ちょっと前の話になりますが、隣の席の韓国人の同僚が、祖国でポジションを得て、急遽帰国することになりました。
彼は私達夫婦と同じ脳神経内科医で、韓国で患者さんを診ながら臨床研究でたくさん業績を出していたのですが、
「一度は基礎の研究にも触れてみたい」という事で、
2年ほど前、COVID-19の始まったちょうどその頃に、奥さんと1歳のお子さんを連れて韓国からやってきました。
彼は物腰がとても柔らかく、
「基礎研究は始めてでわからない事ばかりなんだ。いつもこんな初歩的な質問で時間をとらせてごめんね。」
と謝りながら、毎回丁寧に質問してきていました。
私達は、奥さんやお子さんとも一緒にプールでバーベキューしたり、動物園に遊びに行ったりと、家族ぐるみでお付き合いしていました。
そんな彼が急遽帰国するという事で大変驚きましたが、
彼から、
「帰国前に2人とゆっくり話してお礼が言いたいんだ。今度のお昼すぎにカフェでコーヒーでもどう?」
と声をかけてくれました。
私達は喜んで話を受け、彼の帰国の前日に、病院のカフェで3人で話をしました。
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カフェに入ると、彼は話し始めました。
「こんな急に帰国しなければならなくなって本当に残念なんだけど、前職の教授が体調不良で早期退職することになって、そのポストに就くよう、打診があったんだ。
本当はあと1年くらいここで基礎研究を続けたかったんだけど、このオファーは僕にとっては逃しちゃいけないチャンスだし、しょうがないかと思ってる。
でも君たちには本当にお世話になったから、帰国前に直接お礼が言いたかったんだ。」
それから私達は、色々な思い出や、お互いのこれからの事を話しました。
彼は言いました。
「近いうちに是非ソウルに遊びに来てね。僕、多分学会の幹事とかやらないとだろうから、必ず君たちを招待するよ。一緒にソウルで美味しい韓国料理を食べよう。」
このような話は、これまで彼から何度も話があり、私達は「ぜひぜひ!」と答えていました。
ただ、今日が最後ということと、彼が本当にいい人なのとで、私は、今まで気になっていた事を思い切って聞いてみることにしました。
「前、反日感情についてニュースがあって、タクシーとか日本人だと乗客拒否されたって聞いた事があるんだけど、そんなことって本当にあるのかな?」
彼は全然動じる気配なく、笑顔で答えてくれました。
「それは珍しい事だからニュースになるんだ。
僕の知っている限り、韓国文化は日本文化の影響を凄く受けていて、アニメとかドラマとか、J-POPとかみんなよく知ってるよ。
反日感情を持つ一部の人たちの行動が珍しいから、ニュースとして報道されるだけだ。」
私はもうちょっと聞いてみました。
「前大統領の朴槿恵さんとか、安倍さんの事凄く嫌っているような態度をとってたよね。日本では、国内の反日感情の人たちに配慮しないとだから、そういう態度をとらざるを得ないって報道されてたけど。」
彼は言いました。
「彼女はああするしかなかったんだ。あの頃、今もそうだけど、中国の習近平の圧力が凄くて、日本に反抗的な態度をとるように強要されてたんだ。中国は強いからね。」
彼はさらに続けました。
「僕らとしては、安倍が日韓関係を悪くしていると思っている。安全保障とか言って竹島を取ろうとしていたりしているし。彼はひどい。」
私は安倍元総理の政策に対しては肯定派だったんですが、これに関しては彼の意志が固そうに見受けられたので、特に意見せずだまって聞いていました。
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日本にいた頃、中国や韓国の反日運動などの報道を見て、お隣の国達に若干の警戒心も持っていたのですが、
ここでは、日本人の私達夫婦も、韓国人の同僚達も、中国人の同僚達も、東アジアから来た者同士であるある話などをしてよく盛り上がっています。
これにインド人の同僚が話に加われば東アジアがただのアジアになり、「私達アジア人はみんな働き者だ」などと話しています。
勿論、わざわざ地球の反対側からやってきた人たちの集まりなので、かなりのバイアスはかかっていると思いますが、
少なくともこちらにきて日本人ということで同じアジア圏の人たちから嫌な事を言われたことはありません(地域のアメリカ人からは差別的な事を言われたことはありますが)。
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私は、
「日本に帰ったら、中国にも韓国にもたくさん遊びに行って、もっとたくさん友達を作りたいな。」
と思いました。