女性

アルツハイマー病(Alzheimer's disease)における性差は多数報告されており、一般的には女性の方がリスクが高いと言われている。

マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)のBuckley、Sperlingらは、アミロイドβ(Amylid beta: Aβ)とタウの沈着の性差について調べた。

女性の方がタウが溜まりやすい?

女性の方がタウが溜まりやすい……模様

彼らは、HABS研究(Harvard Aging Brain Study)と、ADNI研究(Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative)のデータベースを元に、2016年1月から2018年2月の間にAβ-PET(11-labeled Pittsburgh Compund B、florbetapir F18)とタウ-PET(flortaucipir F18)を受けた健常人を調べた。

  • HABS研究:193人、55-92歳、女性118人(61%)
  • ADNI研究:103人、63-94歳、女性55人(51%)

また、血液検査でApoEのアイソタイプも調べた。

 

その結果、女性の方が男性に比べて、嗅内皮質のタウの沈着が多かった。また、Aβの沈着が多いほど、その差は顕著だった。

女性の方が嗅内皮質のタウ沈着が多い

また、ApoEのアイソタイプを比較したところ、ADNI研究のデータでは、ApoE4を持つ女性が、最も嗅内皮質のタウ沈着が多かった。

ApoE4をもつ女性とタウの関係

My View

女性、特にApoE4を持つ女性の方が、脳脊髄液(CSF)中のAβやタウの量が多いと報告されています(Hohman et.al., JAMA Neurol, 2018)が、PETでもそれが証明された形になりました。

認知機能が正常でも、女性の方がAβの沈着に伴ってタウが溜まりやすい、といえるようです。

 

この研究は横断研究なので、因果関係を示せるわけではありません。神経細胞が集まる皮質の厚さには性差がなかったようなので、逆に、同じくらいタウが溜まっても、女性の方が神経細胞が死ににくい、とも言えます。

けれどもそもそも認知機能低下がない人達なので、神経細胞死がそこまで顕著でなく、差がわからなかっただけかもしれません。

 

動物実験の結果からは、女性の方がAD病理が強くでると考えられていると思います。

Aβマウス(Tg2576、APPswe/PS1)やタウマウス(P301L)では、ともにメスの方が病理像が強くでます(Callahan et.al., Am J Pathol, 2001; Howlett et.al., Brain Res, 2004; Lews Science, 2001)。

また、私達も以前、APPswe/ind変異マウスに高脂肪食を食べさせる研究をしていましたが、メスの方がAβ病理が強く出て、認知機能も悪くなりました。

メスの方がストレスによる海馬の脆弱性が高いという報告もあります(Sotiropoulos et.al., J Alzheimers Dis, 2015)。

 

うーん、どんどん落ち込んでくるので、例を挙げるのはこれくらいにして、か弱い自分の脳を大事にしてあげよう……と思うのでした。

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