Aβプラークはアルツハイマー病(Alzheimer's disease; AD)のhallmarkである。
NIHのZhang, Mattsonらは、AD患者の脳内およびADマウスモデル(APP/PS1)の脳内を調べ、AβプラークにOlig2-/NG2陽性のオリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte progenitor cells; OPCs)が集まっており、これらの細胞にsenescentマーカー(p21/CDKN1A, p16/INK4/CDKN2A, β-galactosidase)が発現しているのを確認した。
Aβプラークに集まるアストロサイトやミクログリアには、これらのsenescentマーカーは発現していなかった。
培養OPCsにAβ凝集体を処置すると、OPCsのsenescenceが誘導された。
続いて著者らは、FDAに承認されている2種類の 'senolytic' 化合物、dasatinibとquercetin(D+Q)をAPP/PS1マウスに投与した。
すると、APP/PS1マウスの脳内Aβプラークにあつまっている細胞のSAーβGal活性や、Olig2とp21の発現が低下した。
p16をZsGreenで標識したAPP/PS1マウスにD+Qを投与すると、AβプラークあたりのZsGreenの発現が減少し、神経炎症が抑えられた。
また、D+Qを長期的に投与すると、水迷路試験、Y迷路試験などで認知機能が改善した。
The Alzheimer’s disease (AD) amyloid-beta peptide causes oligodendrocyte progenitor cells to undergo senescence, contributing to neuroinflammation and cognitive impairment. Treatment of AD mice with senolytic drugs ameliorates AD neuropathologies and cognitive deficits.
My View
以前、タウマウスで、加齢とともに老化したグリア(アストロサイトとミクログリア)の数が増え、それを除去するとタウ病理と認知機能が改善した論文を紹介(こちら)しましたが、今回はそれのAβ版といえるでしょう。
ただ、この論文に対しては、ちょっと「ほんとかな?」という感想をもちました。
主な理由としては、下記2点です。(私見です。)
1.OPCマーカーを発現している細胞と主張するものは……細胞かな?
たぶんレビューアーにも指摘されたのではないでしょうか。3D再構成したり、電顕でみたり色々していますが、私には細胞かどうかあまり確信がもてません。
細胞だとしても、OPCの形態とはかなり違う印象です。Olig2染色はこんな形でもよいかもですが、NG2染色はもう少しOPCsの突起が見えてもよさそうだと思います。
Aβはかなりstickyなので、色々なタンパクがベタベタくっついた……というような可能性はないでしょうか?
2.AβプラークにOPCsが群がるという情報をあまり知らない
Aβプラークにミクログリアやアストロサイトが集まっているという報告はたくさんありますが、OPCsというのは読んだことがありません。(そういう目で探していないからかもしれないですが。)
また自分でもAD脳をOPCマーカー(PDGFRα、NG2 etc.)で免染した事はありましたが、老人斑のまわりにOPCsが群がっている印象はありませんでした。
でも、'senolytic' 化合物と言われる化合物投与でAPP/PS1マウスのAβプラークの数が減っているし、認知機能が改善しているし……どういうことなのでしょう?
何か別のところに働いていたりするのかなーとも思いましたが……よくわかりません。個人的にはsenescent cellはかなり興味があるのですが……