以前、CRISPR-Rxシステムを使ってpolypyrimidine tract-binding protein 1 (Ptbp1) をノックダウンし、
アストログリアを網膜細胞や線条体のドパミン神経細胞(domamin neuron, DA neuron)に変換して機能回復を得られた、
今回は、PTBに対するshRNA(shPTB)をマウスの黒質(Substantia Nigra, SN)に注入し、
同部位のアストロサイトをDAニューロンに変換した、
というお話 [2] 。
Depletion of the RNA-binding protein PTB (also known as PTBP1) in astrocytes reprograms these cells to become functional neurons and, in a mouse model of Parkinson’s disease, reverses the disease phenotype.
いやいや、ちょっとまって。
同じ人達がPTBノックダウンの手法と場所を変えただけ?
しかも、この間はshRNA使うよりCRISPR-Rxのほうがメリットが多いゆーてましたやん。
と思いましたが、よく見ると、著者達の名前がかぶっていない……
どうやら、先にin vitroで線維芽細胞をニューロンに変換させる手法を報告していた [3] 、中国とアメリカ・UCSDのグループからの報告でした。
あ、今回はDon Clevelandもコレスポに入っている……
グリアをドパミン神経に変えてパーキンソン病を治す
今回の報告では、PTBノックダウン+蛍光標識されたアストロサイトが線状体まで軸索を伸ばし、線条体の神経とシナプスを形成しているところまで確認しています。
また、6-ヒドロキシドーパミン(6-hydroxydopamine, 6-OHDA)で減少したDAニューロンを回復させ、神経活動に伴うドパミンの分泌量および運動機能まで改善したとの事。
最後はDon氏お得意のアンチセンスオリゴヌクレオチド(antisense oligonucleo- tides:ASO)を作製し、shRNAと同様の効果が得られる事を確認しました。
My View
前回は
「一つの遺伝子をノックダウンしただけで、そんな都合のいい神経に変えられるものなのかな?」
とちょっと懐疑的な気持ちもありましたが、
違う研究グループから同じような結果が得られているところをみると、どうやらホントのようです。
また今回はSNにshRNAを注入しているので、線条体に打つよりはDAニューロンに分化する環境が整っているように思います。
けれども、そこから線条体まで軸索を伸ばし、線条体の細胞とシナプス形成、DAニューロンとしての機能も発揮するというのは、本当に凄いと思います。
変化したニューロン達の軸索は、どうやって迷わずに線条体までたどり着けるのでしょうか。
そのあたりの機序がどうなっているのか、大変興味深いです。
References
- Zhou H, Su J, Hu X, et al. Glia-to-Neuron Conversion by CRISPR-CasRx Alleviates Symptoms of Neurological Disease in Mice. Cell. 2020;181(3):590-603.e16. doi: 10.1016/j.cell.2020.03.024
- Qian H, Kang X, Hu J, et al. Reversing a model of Parkinson's disease with in situ converted nigral neurons. Nature. 2020;582(7813):550-556. doi: 10.1038/s41586-020-2388-4
- Xue Y, Ouyang K, Huang J, et al. Direct conversion of fibroblasts to neurons by reprogramming PTB-regulated microRNA circuits. Cell. 2013;152(1-2):82-96. doi: 10.1016/j.cell.2012.11.045