愛犬の死の連絡を受けて

私の実家では、小さな頃から何かしらのペットを飼っていました。

金魚、亀、文鳥ファミリー、ハムスター、犬2匹、猫2匹……。

みんな人間よりも短命なので、子供の頃から、彼らが天寿を全うしたり、突然命が絶たれたりするのを見てきました。

 

そして先日、我が家の最後の愛犬であるシュリが母に見守られながら亡くなった、という知らせを受けました。

彼は私が大学生の頃に実家にやってきたミニチュア・ダックスフンドで、もうかなりのお爺さんになっており、ここ数ヶ月は認知症も進んでオムツをつけていました。

最近は自力で食事もとれなくなっていたので、家族がスポイドを使って水を飲ませたりしていました。

また心不全が進んでいたらしく、最後の数週間は起座呼吸だったようです。夜横になると苦しくて鳴くので、家族が交代で膝枕をしてあげたり、抱っこして寝かせたりしていました。

 

私は地球の裏側にいるので、彼の状態について、家族からの連絡を受けるだけでしたが、

妹や弟は実家から電車で2時間程の所に住んでいるので、仕事が休みになると実家に戻って、両親に変わって彼の看護をしていたようです。

 

シュリの心音と呼吸が止まった、という連絡を受けた時、

私の子供達は状況を理解できず、

「やばい。シュリ頑張れー。」

「でも、心臓もまた動きだすかもしれないでしょ。」

などとKYなコメントをしていましたが、彼はもう死んだのだと説明すると、徐々に状況を理解していったようでした。

 

その夜、長男(11歳)は情緒が乱れて、私が隣で一緒に眠る事にしましたが、彼は寝ようとしても眠れずに、泣いて暴れて、自分でも収拾がつかなくなっていました。

彼は、

「小さい頃はちょっと怖かったけど、こんな事ならもっと優しくしてあげればよかった。」

と言いました。

私は彼の言葉を聞きながら、自分も同じことを考えていると伝えました。

 



 

シュリは、もともと違う家で飼われていました。

お金持ちの家の男の子が自分のお金で血統書付きのミニチュア・ダックスフンドを買ったらしいのですが、その目的は犬への虐待だったようで、毎日のようにシュリをイジメていたそうです。

見かねた彼のお母さんがうちの両親に相談してきて、シュリを引き取ってもらえないかと依頼されました。

うちには私が小学生の時から飼っている小さな雑種犬がいたのですが、一匹も二匹もそんなに変わらないでしょ、という事で、シュリをうちで引き取る事になりました。

 

うちにやってきた彼は、毛並みがとても綺麗な子犬でした。

とても元気で、人懐っこく、すぐに突進してきて人を押し倒したり、ペロペロ舐めたりしてきました。

 

ただ本当に元気すぎて、こたつでほっと一息ついている私を押し倒して顔を舐めてきたりするので、大学生の私は

「ちょっとウザいかも。」

と思っていました。

 

しばらく避けているとシュリもそれを感じたらしく、そのうち私に近づかなくなり、

「どうせ僕の事、嫌いなんでしょ。」

というような目つきで私を見るようになりました。

 

その時私は

「犬もただ一様に愛想がいいだけではなく、自分を大切にしてくれる人とそうじゃない人は分かるし、色々と考えているのだ」

という事を知り、自分の態度を反省してシュリと仲直りしました。

 

 

その後私は大学を卒業して、自分の飼っていた猫と一緒に実家に戻ってきました。

月日は流れて、実家にいるペットはシュリだけになっていました。

 

私の連れ猫はりんごと名付けたシャム猫で、とても可愛いのですが、自分が常に一番に愛されていないと不満な性格の持ち主でした。

シュリの方は新しい友だちができたと喜んで、なんとかりんごと仲良くなろうとしていましたが、りんごの方はシュリの事を受け入れられず、「近寄らないで」とばかりにいつも「シャー」と威嚇していました。

りんごは先住のシュリが家族から可愛がられていることがどうにも我慢できず、

シュリが誰かに抱っこされていると「シャー」と威嚇して爪で引っ掻く真似をしたりして、シュリを家族から引き離し、自分が代わりにその人の膝に乗ってきたりしていました。

りんごに子供が産まれたときも、彼女はシュリに近寄らせようとせず、猫2匹、犬1匹で、シュリは常に猫のご機嫌を伺いながら過ごしていました。

 

そのりんご達も亡くなり、実家のペットはまたシュリだけになりました。

彼はかなりのお爺さんになっていて、もう以前のように全力で飛びついたりはしてきませんでした。

でも人懐っこさは健在で、いつも円な瞳で人々を真っ直ぐに見つめていました。

本当に性格のよい犬だったと思います。

けれども、私を含めた周囲の身勝手な人間や猫たちによって、かなり不憫な時間も過ごしてきました。

 

 

 

亡くなる数日前、シュリは、テラスの見える窓際に布団を移動してもらっていました。

そこはシュリのお気に入りの場所で、毎日、そこから「ワンワン」と叫び、ぐるぐる回りながら、家族が家を出るのを見送っていました。

 

その日も、父の出勤を見送り、その後しばらくして動かなくなったそうです。

毎朝のお勤めをちゃんと果たした後に、彼は亡くなりました。

 

母から送ってもらった最期の写真の中のシュリは、相変わらず毛並みがとても綺麗で艷やかでした。

目は一点を見つめており、家族が家の門を開けて帰ってくるのを、これからもテラスから見つめ続けようとしているかのように見えました。

 

これからは天国で、思う存分走り回ってほしいと思います。

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