ある日の夕食の準備中、ちょっと気をとられている間に、腕がフライパンの角にあたりました。
「あー、やってしまったーー。」
慌てて水で冷やしましたが、前腕内側部に三日月状の火傷ができてしまいました。
「痛いなー。でも、そんな目立たないし、まあ、いっか。」
火傷の跡はヒリヒリと痛かったですが、私は特に気にすることもなく、次の日には火傷の存在を忘れてしまいました。
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数日後、私は外来で患者さんを診察していました。
そこで、高校生の女の子の診察をしていた時、付添のお母さんが話しかけてきました。
「先生、それ、鍋でやっちゃったんでしょ。」
「え?」
私は一瞬なんのことがわかりませんでしたが、お母さんの視線をみて、私の前腕の火傷のことを言っているのだと理解しました。
「なんでわかったんですか?」
私が尋ねると、
「そりゃあ、わかりますよー。何年主婦やってると思ってるんですか。私も時々やっちゃうんですよねー。」
と言われました。
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―― 主婦ってすごいなー。
と、思いました。