子供の頃、福永令三さんのクレヨン王国シリーズをたくさん読みましたが、最近その中のある短編物語をよく思い出すようになりました。
クレヨン王国いちご村の中に収録されている、「レールの中のスミレ」というお話です。
小さなスミレが一輪、線路のレールに敷き詰められた石たちの隙間で生きていました。
石たちは、いつも不機嫌で押し黙っていました。
スミレは独り言のように、お日さまの話など、明るい話題を振りますが、石たちが返事をすることはありません。
けれども、スミレは明るい話を続けます。
”たとえ、へんじがなくとも、じぶんのおしゃべりが、なんのたのしみもない石たちのなぐさめになっていることを、よく知っていたからです。” (レールの中のスミレより)
ある日、モンシロチョウがやってきて外の世界の話を聞いてから、スミレの心境が変わるのですが……
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私は、いつの頃からか、自分の心の中に、このスミレを住まわせようと思うようになりました。
” 不機嫌は、無言の暴力 ”
小池和夫さんの言葉のようですが、これは言い得て妙だと思います。
すぐ曇り、雨が降り、夏の天気のように安定しない人と過ごしていると、毎日言いようのないダメージを受けているように感じます。
「こっちに来る前はこんなではなかった」と思う一方で、「いや、元々こんな人だったかな?」と気持ちがぐらつく事もあります。
たぶん、自分に余裕がなかった頃の私も、同じように人にダメージを与えてきていたのでしょう。
けれども、相手が苛ついているなと感じる時でも、自分の言動に気を付け、皆が心地よくなるよう雰囲気作りの努力を続けていれば、数時間後にはまた穏やかな空気が戻ってくるように思います。
また、今回のような状況に身を置いている事で、私の隣で屈託なく笑い、ふざけ合う子供達の笑顔を守りたいと強く意識するようになりました。
様々な要素により、自分の仕事がうまくいきそうな気配は全くありませんが、私にとっての最優先事項は家族であり、家族全員の心に穏やかな風が吹く事を一番に考えるべきだと、今、強く思っています。