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先生は、ぽつりぽつりと話し始めました。

「本当は、もうすぐ期末テストなので、お母さんが来るまでテスト勉強してていいよって言ったんですが、『勉強道具を持っていない』と言われて……暇つぶしに本を読みたいと言われたので、図書館で本を借りて読んでもらってたんです。英語の本で、スラスラと読むので凄いな、と思ってたんですよ。

アメリカで4年くらい過ごされていたというのは聞いていたんですが、それだけで、こんなに文字が小さくて分厚い本を抵抗なく読めるようにはならないですよ。」

先生の言葉

そして先生は、息子に向かって、静かに話しかけました。

「ねえ……あなたは、凄いものをたくさん持っていると思うよ……でもあなたは、それにまだ気づいていないんだと思う。先生の言ってること、わかるかな?ぴんとこないかもしれないけど。」

「うーん……はい。」

 

「例えば、さっきまで本読んでたけど、面白かった?」

「面白かった。」

「でも、もしここで本とスマホと両方あったら、あなたはスマホを手にとって、スマホの世界に行ってしまっていたでしょう。」

「うん。そう思う。」

 

「本を読んで面白いってゆーのはとても素晴らしい体験だけど、スマホがあったらその体験はできなかったわけだね。

あと他にもあなた、授業中に先生の話を聞かずにぼーっと違う事を考えている事も多いでしょう?」

「。。。」

 

「責めているわけじゃなくて、ぼーってしている時間があるよねって聞いているだけ。」

「はい。」

 

「先生はね。そのぼーっとしている時間も大事だと思っているのよ。ぼーっと考える事で、ある時突然いいアイデアが閃いたり、興味のあることが見えてきたりするからね。あなたには、そのぼーっとする時間も大切にしてほしいのよ。」

「はい。」

 

「でも、スマホをしていたら、そのぼーっとする時間も奪われてしまうわけ。

スマホの中の世界が全部だめって言っているわけじゃないんだよ。たまには息抜きも必要だし。

……ただ、スマホの中の世界は、単純に情報が多すぎるんだよ。楽しいことがいっぱいあって、それであなたの意識のすべてが持っていかれちゃう。

本を読みたくなったり、ぼーっとしたくなったりもできなくなって、あなたにとっての『今』ってゆー大切な時間が奪われてしまう、と思うわけ……先生の言いたい事わかるかな?」

「……はい。」

 



 

先生は、ゆっくりと、穏やかに、丁寧に言葉を選びながら息子に話しかけていました。

私は隣で聞きながら、先生の話し方やその内容に、大変感銘を受けました。

昔の先生と今の先生は違うのかも

私の中高の頃の先生のイメージは、「高圧的な態度で生徒を黙らせようとする」もしくは「自分の話したいことを話し、生徒を説き伏せようとする」ようなイメージでした。

先生達のこのような態度は、逆に生徒の心を遠ざけ、

多感な中高生達は「どうせ大人達は私たちの事を理解できないしね。」と、投げやりな気持ちで学校生活を送っていたように思います。

 

けれども、息子の1年生の時の担任の先生も、今年の学年主任の先生も、とにかく物腰が柔らかく、口調もゆっくりで、生徒の心を閉ざさせない物言いを心得ているように思いました。

―― この学校がハイスペック先生を集めている可能性もあるかもだけど、もしかしたら昔と今とで、教員指導の内容も全体的に変わってきているのかな?

 

兎にも角にも、こんな理解力のありそうな先生方に囲まれて過ごしていれば、人の言葉を右から左へ聞き流すのが得意な息子の心にも、何か残るかもしれません。

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