勝海舟

以前、自分が施設を移る際に、ある人から、餞別として

「みんな敵がいい」

という言葉を頂きました。

それについて色々考えたので、今回、ここに書き留めておこうと思います。

みんな敵がいい

誰を味方にしようなどと言うから間違うのだ。

みんな敵がいい。

敵がないとことができぬ。

これは、幕末に活躍し、明治維新の立って役者の一人と言われる、勝海舟氏の言葉です。

彼の言葉には、「何か事を成すとき、誰が味方かと考えるのではなく、そもそも皆が敵であり、その中でどう推し進めていくか、それを考えるべき」と言った意味合いが込められていると思います。

 

これを餞の言葉として送って頂いた先生は、御自身のモットーと絡め、次のように言われました。

あなたは、人間関係で大変なこともあったと思うし、これからも大変なことがあると思います。

そんな時、人は不安になり、仲間を作りたくなります。この人は味方になってくれるかな?この人は敵かな?そんな気持ちで相手に接してしまいます。

でも、人というものは、誰しも「自分が一番大事」な生き物です。

どんなに味方と思っていた人でも、自分の立場が危うくなれば、簡単に敵に回るものです。

そんな時、「味方だと思っていたのに」と傷つき、その心は、あなたの判断を誤らせるかもしれません。

 

最初から「全員敵だ」と思えばいいのです。

そうすれば、相手がどんな行動に出ようと、動じることはありません。

そして、全員が敵だと思えば、日頃の自分の言動に油断をせずにすみます。

「この人は、状況によって自分を裏切るかもしれない」と思っておけば、「裏切られずにすむような状況」の維持に努め、常に気を回して行動することができます。

 

私は、「みんな敵だ」と思って日々行動しているから、逆に敵がいないんですよ。

この言葉を受け、私は考えました。

 

アメリカにいた頃、周囲の人たちは、私に対して驚くほど好意的で、何かあっても、いつも色々な人が手を差し伸べてくれていました。

けれどもその状況は、「私という人物がもともと好感度の高い人物だった」というよりは、「私が、みんなから好感度が高いと感じてもらえるような行動を心がけていた」からだと思います。

 

日頃からかなり直感的にモノを言う彼らは、日常生活において、他人の悪口を大声で言うことも多かったです。

私はそれらの言葉を聞きながら、「自分は彼らに対してどう行動したら嫌われないか」ということを意識し、毎回、言葉を選んで話をしていました。

 

もちろん、相手に対しておべっかをつかうとか、そういったことではありません。

当時、対人関係において私が自分に課していたルールは、

  • 絶対に人前で誰かの悪口を言わない。誰かが悪口を言っていても、その話には乗らない。
  • 相手の立場に立って話を聞く。
  • 相手が自分に求めていることを考える。

などです。

 

当時、「全員が敵」とは全く思っていませんでしたが、「一歩間違えば敵となって、自分も攻撃されるかもしれない」という危機感を前提として、このようなルールを課していたことは確かです。

そのように、「日頃からある程度の危機感を持って行動すること」が、結果的に、周囲との良好な関係構築に繋がったように思います。

 

 

今回頂いた「みんな敵がいい」という言葉は、

「みんな敵だと思って周りを攻撃し続けなさい」

という意味ではなく、

「みんな、状況次第で敵になる可能性があるから、常にそれを意識して、そうならないような言動・行動を心がけなさい」

という意味だと解釈しました。

敵を減らせ

これは、日本の元首相、田中角栄氏の言葉、

味方を増やすより敵を作らないことだ

にも通じる気がします。

 

敵がいれば、事あるごとに邪魔をされて目標を達成できません。

まずは敵を作らないこと。

相手の承認欲求を満たし、相手が敵に回らないような行動を心がけること。

そのような意味だと私は解釈しました。

 

そのように考えると、

「みんな敵がいい」と「敵をつくるな」という、一見正反対にもとれるこの2つの言葉は、合い通じるところがあるように思えます。

 

つまり、2つの言葉はともに、

 

「どんな人でも、条件によってはあなたの敵となり、あなたを攻撃してきたり、何かと邪魔してきたりする可能性がある。そうならない為に、常に相手の状況や思惑を慮り、その人から敵と認識されないような言動を心がけなさい。」

 

ということを示唆しているように思うのです。

日常生活においては「親しき中にも礼儀あり」の精神で

「みんな敵」とか「敵をつくるな」とか言った表現は、キャッチーな表現ではありますが、ちょっと心をすり減らしそうな言い回しにも聞こえます。

 

もっと一般的な言葉として、

「親しき中にも礼儀あり」

という諺がありますが、それを心がけるだけでも、だいぶ違うんじゃないかと思います。

 

「どんなに親しくなっても、油断せず、相手が不快に感じる言動を避けて接しなさい」

日常生活においては、それだけでも十分です。

 

 

そこから一歩進んで、自分が何か事を成したい時、組織の内外で人に動いてもらいたい時、人と何かを作り上げていきたい時、

そんな時には、

「人は自分の事が一番大事な生き物である」

という事を心に留め、常にある程度の緊張感を持って人と接するよう、心がけると良いんじゃないかなー、と思っています。

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