- パーキンソン病(Parkinson's disease, PD)
- 認知症を伴うパーキンソン病(Parkinson's disease dementia, PDD)
- レヴィ(Lewy)小体型認知症(Dementia with Lewy bodies, DLB)
などは、
αシヌクレイン(α-synuclein, α-syn)の凝集を主成分とした、
- Lewy小体(Lewy bodies, LBs)
- Lewyニューライト(Lewy neurites)
等の「Lewy病理」を特徴とする疾患で、
「Lewy小体病(Lewy body disease, LBD)」と呼ばれています。
このLewy病理は、脳幹や大脳皮質 etc.だけでなく、
- 消化管
- 交感神経節
- 心臓
- 副腎
- 皮膚
- 嗅粘膜
- 嗅上皮
- 嗅球
- 下垂体後葉
- 脊髄
- 神経節後根
- 顎下腺
- 上気道
- 胆嚢
- 泌尿生殖器
等、様々な器官で認められ、
LBDの非運動症状(自律神経障害、消化管症状、精神症状、睡眠障害 etc.)と関連付けられています。
特に、消化管のLewy病理は、半数以上のLBD症例に認められ、消化器症状などLBDの症状の進行との関連が注目されてきました。
今回、東京都健康長寿医療センター・高齢者ブレインバンクの村山先生らの研究グループは、
LBDの剖検症例の様々な器官を調べ、LBDの臨床経過との相関を調べました [1]。
食道のレヴィ病理はLBDの進行と相関が高い
著者らは、518の剖検症例の病理所見を調べ、そのうち約1/3(n = 178, 34%)で、中枢神経 or 末梢神経にα-synの蓄積を認めた。
また、9症例 (5%) で末梢神経のみにα-synの蓄積を認めた。
末梢神経のα-syn病理をみると、下記の通りだった。
- 交感神経節:n = 125, 70.2%
- 心臓:n = 98, 55.1%
- 食道:n = 78, 43.8%
- 副腎:n = 60, 33.7%
- 皮膚:n = 32, 18.0%
彼らの施設では、α-syn、青斑核/黒質の色素脱落、パーキンソニズム、認知症、Lewy小体スコア等を元に、
独自に臨床病理ステージ(BBAR LB stage)を設定しているが、
そのBBAR LB stageと各臓器のα-syn病理所見との相関をみたところ、
食道のα-syn病理が最もBBAR LB stageと相関が高かった(r = 0.95)。
食道壁のα-syn+ Lewy小体病理は、Auerbach神経叢で最も多く(41.6%)、続いて外膜(33.1%)、Meissner神経叢(n = 14.6%)の順だった。
食道のLewy病理は、便秘等の自律神経障害(p < 0.0001)やLBDの進行(r = 0.95, p < 0.05)と優位に相関していた。
また、食道胃接合部のLewy病理は、LBDの進行期にみられる誤嚥性肺炎の合併との関連性が示唆された。
Reference
- Tanei, Zi., Saito, Y., Ito, S. et al. Lewy pathology of the esophagus correlates with the progression of Lewy body disease: a Japanese cohort study of autopsy cases. Acta Neuropathol (2020). https://doi.org/10.1007/s00401-020-02233-8