swimming

「僕、スイミングスクールに行きたい。」

とある夕食時、次男(7歳)が突然言い出し、我が家の食卓はざわめきました。

彼は、3歳の時に友達宅のプールで溺れて以来、水が怖くなってしまい、7歳になった今でも全く泳げません。

子ども達は、夏にはほぼ毎週、週末に友達の家のプールに遊びに行っていましたが、次男だけはフローターをつけたまま、浅瀬の階段部分で足に水をつけて涼んでいるだけでした。

そんな彼が自ら「水泳を習いたい」という日がくるなんて……驚きです。

どうしてイキナリそんな決心がついたのでしょうか?

 

「だって、日本では夏に水泳の授業があるって聞いたんだ。僕、全然泳げないから、授業の時に困るでしょう?夏までに泳げるようになっておかないと。」

 

……確かに、アメリカではプール開きが始まる前の6月から夏休みが始まるので、授業で水泳をする機会はありません。

みんは、自宅プールか、近くの遊泳施設などで泳ぐ感じでした。

日本は7月後半から夏休みですが、その前の数週間、体育で「水泳の授業」があります。

 

「よし、じゃあ、スイミングスクールに通ってみよう。」

地元ではスパルタで有名な水泳教室……以外を探したけれど……

長男(12歳)と長女(10歳)は、渡米前、近所にある有名な水泳教室に通っていました。

そこは、オリンピック選手も輩出したことのある大規模なスイミングスクールで、授業料も破格的に安いので、地元の子供達の多くが幼児の頃から通っていました。

「海で船が転覆しても岸まで泳いで帰れるようになってほしい。」

という親の願いから、上二人は3歳の頃からその教室に通い始めました。

 

ところが、その教室はかなりのスパルタ教室で、窓から指導内容を見ていると、「これって溺れるギリギリなんじゃ……」と心配になるくらいに泳がせていました。

結局二人とも水泳の楽しさは体験できなかったようで、数年は頑張りましたが、最終的に「もうやめたい」と言われ、渡米するちょっと前に通うのを断念しました。

 

「……あそのこの水泳教室じゃ、だめだよね。」

水恐怖症の次男を、そんなスパルタ教室に通わせるわけにはいきません。

 

私達は、もっと優しくて楽しそうなスイミングスクールを探しましたが、どこもいっぱいで、すぐには入れませんでした。

最後にスパルタ水泳教室に連絡を入れると、「空いてますよ。」とのこと。

 

「僕、そこでいいよ。早く泳げるようになりたいもん。」

 

……とゆーことで、一抹の不安を抱えながらも、次男はスパルタ水泳教室に通う事になりました。

久しぶりの水泳教室

そしてスイミング当日。

私達は、水泳用具一式を揃えて、水泳教室に向かいました。

 

「……ここに来るのは何年ぶりかな……。」

渡米前なので、もう5年以上前ですが、建物の外観は全然変わっていませんでした。

相変わらず、自転車やら、自動車やら、歩きやらで、たくさんの子ども達、そして付き添いの親たちが集まっており、私と次男もその流れに紛れました。

 

更衣室で水着に着替えると、30分間の準備体操があり、それぞれの等級のプールへ向かいます。

親達も、プールを上から見下ろせる部屋に移動し、そこから我が子を応援します……この流れも、全く変わっていませんでした。

 

下は3歳から、上は全国レベルの上級者まで、たくさんの人たちが通う水泳教室。

次男の等級は、1級、2級……などという階級がつく前の「赤魚クラス」……でもない、「名前のないクラス」でした。

私は彼の姿を探しました。

幼児達に混ざって水泳の練習

次男の姿はすぐにわかりました。

3-5歳くらいの子ども達に混ざった彼は、頭1-2個分ほど飛び出ており、とても目立っていました。

 

次男のクラスの子ども達は、先生から水泳の基本姿勢を学んでいます。

彼らは先生にならって、両腕を頭の上で交差させ、そのまま顔を水につけていました。

次男は、すぐに苦しそうな様子で顔を上げていましたが、そのうちコツをつかんできたらしく、だんだんと顔をつける時間が長くなっていきました。

 

その後彼は、隣のレーンに移動し、小さなお友達と一緒に水に浮く練習を始めました。

周りの子達がなんとなく腕を伸ばして浮いている間、

彼は一人だけ、両腕をピンと真っ直ぐ伸ばして頭の上で交差し、これでもかというくらい背中を反らせて順番を待っていました。

 

順番が来ると、彼は思い切り息を吸い込み、そして水に顔をつけました。

先生が彼の腰に手を当てて、浮く手伝いをしてくれていました。

途中で苦しそうに手足をバタバタさせて足をついていましたが、その後も彼は両手を頭の上に伸ばして体制を整え、再び水に顔をつけていました。

 

私はその姿を動画に収めながら、自分の視界が滲んでいくのを感じました。

彼を迎えに

子ども達がプールから上がると、大人達も更衣室の前に移動し、我が子らが上がってくるのを待ちます。

私も人だかりの中で、次男が上がってくるのを待ちました。

 

しばらくすると、バスタオルに身を包んだ次男がドアを開けて出てきました。

彼はキョロキョロと当たりを見渡していましたが、私を見つけると、「あ、お母さん!」と言って駆け寄ってきました。

「僕の事、見てた?結構泳げてたでしょう?」

「うん、凄かったね。」

そんな会話を交わしながら、私達は更衣室に入り、彼は元の服に着替えました。

 



 

この水泳教室の廊下の壁には、クラブの歴史と栄光を示すかのように、全国大会優勝などのたくさんの賞状や写真が貼られており、受付のショーケースには大きなトロフィーがいくつも置かれています。

帰り際、彼は壁に貼られたそれらの賞状を眺めながら、

「僕ももう少ししたら、泳ぐのが上手になって賞状が貰えるかな?」

と言いました。

「うん。きっと貰えると思うよ。」

私はそう答え、二人で出口に向かいました。

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