれ、2014年頃に統合失調症の様な症状で暴言や玄関を蹴る等攻撃的になり、怒り狂いながら同じ内容の話を延々と時間帯を無視して繰り返し、会話が成り立たない状態になったのでMRIや血液検査を受けましたが異常は無く、ベンゾジアゼピン系の薬が出されましたが、眠気の副作用が強すぎて、何も出来なくなるため即服用中断。その後引越しました。その頃iHerbの存在を知り、ビタミンC、D、B群、マグネシウム、亜鉛、鉄と、とりあえず現代人に不足しがちなサプリを服用開始、自分のマンションを含む周囲の新築マンション建設ラッシュで騒音は続きましたが、統合失調症の様な症状は消失しました。しかし、イライラ易怒とホットフラッシュ等更年期障害の様な症状、慢性的な鼻詰まりで薬事性鼻炎、強迫性障害、実行機能障害の症状がありました。薬事性鼻炎には市販のステロイド剤を短期間用法容量内で使用開始と同時にレスタミンを服用し、点鼻薬の使用を断ちました。その後はホットフラッシュの回数は減りましたが、体調不良時に不正出血、便が漏れやすい、グルテン不耐症、皮膚筋炎、低気圧時の頭痛(糖質制限で出なくなるが、体重も減少し体力低下てしまう)、便秘、下痢、高FODMAP食品摂取でお腹の不快感など症状が様々で正確に把握する事が難しいです。また、体調と気圧の記録を2019年末頃からつけています。今年にメラトニンを服用してもらい、特に体調不良時は効きませんが、それ以外の日の睡眠の質は上がったようです。その後夏にミルクシスルを服用開始。気圧の変化に強くなり、基本的に台風の接近中か気圧が一気に下がった日(比較的疲れていない時はならない)以外は重度の症状(徹夜で症状が出る)が出なくなりました。ミルクシスルが効いた事で肝性脳症も疑いましたが、今年1月の血液検査に異常なし、羽ばたき振戦が見られないため、可能性は低いと判断しました。そして、脳神経内科と甲状腺疾患専門病院や代謝性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患の情報収集の際にこちらのブログを見つけた次第です。お恥ずかしい話ですが私自身も何らかの自己免疫疾患にかかっており、日々症状や対象が変化する食物アレルギー(一部変わらないものもあり)または不耐症を中心とするアレルギーマーチに悩まされ、今年前半は3月はじめに新型コロナに感染したような症状があり、食物アレルギーも一昨年から更に悪化したため、ほとんどの食物に対し何らかの症状が出てしまい、特に気道狭窄が多く、自身の症状を寛解させる方法も並行して調べていたため、このように母への対応が遅くなってしまいました。
詳細な情報をありがとうございます。
お母様はまだお若いのですね。
病歴からは精神疾患の可能性もありそうですが、以前、統合失調症の診断で精神科に入院加療されていた女性が、後に痙攣発作で当科へ搬送され、卵巣腫瘍が原因の辺縁系脳炎が判明した(それによって精神症状と不随意運動を生じていた)という症例も経験しており、精神疾患と脳神経疾患の鑑別は難しいことが多いと感じています。
お母様の経過は、ご推察の通り、慢性の発症・経過様式に入ると思います。
発症年齢、精神症状、常同行動などの行動障害、不随意運動などの情報からは、前頭側頭型認知症やハンチントン病などの神経変性疾患も鑑別に入ってくるように思います。初期のMRIでは特徴的な所見が得られない事も多いです。
ただ、本当にそれらの変性疾患らしいかどうかは、実際に神経所見をとってみないとわかりません。
また、お母様のように多彩な症状でお悩みの方の場合、それらの症状のうち、どれが原因疾患と最も関連していて、どれが関連が薄いか、という事を整理するのも重要だと思います。
例えば、消化器症状が精神症状と同じ原因疾患で起こっているかどうかは鑑別を考える際のヒントになりますが、同じ消化器症状でも、自律神経障害が原因か、消化管の異常なのか、免疫系の異常なのか、等、様々な原因が考えられますので、まずは症状毎に考えていく必要があると思います。
体調が悪いと色々な症状が一気に悪化するので、明確な線引きは難しい事も多いですが、原因疾患に最も関係していそうな症状と、別の原因も関与していそうな症状を区別して経過を追う事で、原因疾患を特定しやすくなります。
既にされているかもしれませんが、次に受診される際、主症状、随伴症状、全ての症状を項目別に分け、それぞれ時系列に並べて記載しておくことをお勧めします(できれば図式にするとわかりやすいです。先に紹介した本にも載っていると思います。)。そうすることで、担当医師が情報を整理しやすくなり、お母様に必要な検査の目処がたてやすくなるはずです。
あまり明確なお答えが出せず申し訳ありません。
お母様の原因疾患が特定され、症状が安定されることをお祈り致しております。
また、A.O.様ご自身も大変な状況とのこと、ご心労お察しいたします。アレルギー症状はかなりお辛いものと拝察しますが、そちらに関しても解決の糸口が得られますよう、お祈り申し上げます。
いつも素晴らしい記事を拝見させていただいております。上記の記事と関係ないので恐縮ですが、ミルクシスルというハーブもシリビンAやBがアミロイドベータ凝集阻害機能を持っていたと思うのですが、PUBMEDで検索したところ認知症関連の論文ばかりで中々母の謎の精神疾患の手がかりを見つけられず困っております。ミルクシスルは母の病気に有意な効果が見られたので、可能性のある病気をそこから逆算して絞れないかと情報を集めております。セロトニンやグルタチオン関連のサプリメントは効果がありませんでした。母は自律神経失調症やOCDに違いない(結果処方された薬に効果なし)等と診断されていますが、チック等を疑うようなロボットダンスの様な動き方や、数を延々と数え無いと作業できないなど、OCDだけでは説明がつかないのではと考えております。そのためチックトゥレット(タウ関連が原因との情報を見かけた)、バセドウ病などOCDを併発しやすい他の病気の情報も集めております。OCDの前は統合失調症とみられる症状がありました。難病指定の自己免疫疾患の一つ皮膚筋炎の症状が最近出ておりましたが、プラズマサイトイド樹状細胞を活性化させるヨーグルトを以前のように食べると治りました。この為バセドウ病のような根本的にはT細胞等自己免疫疾患が可能性もあるのかと考え始めました。大変厚かましい事は承知の上ですが、もし何か少しでも手掛かりになりそうな事(関連する本等)をご存知でしたら、ご教授頂けると幸いです。
お母様は大変難しい症状に悩まされておいでなのですね。
ミルクシスル等の情報については、すみませんが、よく知りません。
参考になるかどうかわかりませんが、頂きました情報の限りで、私が思うことを申しあげます。
内容がお母様の状況とずれていたら申し訳ありません。
まず、私達が疾患の目処を付ける際、発症様式を一つの参考にします。
• 突発性:突然発症。脳血管障害などを考えます。
• 急性:1日から1週間くらい。炎症性、自己免疫性疾患などを考えます。
• 亜急性:数週間から数ヶ月くらい。炎症性、自己免疫性、もしくは代謝性疾患などを考えます。
• 慢性:数年かけて増悪。神経変性疾患などを考えます。
(黒田康夫先生の「神経内科ケース・スタディー」という本の解説がわかりやすいと思います。)
お母様のご年齢や発症様式を存じ上げずなんともいえませんが、症状に変動があるようなので、代謝性疾患や自己免疫性疾患は鑑別に入ると思います。
ただ、病院を受診されているようですので、血液検査等は行われており、それに引っかかって来なかった、という事だと推察します。
例えば、ミルクシスルは肝機能障害にも効果があるようですが、肝性脳症では不随意運動をきたすことがあります(チック様の動きとは異なりますが)。けれども、もし肝機能障害があれば、血液検査でわかるはずです。
バセドウのような甲状腺疾患でも精神症状や不随意運動を伴うことがありますが、こちらも甲状腺機能等を検査すれば異常値がでてくると思います。
自己免疫性疾患も、抗体検査である程度スクリーニングできます。
もしそれらの検査(電解質、肝腎機能、内分泌機能、自己抗体、炎症反応、筋原酵素 etc.)を受けていないのであれば、一度検査を受けることをおすすめしますが、検査済みで異常が検出されていないのであれば、それらに関係する疾患はある程度除外できるのではないかと思います。(もちろん、完全に除外できるわけではありませんが。)
また、皮膚症状が精神症状と同一の原因疾患で発症したかどうかは定かではありませんが(独立して起こっていた可能性もあり得る)、
もし関連しているのであれば、症状が治まる前に皮膚科の医師に診てもらうと、そこから原因疾患を特定できる場合があります。皮膚症状が治まってからだと難しいと思いますので、今後症状が再発した場合には、すぐに皮膚科受診をお勧めします(既に受診されていたらすみません。)
また、神経変性疾患のような慢性疾患でも、それを背景に、全身状態によって症状が変動することがありますので、鑑別に入ると思います。
こちらは通常の血液検査等で指標になるものはありません。
不随意運動と精神症状をきたす変性疾患は色々ありますが、大脳基底核の機能障害は鑑別にあがります。MRI画像等で基底核の変性や障害等を疑う所見はありますでしょうか?もし萎縮や異常信号等の所見があれば、疾患を特定しやすいですが、なくても変性疾患を除外することにはなりません。
お母様の精神症状が、精神疾患によるものなのか、脳神経疾患によるものなのか、全身疾患によるものなのか、頂いた情報からだけは測りかねますが、
脳神経内科はそれらを鑑別する場所でもありますので、もし脳神経内科受診がまだのようでしたが、一度受診し、精査されることをお勧めいたします。