先を見通し、予測し、柔軟に計画する事は、私達の生活にとってとても重要な能力である。
スタンフォード大学のWagnerらの研究グループは、加齢やストレス下の状態により、先をを見通し、柔軟に計画する機能が落ちる事を報告した。
ストレスで記憶の使い方が下手になり、計画性が落ちる
方法
被験者達には、ストレス無/有りグループにわけられ、それぞれ仮想空間の町をバーチャルで歩き、その間の神経活動を機能的MRI(functional MRI, fMRI)で解析、ストレスホルモンを測定された。
ストレス有グループは、試験の間、電気ショックを与えられる、と言われた。
1,2日目には、遠回りのルートを示して、街の様子を歩いて覚えてもらった。
3日目、被験者達は規定のルートを歩くよう指示され、その時の神経活動をfMRIで記録された。
次に、同じスタート地点に立たされ、ゴールまでできるだけ早くたどり着くよう指示された。(この時、ショートカットについては情報が与えれられていない。)
結果
ストレス無グループは、容易にショートカットを見つけ、最も早い方法でゴールまで到達した。
一方、ストレス有グループは、最も早いショートカットではなく、最初に提示された遠回りの道に近いルートでゴールへ向かった。
その間の神経活動を見ると、海馬のplanning activity etc. が、ストレス有グループで抑制されていた。
結論
ストレス状態の人は、海馬関連の記憶の活動性が落ち、未来予測に基づいた計画がうまくたてられなくなる。
The ability to anticipate and flexibly plan for the future is critical for achieving goal-directed outcomes. Extant data suggest that neural and cognitive stress mechanisms may disrupt memory retrieval and restrict prospective planning, with deleterious impacts on behavior. Here, we examined whether …
My View
年末年始、強いストレスを感じているという自覚があり、「ちょっと休暇をとった方がいいかも。」と思っていました。
それと前後して、今までできていた事がうまくできなかったり、仕事の効率が悪くて、色々モタモタ遅くなったりして、「もう頭がダメになったかも。」と落ち込んでいましたが、この論文を読んで少しほっとしました。
ストレスのせいで、色々うまくできなくなっていたかもしれないんだったら、回復可能かもしれない。
とりあえず、不可逆的になる前に、ターゲットをストレス軽減に絞って行動してみよう……
と、思います。
References
- Brown TI, Gagnon SA, and Wagner AD. Stress Disrupts Human Hippocampal-Prefrontal Function during Prospective Spatial Navigation and Hinders Flexible Behavior. Curr Biol. 2020 Mar 30. pii: S0960-9822(20)30342-0. doi: 10.1016/j.cub.2020.03.006.
- Stephanie A Gagnon, Michael L Waskom, Thackery I Brown, Anthony D Wagner, Stress Impairs Episodic Retrieval by Disrupting Hippocampal and Cortical Mechanisms of Remembering, Cerebral Cortex, Volume 29, Issue 7, July 2019, Pages 2947–2964, https://doi.org/10.1093/cercor/bhy162
- Stanford University. "Stress thwarts our ability to plan ahead by disrupting how we use memory." ScienceDaily. ScienceDaily, 3 April 2020. <www.sciencedaily.com/releases/2020/04/200403115103.htm>.