セミナーで、私の以前行っていた研究内容を紹介しました。
思っていたよりもたくさんの人達からpositive feedbackを頂き、とても嬉しかったです。
最初のミーティングで中途退席という洗礼を頂いたPIからも、満面の笑みで "You did it very well !!" と声をかけてもらいました。
せっかくなので、ここに以前の研究内容の一部を紹介したいと思います。
私は以前のラボで、
- 血管性認知症(脳小血管病)
- アルツハイマー病
- パーキンソン病
の3種類の疾患の研究に携わっていました。
今日は、その中でも「血管性認知症」、特に脳内の小さな血管の障害によって認知症を発症する「脳小血管病」について紹介したいと思います。
アルツハイマー病やパーキンソン病に比べると知名度は低いですが、日本人に多い重要な疾患です。
血管性認知症について
認知症で一番多いのはアルツハイマー病で、その次に多いのが血管性認知症といわれています。
また、アルツハイマー病と血管性認知症の合併も多く、血管障害を合併するとアルツハイマー病の病態が悪くなることも知られています。
脳小血管病について
血管性認知症にはいくつかの種類がありますが、ざっくり2つにわけると、
大きな血管が詰る事で、大きな脳梗塞から認知症になる「大血管障害性の血管性認知症」と、
たくさんの小さな血管が詰まる事で、小さな脳梗塞の多発や、血流不足などから認知症になる、「脳小血管病」があります。
脳小血管病は、血管性認知症の中で最も患者数が多く、血管性認知症の約半分を占めると言われています。
脳小血管病の病態機序を探る
私達は、この脳小血管病の患者さんの脳内で、あるタンパクの発現が亢進している事を明かにし、
その亢進したタンパクが、脳内でどのような影響を及ぼすのか細胞実験とマウスを使った実験で検証しました。
この仕事は、いくつかの新聞でとりあげていただき、その記事を読んだ方の中から、
「血管性認知症と診断された自分の家族を治験に参加させてほしい」
と問い合わせの電話をいただきました。
残念ながらこの結果はまだ研究段階で、治験は行っておらず、その時は丁重にお断りせざるを得ませんでした。
けれども、治療を待っている患者さんとその家族の思いは切実なのだと痛感させられました。
患者さんの症状に触れ、患者さんやその家族の生の声を聴ける事が、私達MD, PhDの強みであり、今の私のモチベーションでもあります。
今の私は、病態の先にある患者さん達を常に意識しながら研究を進めていきたいと思っています。