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アルツハイマー病 (Alzheimer's disease, AD) の主要病理の1つ、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) 。

Aβは、アミロイド前駆蛋白 (Amyloid precursor protein, APP) から、β切断・γ切断と2段階の切断を受けて産生されますが、

その切断の仕方により、様々な大きさのAβが産生されます [1]

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Steiner et. al., Cell Stress. 2018 [1] より
Aβの種類 割合
Aβ37 ~1%
Aβ10 10%
Aβ40 80%
Aβ42 10%
Aβ43 1%

このうち、

  • Aβ40
  • Aβ42

がAβの9割以上を占めており、最も研究が進んでいます。

 

産生されるほとんどのAβがAβ40ですが、Aβ42の方が凝集性が高く、Aβプラークのコア部分や血管に凝集していたりと、Aβ蓄積の主要タンパクと考えられています [2]

 

Aβの産生抑制をターゲットにした治療法開発は、ずっと行われてきており、多くのβセクレターゼ阻害薬やγセクレターゼ阻害薬が開発されてきました。

このうちγ-セクレターゼは、APPのγ切断に関与しますが、Notchの切断酵素としても知られています。

Notch経路は、神経や造血など様々な分化過程に関係し、細胞間情報伝達において非常に重要な経路です。

血管系の癌や神経難病にもNotch経路異常が原因で起こるものがあり、γ-セクレターゼ阻害薬は、APP切断だけでなくNotch経路にも影響を及ぼして重篤な疾患を引き起こす可能性が懸念されています。

 

この問題を解決できそう、として期待されているのが、γセクレターゼモジュレータ (γ-secretase modulator, GSM) です。

このGSMは、γ-セクレターゼを阻害してしまうのではなく、γ-セクレターゼの機能を、凝集性の高い「Aβ42産生」から「Aβ40産生」の方へとシフトさせて、

脳実質へ血管へのAβ蓄積を減らそう、というものです。

 

今回、アメリカ・カリフォルニア大学の Dr. Wagner らの研究グループは、GSMの中でも、より臨床応用しやすそうな化合物を選出し、その特徴について調べました [3]

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AD治療応用のためのGSMの選出と評価

著者らは、以前自分たちが開発したGSM (compound1) について報告していたが、今回はその類似化合物、compound2 とcompound3について特徴等を調べた。

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compound2、ompound3ともに用量依存的にマウス脳内のAβ40/Aβ42量を減少させた。

この2種類の化合物のうち、copound2の方がより低用量で効果的だったので、著者らは compound2 にターゲットを絞って解析した。

compound2は、慢性経口投与でPSAPPマウスの血漿中および脳内Aβ38、Aβ40、Aβ42量を減少させ、特に凝集した不溶性Aβ40/Aβ42の量を減少させた。

PSAPPマウスは6ヶ月齢、9ヶ月齢で解析し、compound2の慢性経口投与でAβプラークおよびミクログリアの集簇が減少していた。

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また、ラットでも同様に検証し、マウスと同様の結果が得られた。

このGSMは、副作用がでないとされる基準値の40倍以下の低用量で、Aβ42を50%減少できた。

My View

マウスの場合はAβを減らすだけで認知機能がかなり改善するのですが、

これをヒトに応用した途端、効果がイマイチ……という事が何度も起こっているので、ヒトに効果的かどうかはやってみないとわからないかなーとは思います。

 

でも、効果云々の前に、安全性の高い薬を開発する事が前提条件なので、まずは第一関門突破?

今回 validationした GSM は、かなりの低用量で効果が得られた様子なので、副作用の少ないAD治療薬として期待できるかもしれません。

References

  1. Steiner H, Fukumori A, Tagami S, Okochi M. Making the final cut: pathogenic amyloid-β peptide generation by γ-secretase. Cell Stress. 2018 Oct 28;2(11):292-310. doi: 10.15698/cst2018.11.162. PMID: 31225454; PMCID: PMC6551803.
  2. Jarrett JT, Berger EP, Lansbury PT Jr. The carboxy terminus of the beta amyloid protein is critical for the seeding of amyloid formation: implications for the pathogenesis of Alzheimer's disease. Biochemistry. 1993 May 11;32(18):4693-7. doi: 10.1021/bi00069a001. PMID: 8490014.
  3. Rynearson KD, Ponnusamy M, Prikhodko O, Xie Y, Zhang C, Nguyen P, Hug B, Sawa M, Becker A, Spencer B, Florio J, Mante M, Salehi B, Arias C, Galasko D, Head BP, Johnson G, Lin JH, Duddy SK, Rissman RA, Mobley WC, Thinakaran G, Tanzi RE, Wagner SL. Preclinical validation of a potent γ-secretase modulator for Alzheimer's disease prevention. J Exp Med. 2021 Apr 5;218(4):e20202560. doi: 10.1084/jem.20202560. PMID: 33651103; PMCID: PMC7931646.