RhoAとミクログリア

脳内の掃除屋としてのミクログリア。

場合によっては炎症を引き起こし、困ったさんにもなります。

 

活性化ミクログリアは、その形態を劇的に変化させますが、ここで鍵となるのがサイトケラチンの再構築です。

Rhoa、Rac1、Cdc43などのRhoファミリーは、GTPaseに分類され、

脳内では、サイトケラチンのダイナミックス、ミクログリアの活性化etc.に関与すると言われています [1]

 

今回、ポルトガルのRelvasらの研究グループは、このRhoaがミクログリアの活性や健全な神経シナプスの剪定に関与し、

Rhoaの欠失で、ADマウスモデルのアミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)病理が増悪することを報告しました [2]

健全なミクログリアの鍵はRhoAにあり?

まず彼らは、ミクログリアでRhoaが欠失するコンディショナルノックダウンマウス(Rhoafl/fl;Cx3cr1creER+)を作製し、

このマウスで、

  • ミクログリアの活性
  • ニューロンのシナプスタンパク量
  • 興奮性シナプス後電位(excitatory postsynaptic potential, EPSP)

etc.が減少していることを確認します。

 

次に、Rhoaの下流のシグナルである、チロシンキナーゼのSrcファミリーと、その受容体のCskに注目しました。

著者たちは以前、Cskがミクログリアの活性化の調節因子であることを報告しています [3]

予想通り、Rhoaは

Csk/Src経路
   ↓
tumor necrosis factor (TNF)
   ↓
グルタミン酸放出

を抑制して、ミクログリアの炎症を調節していました。

 

そして、このマウスにSrc阻害剤やTNF阻害剤を投与すると、

神経突起やシナプスタンパクの減少を抑える事ができました。

 

また、Rhoafl/fl;Cx3cr1creER+マウスでアミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)の産生(βCTF, Aβ40, Aβ42)が亢進しており、

APP/PS1マウスのミクログリアではRhoa活性化やCsk発現量が減少していました。

 

APP/PS1マウスのRhoaを活性化したり、Src阻害剤(AZD0530)を投与すると、

  • 神経シナプスタンパクの量(vGlut1/PSD95)
  • 静止型ミクログリア
  • ミクログリアのAβ貪食

の増加を認め、

Rhoaの下流にあるSrcを阻害することで、Aβの蓄積が軽減できる事が示唆されました。

My View

Rhoaは、病的タンパクが溜まった後の細胞障害でも注目されていると思います。

データは綺麗だし、AD治療薬の候補が一つでも増えるのは喜ばしいと思いますが、Rhoaは他の細胞でも色々発現しているので、創薬ターゲットとしてはちょっと難しいかもしれません。

また、マウスとヒトのミクログリアのプロファイルがだいぶ違う事を考えると、ヒトへの応用にはまだまだ数ステップ必要かも……

どうなるかな?

Glossary

神経系における低分子量Gタンパク質の機能

脳科学辞典より)

ファミリー 主な機能
Ras 神経伝達物質の放出
シナプスの可塑性
Rho 神経軸索突起の伸長
Rab 神経軸索突起の伸長
シナプス小胞のエクソサイトーシス
エンドサートーシス
輸送
Ran 神経軸索突起の伸長
Sar/Arf 神経突起の伸長
シナプスの可塑性

References

  1. Block, M., Zecca, L. & Hong, J. Microglia-mediated neurotoxicity: uncovering the molecular mechanisms. Nat Rev Neurosci 8, 57–69 (2007). https://doi.org/10.1038/nrn2038
  2. Socodato R, Portugal CC, Canedo T, et al. Microglia Dysfunction Caused by the Loss of Rhoa Disrupts Neuronal Physiology and Leads to Neurodegeneration. Cell Rep. 2020;31(12):107796. doi: 10.1016/j.celrep.2020.107796
  3. Socodato R, Portugal CC, Domith I, et al. c-Src function is necessary and sufficient for triggering microglial cell activation. Glia. 2015;63(3):497-511. doi: 10.1002/glia.22767
  4. 脳科学辞典, 低分子量Gタンパク質
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