2021年注目の科学(Nature)

Nature誌の ”2020年に注目すべきサイエンスイベント” から。

気候変動問題への取り組み復活

2021年は気候変動問題に対する取り組みの重要な年になりそうとのこと。

世界が注目していたアメリカ大統領選挙は、民主党の Joe Biden氏が勝利し、パリ協定への再加入が約束されました。

今年11月には、イギリス・Glasgow で国連の気候変動対策の会議が開催されます。

各国が、それぞれ地球温暖化ガスの削減目標を見直す予定です。

ヨーロッパ連合や中国は、2050–2060 までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにする、という目標を家が得ています。

科学者達は、Biden氏率いるアメリカが、同等の目標値を掲げる事を期待しています。

私も、この問題があって Biden氏を応援していたところが大きいので、

アメリカが軌道修正して舵を取り、地球温暖化対策に向け、各国が一丸となって取り組めるよう、生産的な話し合いが行われるよう、1地球人として見守りたいです。

COVID19 の発端調査

今なお世界中に暗い影を落としている COVID19 ですが、世界保健機構 (World Health Organiztion, WHO) は、その源を探そうとしています。

疫学者、ウイルス学者、動物学者等で構成されるこのグループは、武漢での庁舎を開始する予定です。

最初は、武漢のマーケットで売られている肉や動物から調べ、それがどのように中国全土や世界中に広がったのか、足跡をたどっていく予定とのこと。

発生源の同定には数年かかると見込まれていますが、専門家の中には、今年末には何らかの情報が得られるのではないかと考えているそうです。

COVID19ワクチンとパンデミック

2020年末に、Pfizer と Moderna の COVID19 に対する mRNA ワクチンが第三相臨床試験を通過しました。

2021年にも、注目される COVID19 ワクチンの第三相試験の結果が次々報告される予定です。

特に注目したいのが、 Novavax と Johnson & Johnson のワクチン。

Pfizer, Moderna のワクチンと違って、通常の冷蔵庫での保存が可能なワクチンです。

Novavax はイギリスとアメリカで臨床試験を行っており、2021年の初め頃結果が報告される予定です。

承認されれば、年間20億バイアルのワクチン産生が可能とのこと。

……待ち遠しいです。

オープンアクセスの加速

全ての論文のオープンアクセス化の重要性が叫ばれて久しいですが、2021年はオープンアクセスの年になりそうです。

複数の財団 (Wellcom in London, Bill & Melinda Gates Foundation in Seattle, Washington, and Dutch national fundr NWO, etc.) で構成されるオープンアクセスプロジェクトが、

彼らの財団からの資金で得られた研究結果の学術論文を無料で見られるようにするという規定を、今年1月からスタートさせます。

主導権を握る、Plan S と呼ばれるプロジェクトでは、いくつかのジャーナル(Nature を含む)でオープンアクセス化を進めるよう促しています。

幹細胞ガイドラインの改定

幹細胞の研究を行っている科学者達は、 International Society for Stem Cell Research (ISSCR) がガイドラインの改定を行うのを心待ちにしているそうです。

この改定には、「受精後14日以降の人幹細胞の取り扱い禁止の改定」も含まれます。

これによって研究が進み、想定外の流産の原因の解明など、色々期待できそうです。

アルツハイマー病治療薬、試練の時

このブログでも何度かとりあげましたが、Biojen の aducanumab の FDA 承認の可否が、今年中に行われます。

承認されれば、初の疾患修飾療法となるわけですが、データはスッキリしない内容……否定的な見方の人達も多いようです。

火星は忙しくなりそう

中国の火星探査プロジェクトは2021年も継続されます。

中国の探査機は、2021年2月には火星に到着し、Tianwen-1と呼ばれるミッションが、カメラやレーダーなど13の機器で、火星の水や生き物の形跡などを調査します。

もし成功すれば、中国では初の火星調査になります。

アラブ首長国連邦やアメリカも同時期に火星に到達予定であり、火星は忙しくなりそうです。

待望の望遠鏡が解禁

今年10月には、長年みんなが待ちわびていた、NASA の James Webb Space Telescope が起動される予定です。

詳細はわかりませんが、最も大きく、最もパワフルで複雑な顕微鏡、とのこと。

88億ドルものする Webb は、Hubble 望遠鏡よりも多くの波長を捉え、より詳細な宇宙の様子が確認できるようになるそうです。

私は星を見るのが大好きで、時々 Habble 望遠鏡の写真を流して癒やされたりしているので、より高性能な望遠鏡で撮影された写真を見るのを、今から心待ちにしています。

リップル効果

電波天文学者達は、重力波を同定する新しい方法を公開予定とのこと。

この方法を使って、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアの研究者達が、

遠くの銀河の中心にある、お互いに周回する2つの超巨大なブラックホールから発せられる、

長い波長のリップル波を捉えようと計画しているそうです。

イギリスEU離脱

ヨーロッパ連合 (European Union, EU) とイギリスは、イギリスのEU離脱に先立った諸々の交渉をまだ続けています。

交渉がまとまるかどうかに関わらず、イギリスのEU離脱は、科学者達にとって研究費問題等、暗い影を落としており、それは2021年も続きそうです。

 

私のラボには、スペインから来たポスドクがいるのですが、彼女は

「現在のヨーロッパでは、研究費にさける予算が少なく、

質の高い研究を続けるのにはハードルが高い」

と言っていて、アメリカで研究を続ける選択をしました。

イギリス人の研究者達の中にも、同じような理由で海外に拠点を置く人達が増えるかもしれません。

日本も似たようなところはあると思います……優秀な研究者達が、自国で不安なく研究を行えるような国になってほしいです。

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