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アルツハイマー病 (Alzheimer's disease, AD) の治療法として、アミロイドβ (Amyloid beta, Aβ) に対する抗体療法が開発されましたが、

その臨床試験が開始されてから今まで、副作用として最も多く報告される「アミロイド関連画像異常(Amyloid-related imaging abnormalities:ARIA)」をどう防ぐかについて、数多く議論されてきました [1]

レケンビ®(レカネマブ)が承認されてからも、やはりARIAの問題はつきまといます。

これまでのARIA症例の傾向をみると、APOE4キャリアの人や、MRIで脳内に微小出血などが多い人などはARIAを発症する傾向が高いようです。

実際ARIAはどんな患者さんに多く、どのような経過をたどるのか、またARIAを防ぐためにはどのような事に気をつけるべきか、投与する側はしっかりと理解しておかねばなりません。

 

今回、アメリカ・Vanderbilt大学メディカルセンターの Dr. Schrag らのグループは、レカネマブの第III相臨床試験(CLARITY-AD)で、重症ARIAの副作用で死亡した症例を報告しました [2]

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レカネマブの副作用ARIAによる死亡症例報告

臨床経過

症例は79歳女性。

病歴4年の進行性の軽度認知機能障害(mild cognitive impairment, MCI)を呈していた以外には、高血圧やその他の神経症状はありませんでした。

アミロイドPETやタウPETで、彼女は早期ADと診断され、レカネマブの第3相臨書試験CLARITY-ADに参加しました。

始めはプラセボ群に割り当てられ、特に有害な症状はありませんでしたが、その後、オープンラベルの延長研究で、レカネマブ(10mg/kg)を2週間毎に投与されました。

 

レカネマブ投与後約1時間で、彼女は頭痛を訴え始め、それは1,2日ほどベッドで休む必要がある程度でした。

3回目の投与後、彼女は、自身で「ブレインフォグ」と形容する、認知機能障害を呈し、それは進行しました。

その後彼女は入院しましたが、入院当日に痙攣発作が起こり、その後は意思の疎通が難しい状態となりました。

入院2日の画像検査では、彼女の脳は血管原生の脳浮腫を呈しており、ARIAと診断されました。

治療として、ソル・メドロール1g/dayのステロイドパルス療法を3日間、心房細動に対してヘパリン投与を行いましたが、彼女は回復せず、入院4日目には多臓器不全と敗血症により人工呼吸管理となりました。

「延命治療を希望しない」という、彼女の健常時の意思を尊重してそれ以上の侵襲的な治療は行わず、彼女は入院5日目に亡くなりました。

遺伝子解析

遺伝子検査の結果、彼女はAPOE4のホモ接合体キャリアでした。

画像解析

死後MRIでは、側頭葉、頭頂葉、後頭葉などに多数の微小出血を認めました。

また、治験開始前の脳MRIでも、数カ所微小出血があました。

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病理解析

病理解析では、中等度から高度のADの所見の他、強い 脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy, CAA)を認め、脳軟膜動脈や貫通細動脈などの周囲にリンパ球や反応性マクロファージの浸潤、血管壁のフィブリノイド壊死を認めました。

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My View

投与前はMCIくらいだったのに、レカネマブ3回投与で入院となり、その後5日で死亡って……ARIAってやっぱり怖いなと思いました。

この症例ではAPOE4のホモ接合体キャリアだったこと、以前から少しだけMRI上のmicrobleedingsを認めていたことなど、今なら「ARIAを起こしやすい症例」と言えると思います。

レカネマブの投与は日本でももう始まっていますが、やはり

  • APOE4の人やmicrobleedsがある人にはできるだけ投与を避けることと
  • 投与症例はその後の頭痛などの症状を丁寧に問診し、定期的にMRIでチェックする事

が大切だと思いました。

References

  1. Birmingham K, Frantz S. Set back to Alzheimer vaccine studies. Nat Med. 2002 Mar;8(3):199-200. doi: 10.1038/nm0302-199b. PMID: 11875473.
  2. Solopova E, Romero-Fernandez W, Harmsen H, Ventura-Antunes L, Wang E, Shostak A, Maldonado J, Donahue MJ, Schultz D, Coyne TM, Charidimou A, Schrag M. Fatal iatrogenic cerebral β-amyloid-related arteritis in a woman treated with lecanemab for Alzheimer's disease. Nat Commun. 2023 Dec 12;14(1):8220. doi: 10.1038/s41467-023-43933-5. PMID: 38086820; PMCID: PMC10716177.
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