CITIプログラム

私の所属する大学の必須トレーニングの一つに、Responsible Conduct of Research (RCR) についてのトレーニングがあります。

CITIという機関のRCRプログラムを受け、合格すると証書が与えられます。

今回のテーマは、「利益相反(Conflicts of Interest, COI)」です。

私がCOIという言葉を知った頃の話

私が研修医の頃、COIという言葉は知りませんでした。

いつからか覚えていないのですが、ある学会で「COIの開示」が求められ、

「COIってなんだろう?」と思ったのが、私がCOIの存在を知った瞬間です。

その後、ほぼ全ての学会が論文で「COIの開示」が求められ、

「COIって重要なんだな」という認識はつきました。

 

でも具体的に

  • COIとはどのようなものか
  • COIとどうつきあっていくべきか

という事はよくわかっていなかったので、今回はそれを学ぶいい機会になりました。

COIとは

COIは、

研究の結果に影響を及ぼす可能性のある全てのファクター

の事を指し、

responsible conduct of research (RCT) の1つとして位置づけられています。

Conflictの種類

COIと聞くと、経済的なConflictを思い描きがちですが、非経済的なCOIもあります。

現時点では、研究者として下記4つのConflictを認識しておく必要があります。

  • 経済的利益相反(Financial Conflicts of Interest)
  • 組織利益相反(Institutional Conflicts of Interest)
  • 非経済的利益相反(Non-Financial Conflicts of Interet)
  • 責務相反(Conflicts of Commitment)

Conflictの色々

経済的COI(Financial Conflicts of Interest)

経済的COIには、個人の経済的COIと組織の経済的COIがあります。

個人の経済的COI

  • 会社の株を所有している
  • コンサルティング業務を含めたサービスに対して報酬をもらっている
  • 知的財産権などを受け取っている

組織の経済的COI

  • 会社がその研究のスポンサーになっている
  • 会社がその研究のマテリアル等を所有している
  • 会社がその研究結果の影響を受ける(ポジティブにもネガティブにも)

 

その研究に関連のある財産を持っていたり、報酬を受け取っていた場合、

もしくはその研究に関連のある会社がある場合は、

経済的COIを開示しなければなりません。

組織的COI(Institutional Conflicts of Interest)

その研究を行っている研究施設が、会社とスポンサー契約を結んでいる場合、

もしくはどこかの財団や個人から寄付をもらっている場合などは、

組織的COIとして開示する必要があります。

非経済的COI(Non-Financial Conflicts of Interest)

非経済的COIには、下記3つがあります。

  • Academic conflicts of interest
  • Conflicts of conscience
  • Personal conflicts of interest

Academic conflicts of interest

ある研究結果をサポートする研究結果が、特定の研究室からだけ発表されていたら……

それはその研究室が、最初の研究結果を肯定したくて、以降の研究結果を過剰に評価してしまっている可能性があるかもしれません。

このようなバイアスは、アカデミックCOIのひとつと考えられます。

Conflicts of consicence

研究に従事する人に、その研究結果によって個人的利益が生じる場合、その研究の客観性は妨げられてしまうかもしれません。

このような背景をConflicts of conscienceといいます。

Personal conflicts of interest

誰かが、親戚や友達など、親しい人達の研究を監督する場合、Personal conflicts of interestが生じる醸しません。

例えば、雇用等の場面で、内部の人間の配偶者が優遇されたり、偉い人の親族が雇用されやすかったりといった事が時々問題になりますが、

これは Personal conflicts of interestの一例といえます。

責務相反(Conflicts of Commitment)

「Conflicts of Commitment」は、

「Conflicts of Effort」「Conflicts of Oblicgation」とも呼ばれます。

 

研究従事者が、複数の役職をこなしていて、メインの仕事に支障がでる場合、

責務相反が生じていると言います。

 

責務相反は、生産性を落とし、その人のキャリアを傷つけ、共同研究者に悪い印象を与えます。

 

……これ、私も個人的に気をつけたいと思っている内容です……肝に命じます。

 

今回のCITIで取り上げられた例としては、

学生がラボを立ち上げたばかりのファカルティの手伝いを要請された場合を上げていました。

立ち上げたばかりのラボはするべき仕事がたくさんあり、

その学生が本業を疎かにせざるを得ない状況を作り出します。

 

他にも、あるファカルティが他の組織での講演を依頼され、そのための準備に多くの時間を要する場合、

本業に支障がでるかもしれません。

 

上記のようなConflictsが生じないよう、関係する人達全てが気をつけておく必要があります。

なぜCOIが問題となる事があるのか

ここで注意しておきたいのは、COIの全てが問題というわけではない、という事です。

 

ただCOIは問題を生じる可能性があるので、

もしそのような環境が該当すれば、該当者は漏れなく報告し、

報告を受けた人達は適切に対応する必要がある、という事です。

COIが誘発する可能性のある問題

  • 研究結果にバイアスが入る場合がある
  • 信用度の低い研究結果が増える可能性がある
  • 個人や組織の評価にダメージが生じる
  • 資金調達の機会を失う

先日、今回とは別に「無意識に生じるバイアス」についてのレクチャーを受けましたが、

バイアスというものは、至るところに生じる可能性があります。

なので、

どのような場合にそれらのバイアスが生じやすいのか、しっかりと理解しておき、

予め対応策を講じる事が、健全な研究結果を生み出すために重要

という事だと思います

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