私の所属する大学の必須トレーニングの一つに、Responsible Conduct of Research (RCR) についてのトレーニングがあります。
CITIという機関のRCRプログラムを受け、合格すると証書が与えられます。
CITI Program provides training courses for colleges and universities, healthcare institutions, technology and research organizations, and governmental agencies.
CITIプログラムの中のResponsible Conduct of Researchのテーマは、全部で9つのコースがあり、すべてパスしなければなりません。
研究をしたいなら、必ず知っておくべき項目ばかりだと思うので、ここに内容を記しておきます。
今回は、「Research Misconduct(研究不正)」についてです。
Research Misconduct
Research Misconductには、下記3点が含まれます。
- Fabrication (捏造)
- Falsification (改ざん)
- Plagiarism (盗用)
Fabricationとは、行っていない研究等のデータを自分で作り出すこと。
Falsificationとは、データの値や結果、画像etc. に手を加えて都合のいいように変更すること。
Plagiarismとは、人のデータを、その人の許可なしに勝手に使用し、自分の研究結果として発表すること。
ある研究グループが行ったアンケートでは、
現役研究者の2%が、上記いずれかに該当する不正を行ったことがあると回答し、
14%が同僚の研究不正を目撃したと回答したそうです。
Research Misconductを行う背景には、色々な要因があります。
ストレス
- グラントをとらなければならなかったり
- テニュアポジションで結果を出さないといけなかったり
- 昇給がかかっていたり
といったストレスにより、いい論文をだしたいという気持ちが強くなる事。
個人の性格
- 奢っていたり
- ナルシストだったり
- 自己肯定感が強すぎたり
といった、個人の性格に問題がある場合。
組織要因
- 施設のトレーニング環境が不十分だったり
- 研究室内で不正が蔓延していたり
と、本人が「研究不正」の何たるかを知らずに研究を始め、そのまま研究のキャリアを進めてしまった場合。
不正しやすい環境
- Photoshopやネット等で、画像加工が簡単になったり
と、簡単に改ざんしやすい環境があり、安易に利用してしまう事。
etc.
Research Misconductの範疇でない問題
下記にあげる項目は、同じく重大な問題ではあるけれども、Misconductの範疇には入らないそうです。
- Questionable Research Practice
- Noncompliance
- Sexual Harassment
- Authorship Disputes
My View
このトレーニングを受けながら、私は、小保方さんのSTAP細胞事件を思い出していました。
彼女はFablication(データの捏造)とFalsification(データの改ざん)の2点に該当する不正を複数行っており、研究者的には完全にアウトなのですが、
- 故意ではなかった
- 詳細にミスがあったが、STAP細胞は実在する
的なことを訴えており、
一般の人々の中には、彼女は組織に嵌められたと未だ信じる人も少なからずいるようです。
STAP細胞があるかどうかで議論する事ではなく、
1) 発表した研究内容が不正なく行われ、
2) 同様の方法で実験した場合に同様の結果が得られるか(再現性があるか)どうか
でその研究内容が認められるわけなので、
その2点がいずれもアウトだった時点で、
仮に何十年後にそれっぽい事実が判明したとしても、それによって彼女の研究内容が認められる事はないと思います。
この研究不正が行われた背景に、上記要因を当てはめると、
「彼女の個人的な性格」
の他、
「組織要因」と「加工技術」も大いに関係すると思いました。
彼女は大学院生時代にほぼコピペの博士論文で博士号をとり、そのような方法がラボ内で蔓延していたと聞いているので、
研究を始めた頃にしっかりとした「研究不正」に関するトレーニングを受けていなかったんじゃないかと思います。
また、一昔前に比べると、画像を簡単に加工できるようになったので、「研究不正」の知識がないため、「見栄え良く」見せるために安易に加工してしまい、それがエスカレートしていったのかもしれません。
私が大学院生でお世話になった大学は、大きな大学でしたが、
今の施設で必修化されているこのようなトレーニングは、当時、大学院生の必修科目に入っていませんでした。
意識の高い人はセミナーに参加し、そうでない人は「研究不正」がなんなのかわからないまま研究を続ける、そんな感じです。
(ちなみに私は後者寄りでした…反省。)
やはりどこの大学でも、ここで行われているようなトレーニングを必修化する必要があるんじゃないかと思います。
- Research Misconduct(研究不正)
- Data Management(データマネジメント)
- Authorship(オーサーシップ)
- Peer Review(査読)
- Mentoring(メンタリング)
- Conflicts of Interest(COI)
- Collaborative Research(共同研究)
- Research Involving Human Subjects(ヒトの研究)
- Using Animal Subjects in Research(動物実験)