苔状細胞のシナプス障害とmiR128-STIM2

中国华中科技大学(Huazhong University of Science and Technology)のLuらのグループは、以前、歯状回にある苔状細胞(mossy cells, MCs)は、記憶の正確性に関与するという事を報告していた。

アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)では、細胞死よりも先にシナプス障害がおこると報告されている。であれば、

  1. 海馬のどの興奮性シナプスが早期ADで最初に障害されるのか。
  2. 記憶に直接関連するシナプス障害はあるか。
  3. その特定のシナプス障害のメカニズム解明はADの治療ターゲットとなり得るか。

歯状回苔状細胞のシナプス障害/記憶障害にmiR-128のSTIM2抑制が関与する

今回著者らは、APP/PS1マウスを解析し、海馬で苔状細胞とソマトスタチン抑制性介在ニューロンのシナプス伝達が障害されていることを明らかにした。

さらにこのAPP/PS1マウスのSingle-cell RNAシークエンスを行ったところ、miR-128の発現が増えていた。

miR-128は、STIM2(Stromal Interaction Molecule 2)の3'UTRに結合し、STIM2の翻訳を阻害した。

RNAiでmiR-128をサイレンスしたり、locked nucleic acid (LNA)-modified oligonucleotide (LNA-STIM2)でmiR-128とSTIM2の結合を阻害したりすると、APP/PS1マウスのシナプス機能および記憶障害が改善した。

miR-128の抑制やSTIM2の機能アップは、早期ADの記憶障害に対する治療ターゲットとして期待できる。
 

My View

APP/PS1マウスでは、miR-128の発現量↑ → STIM2抑制 → シナプス障害 → 記憶障害、という事のようですが、miR-128はAβ産生 ↑ の結果、という事でよいでしょうか。

単純にAβ量↑ → miR-128 ↑ なのであれば、孤発性ADの患者さんの脳内でも同じようにmiR-128が上がっていると思いますが、実際の所はどうなのか、是非確認してほしいです。

神経細胞がメタメタに死んでしまっている後期ADでは意味がないですが、「あれ?物忘れが強くなってきたかな?」くらいの早期ADの患者さんでシナプス機能を改善される事は、QOLアップにつながるでしょう。

miR-128を抑える薬、というのはどうするのかよくわからないけれど……この論文のLNA-STIM2のように、miR-128-STIM2の結合をブロックするのが一番よさそう。

安全性、安定性等はわからないけれど。

Reference

  1. Deng M et al., Mossy cell synaptic dysfunction causes memory imprecision via miR-128 inhibition of STIM2 in Alzheimer's disease mouse model. Aging Cell. 2020 Mar 28:e13144. doi: 10.1111/acel.13144.
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