ある日の事、次男が小学校から小さなオクラを持って帰ってきました。
「学校で種をもらって、みんなで育てたんだ。僕のが一番はやくシュウカクできたんだよ!」
彼は人差し指ほどの小さなオクラのために、折り紙で小さな箱を作り、兄弟にも見せて回りました。
「決めた!このオクラは "おくらのおっくん" って名前にする。お父さんが帰ってきたら、お父さんにも見せて、そしてその後、僕が料理して家族みんなで食べるんだ。」
彼は大張り。
ところが……タイミングの悪いことに、お父さんは、出張で少し前にデンマークに旅立っていました。
あと数日は帰ってきません。
「うーん……仕方がないから、お父さんが返ってくるまで冷蔵庫で休んでてもらうしかないなぁ。」
彼はそう言って、おっくんをラップで丁寧にくるみ、冷蔵庫の引き出しにしまいました。
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翌日……
オクラは水分が抜けて、ちょっとだけ小さくなっていました。
「ちょっとちっちゃくなってる?」
翌々日……
オクラはさらに小さくなっていました。
「昨日よりももっとちっちゃくなってるよ。どうしよう……。」
彼は気が気ではありません。
お父さんにFacetimeでオクラを見せ、
「お父さんが帰ってくるまでおっくんも頑張るからね。早く帰ってきてね。」
とお願いしていました。
次の日も、その次の日も、彼は冷蔵庫からおっくんを取り出すたびに焦りつつ、お父さんが帰ってくる日を待ちました。
そして……ようやくお父さんが帰ってくる日になりました。
おっくんはだいぶ小さくなっていましたが、無事にお父さんとの対面をはたしました。
「毎日待ってたらちょっとずつ小さくなっちゃったんだよ。でも、本当はもっと大きかったんだよ。」
彼は一生懸命説明していました。
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その日の夜、次男は携帯でレシピサイトを検索し、おっくんを一番美味しく食べられる方法を考えました。
その後、おっくんは他のオクラ達と一緒に丁寧にお肉で巻かれて焼かれ、お皿に盛られました。
おっくんだけはヘタを残して、他のオクラと区別できるようになっています。
そして、みんなの見守る中、おっくんは次男のお口の中へ……
「おいしい!」
……良かったね。