アルツハイマー病 (Alzheimer's disease, AD) の主要病理の一つ、タウは、リン酸化の他、アセチル化、ユビキチン化、SUMO化、ニトロ化など、色々な翻訳後修飾(post-translational modification, PTM)を受けており、様々な機序で病態に関与すると言われています。
今回、アメリカ・アインスタイン メディカルセンターの Dr. Cuervo らの研究グループは、タウのアセチル化がシャペロン介在性オートファジー (chaperone‐mediated autophagy, CMA) を抑制し、タウ病理の伝播を促進するという研究結果を報告しました。
タウのアセチル化がシャペロン介在性オートファジーを抑制し、タウ病理を促進する
アセチル化タウは CMA 系で分解される
彼らはまず、アセチル化 (K174) したタウがマクロオートファジー・リソソーム系で分解されることを確認しました。
また、CMA を特異的に障害したマウス(L2AKO マウス)では、アセチル化タウが増えており、タウアセチル化とCMAとの関連が示唆されました。
タウのアセチル化は CMA 機能を障害する
マウスの神経が細胞 (Neuro-2a) にウイルスベクターでFLAG-K274, 281タウを過剰発現させると、CMA 活性が減少しました。
CMA の機能を阻害すると、アセチル化タウの局在が LE/MVB に
L2A KO マウスでは、後期エンドソーム/multivesicular bodies (LE/MVB) 内にアセチル化タウを多く認め、分解を免れたアセチル化タウが細胞外に放出されていました。
AD脳内でもアセチル化タウが LE/MVB 内に
AD 患者さん脳内では、アセチル化タウを多く認めますが [2, 3]、
著者らは AD 患者さんの脳内で CMA 活性も落ちている事を(間接的に)確認し、さらに アセチル化タウが、細胞内マトリックスより LE/MVB 内に多く存在していることを確認しました。
CMA の機能障害で タウの伝播が促進される
最後に著者らは、マウス脳内に GFP標識したタウを AAVベクターで CA1 に過剰発現させるタウ伝播マウス [4, 5] を使って、
CMA 機能障害がタウの伝播に与える影響について調べました。
L2A KO マウスでは、CA3のタウ蓄積が多く、CA1 → CA3へのタウの伝播が促進された可能性が示唆されました。
以上の結果は、タウのアセチル化とCMA機能障害の関係およびCMA機能障害がタウの伝播を促進する可能性を示しており、ADの病態への CMA の関与が考えられました。
The tau protein has been implicated in neurodegenerative disorders and can propagate from cell to cell. Here, the authors show that tau acetylation reduces its degradation by chaperone-mediated autophagy, causing re-routing to other autophagic pathways and increasing extracellular tau release.
References
- Caballero B, Bourdenx M, Luengo E, Diaz A, Sohn PD, Chen X, Wang C, Juste YR, Wegmann S, Patel B, Young ZT, Kuo SY, Rodriguez-Navarro JA, Shao H, Lopez MG, Karch CM, Goate AM, Gestwicki JE, Hyman BT, Gan L, Cuervo AM. Acetylated tau inhibits chaperone-mediated autophagy and promotes tau pathology propagation in mice. Nat Commun. 2021 Apr 14;12(1):2238. doi: 10.1038/s41467-021-22501-9.PMID: 33854069; PMCID: PMC8047017.
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- Wegmann S, Bennett RE, Delorme L, Robbins AB, Hu M, McKenzie D, Kirk MJ, Schiantarelli J, Tunio N, Amaral AC, Fan Z, Nicholls S, Hudry E, Hyman BT. Experimental evidence for the age dependence of tau protein spread in the brain. Sci Adv. 2019 Jun 26;5(6):eaaw6404. doi: 10.1126/sciadv.aaw6404.PMID: 31249873; PMCID: PMC6594764.
Maria、こんな論文出してたんですね。気づいていませんでした。。。
そして、281じゃなくて、274なんですね。そして、280は最初からやってないっていう。。。 この点に関して、ママ研究者さんのボスは何か言ってないのかなと愚考してしまう次第ですが。
同じ時期に、こんなのも出していました→(Bourdenx et al., Cell, 2021)。
CMAの可能性について追求し続けていますね。
この論文は、研究室で話題にのぼった事がないので、PI達が読んでいるかどうかわかりませんが、もし読んでいたら何かいいそうですね。P181やP217が話題になった時も、しばらくは「P396はどうなってるの」ってコメントしていたので。
でも、K280をやっていた研究者が別のラボに移っているので、アセチル化に関しては今はほぼ話題になりません。重要だと思っているとは思いますが、どうでしょうか……今度聞いてみようかな?