高血圧は、脳心血管系に重大なダメージを与えることは言う前でもありませんが、高血圧自体に症状はなく、
急性期高血圧でなければ、脳心血管系の破綻→重篤な疾患(脳卒中や心筋梗塞 etc.)となるまでには数十年の経過がかかるので、
「気にはなるけれども……」
と言いながら放置してしまう人もいるようです。
血圧には、収縮期血圧と拡張期血圧とありますが、
「血圧○○mmHg以上」というときには、大抵、収縮期血圧のことを指しています。
でも、拡張期血圧だって重要です。
今回、イギリス・オックスフォード大学のDr. WartolowskaとDr. Webbは、中年期の拡張期血圧が高いと、その後、脳白質の障害が強くなるということを報告しました [1]。
中年期の拡張期高血圧は晩年の脳白質障害に影響する
著者らは、UKバイオバンクに登録されている、40-69歳の37,041人の血圧データと、その4–12年後の血圧データ、そして脳MRIデータを調べた。
結果、脳MRI上の白質障害の程度は、同時期の収縮期血圧(systolic blood pressure, SBP)の方が拡張期血圧(diastolic blood pressure, DBP)よりも強い相関があった。
- SBP: β = 0.076, 95% CI 0.062–0.090
- DBP: β = 0.064, 95% CI 0.050–0.078
しかしながら、それよりも最も相関が顕著だったのは、4–12年前のDBPだった。
- SBP: β = 0.045, 95% CI 0.022–0.069
- DBP: β = 0.087, 95% CI 0.064–0.109
特に、50歳以前のDBPが、その後の脳白質障害に最も影響を与えていた。
- SBP: β = 0.012, 95% CI −0.044–0.069
- DBP: β = 0.103, 95% CI 0.055–0.152
血圧が基準値よりもちょっとでも上回ると、脳MRIの白質障害の程度が強くなっており、やはり血圧は正常範囲内に抑えることが重要のようだ。
晩年は収縮期血圧が重要な意味を持つが、中年期では拡張期血圧の方が重要とでており、血圧管理は、収縮期・拡張期ともに長期的にしっかりと管理する必要がある。
Reference
- Karolina Agnieszka Wartolowska, Alastair John Stewart Webb, Midlife blood pressure is associated with the severity of white matter hyperintensities: analysis of the UK Biobank cohort study, European Heart Journal, , ehaa756, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehaa756