先日、投稿先のジャーナルから
「レビューアーのレビューは終わったんだけど、ジャーナルのルーチンチェックで画像に懐疑的な問題が指摘されたので、対応してください。」
という旨のメールが届き、一気に心拍数が上昇しました。
―― どーゆーこと?画像の捏造や改ざんが疑われてるってこと?
AIから指摘された画像の問題点
詳細を見ると、AIが指摘したのは下記2点。
- 挿入画像が広視野画像内と一致しない
- photoshop等を使って画像のコントラスト等が修正されている
問題1. 挿入画像が広視野画像内と一致しない
1番目の問題に関してはすぐに納得。
私は最初に弱拡で撮影後に油浸を使って100倍で撮影したのですが、その時、いい形態のものを撮ろうとしてスライドを動かし、低倍で撮った範囲を超えたところの細胞を撮影していました。
私的には
「同じスライド内だし、論文では "ここの拡大" とか書いていないので問題ないでしょ。」
と思っていましたが、AI的には ”弱拡の撮影範囲内で拡大写真が撮られていないから違う画像”、と判断している様子……まあ、納得できます。
―― いやはや、最近のAIの性能、凄すぎ……。
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とゆーことで、全部の写真を撮影し直しました。
問題2. photoshop等を使って画像のコントラスト等が修正されている
で、問題は2番目。
フォトショはなるべく使わない方がいいとは思っていたのですが、幼い頃からフォトショと戯れてきた私にとってはかなり使い勝手がよく、時間も押していたので全てフォトショでぱぱっとコントラストや解像度などを調整していました。
でも、それが「悪」と認識されたのは今回が初めて。
最近画像の改ざんがよく問題になっていることと関係があるのかもしれません。
……で、大学の microscopy core の担当者に、どうしたらよいか相談してみました。
2段階に調整した事が原因?
今回、私の何が悪かったのか、microscopy coreの担当者に聞いてみましたが、彼女も首を傾げました。
「写真を撮影後にコントラストを調整するのは普通にやる事だし、オリジナル画像の印象が変わるような加工をしているわけじゃないし、普通は問題ないと思うんだけど……」
彼女はしばらく考え、そしてこう言いました。
「photoshopでは16bitの生データは開けないよね?何の拡張子に変えてphotoshopにとりこんでるの?」
私が TIFF ファイルに変換して取り込んでいると伝えると、
「それだと、RGBに変換されてて、色のスペクトラムの範囲は狭くなっているはず。その状態でコントラストを変換すると、さらに範囲が狭くなってて、それをAIが指摘したのかも。」
……なるほど。
私的には、JPEGとかと違ってTIFFはできるだけ情報を保持しているから大丈夫かと思っていましたが、実際に確認してみると、本当にRGBになっていて、16-bitの時とくらべてスペクトラムが255と大幅に狭くなっていました。
生データ(今回はcziファイル)とTIFF変換後のデータを比較してみるとこんな感じ。
Fijiで画像を開いた時
CZIファイル
↑ 表示を見ると、16 bitで16MBになっている。
TIFFファイル
↑ 見た目は同じだけど、表示を見ると、RGBで11MBになっている。
コントラスト表示
Bright & Contrast で中身を見てみると、違いが一目瞭然。
CZIファイル
↑ スペクトラムの範囲は0-65536。
TIFFファイル
↑ RGBだから範囲は0-255。
TIFFファイルのコントラストをphotoshopで変更すると
この0-255のTIFFファイルのガンマ値をフォトショで変更すると、
こんな感じに歯抜けの状態になる。↓
AIはこの歯抜けを指摘したのかもしれません……
Fiji/ImageJで調整した場合
CZIファイル
CZIファイルの生データのコントラストをFiji/ImageJで調整すると、調整後も範囲は広いまま。
この後にRGBに変換し、TIFFで保存すれば問題ないのではないか、と言われました。
TIFFファイル
既にRGBになっているTIFFファイルのコントラストを調整すると、さらに範囲が狭くなって……
これは……よろしくないですね。
教訓:画像のコントラスト調整は生データで
今まで個人的な使い勝手を優先してしまっていましたが、これからはちゃんと原理を考えて、なるべく問題のない画像撮影を心がけようと思いました。
とりあえず、一番の教訓は、「画像の調節は生データで!」
……ただ、この方法で全て作り直したFigureですが、ジャーナル側からの返事はまだ返ってきていません……((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
もしまた何か指摘されたら、真摯に対応しようと思います。