Genome-wide association studies (GWAS) により、脳疾患に関連する様々な遺伝子変異が同定された。
しかしながら、single cellでの解析は未開。
そこで、スウェーデンKarolinska研究所のSullivan、Hjerling-Lefflerらの研究グループは、マウスのsingle-cell transcriptomeデータとヒトのGWASデータを組み合わせて、
1細胞あたりでの疾患別遺伝子発現の変化の解析を試みた。
PDでは、腸管神経の遺伝子変化が早期から認められる
彼らはまず、ヨーロッパの18のGWASデータ使用し、
37カ所の組織のRNA-Seqの結果から、
脳特異的な遺伝子変化(14カ所)、
脳以外の組織特異的な遺伝子変化(23カ所)を同定した。
それぞれの組織特異性は上位10%をカットオフ値とした。
脳特異的な変化は、
例えば統合失調症、頭の良さ、神経症的傾向、body mass index (BMI) などは、
前頭葉皮質、前帯状回皮質など特異的な遺伝子変化が多くみられ、
パーキンソン病(Parkinson's disease, PD)では黒質特異的な遺伝子変化が多かった。
マウスのデータは、様々な研究のsingle-cell RNA-seqデータを使用した。
マウスの中枢および末梢神経の39カテゴリーのsingle-cell RNA-seqデータを調べ、ヒトのデータと比較検討した。
結果、精神神経疾患の遺伝子変化は、おおむね興奮性ニューロンや抑制性ニューロンに認められた。
パーキンソン病(Parkinson's disease)では、コリン作動性ニューロンやモノアミン系ニューロンだけでなく、
腸管のニューロンやオリゴデンドロサイトにも発現量の変化が認められた。
剖検脳でのtranscriptome解析では、早期PDの患者からもこれらの変異を認めた。
これらの解析結果は、PDでの腸管originの可能性やオリゴデンドロサイトの関与等を示唆すると考えられた。
Integration of GWAS and single-cell transcriptomic data from the entire nervous system systematically identifies cell types underlying brain complex traits and provides insights into the etiology of Parkinson’s disease.
References
- Bryois, J., Skene, N.G., Hansen, T.F. et al. Genetic identification of cell types underlying brain complex traits yields insights into the etiology of Parkinson’s disease. Nat Genet (2020). https://doi.org/10.1038/s41588-020-0610-9
- Karolinska Institutet. "Parkinson's disease may start in the gut." ScienceDaily. ScienceDaily, 27 April 2020. <www.sciencedaily.com/releases/2020/04/200427125152.htm>