虫垂とパーキンソン病

パーキンソン病(PD)では、異常に凝集したα-シヌクレイン(α-Syn)が脳内や消化管に蓄積する。

Killingerらは、虫垂がPDの発症リスクや病態に関連するかどうか調べた。

虫垂とパーキンソン病

虫垂を切除するとパーキンソン病の発症リスクが減る

独立した2つの疫学データベース(SNPR: the nationwide Wsedish National Patient Registry, PPMI: the Parkinson's Progression Markers Intiative)に収納された1600憶人、9100憶人/年のデータを調べたところ、PD発症の何十年か前に虫垂切除術を受けた人はPDリスクが少なく、PD発症年齢が遅かった(19.3%の減少) 。

これは特に田舎の地域で顕著であった(25.4%の減少)。

また、健常人の虫垂にα-Synの凝集やC端末切断α-Synを認めた。

虫垂の抽出物をリコンビナントのα-Synに加えて48時間振盪させると、リコンビナントα-Synの切断やオリゴマー化が促進された。  

cf. Killinger BA et.al., Sci Transl Med. 2018 Oct 31;10(465). pii: eaar5280. doi: 10.1126/scitranslmed.aar5280.

My View

消化管にレヴィ病理があるということは以前から報告があり(Wakabayashi K et.al., Acta Neuropathol, 1990)、脳内では嗅球と脳幹から伸展するというBraak仮説(Braak H et.al., Neurobiol Aging, 2003)でも、消化管からの起源が示唆されていました。

ブラーク仮説Braak 仮説 (Braak H. et.al., Neurobiol Aging, 2003)

病的α-Synは、パーキンソン病の進行とともに嗅球から扁桃体、辺縁系より脳内に広がる系と、消化管(特に腸管)の自律神経より迷走神経を介して迷走神経背側核、青斑核、黒質へと上行する系とが提唱されている。

α-Synをマウス脳内に接種すると凝集α-Synが神経細胞間を伝播し、さらに黒質緻密部の神経細胞脱落を認める(Luk KC et.al., Science, 2012)事がセンセーショナルに報告され、

また最近、マウス消化管に接種したα-Synが脳内に伝播する(Manfredsson FP et.al., Neurobiol Dis, 2018; Uemura N et.al., Mol Nuerodegener, 2018)ことも証明されました。

ヒトの研究では、胃の迷走神経切断術を受けた患者さんではPDの発症リスクが減るという報告(Svensson et.al., Ann Neurol, 2015; Liu etl.al, Neurology, 2017)があり、実際にヒトでも、消化管から迷走神経を介して脳内にレヴィ病理が伝播する事を示した興味深い結果でした。  

消化管と一口に言っても、食道ー胃ー十二指腸ー小腸ー大腸と広範に広がっている中で、虫垂のみを切除して、果たしてPDに影響があるのか?

と、この論文のTitleとAbstractだけ読んだときには思いました。

よく調べようという気になったと思いますが、後ろ向きコホートとしてn数が多いですし、結果はとてもインパクトがあります。

著者らは、虫垂に着目した理由として、

  • PD患者と健常人の虫垂でα-Synの凝集体が多いという報告がある事
  • 腸内細菌による免疫の活性化とα-Synの蓄積が示唆される中、虫垂の粘膜には免疫細胞が多く存在している事

などを、理由に挙げています。 そのうち、PDの予防的治療として虫垂切除が選択肢に入ってくる日がやってくる……かもしれません。

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