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10年以上前の事ですが、外来で他科から紹介を受けた症例の脳MRIをみて驚いた事があります。(上のイメージは、Lancet の "Picture Quiz" より引用しました。)

その方は、軽度の認知症と空間認識の障害、鬱様の症状があり、脳MRIでは後頭葉を中心とした強い萎縮がありました。

最初は後頭葉の機能障害が起こりやすいレヴィ小体型認知症 (Dementia with Lewy bodies, DLB) かと思ったのですが、文献を調べると、このような所見を持つ症例は後部皮質萎縮症(Posterior cortical atrophy, PCA)と命名されており、その病理はAlzheimer's disease (AD)である事が多いとの事でした。

その時私は、

「典型的なADのMRI所見とはこんなに違うのに、病理はADなんだ。」

と驚きました。

2017年にPCAの診断基準が発表されましたが [1]、実際のところ、PCAにはどのような特徴があるのでしょうか?

 

今回、Dr. Chapleau, Dr. Joieらのグループは、16の国の36箇所の研究センターの1092例の症例データを解析し、PCAの特徴についてまとめました [2]

PCAの統計学的、臨床的、バイオマーカー的、神経病理学的特徴

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彼らの報告によると、PCAの症例には以下のような特徴があったそうです。

PCAの特徴
  • PCAは、一般的なADの平均年齢よりも発症年齢が若い(ADは75歳くらいだけれど、PCAの平均発症年齢は59.4歳)。
  • 女性の方が若干多い(女性60%、男性40%)。
  • ADは他の変性疾患との合併が多いが、PCAは ”純粋にADのみ” という症例が多い。
  • CDRスコア1以上の認知症があり、診断時にはエピソディックメモリーや遂行能力も障害されている事が多い。
  • APOE4の割合は多いけれども、通常のADと比べるとその割合は低く、APOE4との関連はADとしては薄い
  • 剖検では、94%がAD病理(他はDLBやCBD)。

    My View

    神経変性疾患では臨床と病理の乖離がよく見られる中で、「94%がAD病理」というのはかなり高い数字だと思います。

    以前、「ADのタウの広がり方は4種類ある」という論文を紹介しましたが、

    この一つのパターンにもPosteriorパターンがあり、「PCAはADである」と言い切って良さそうに思いました。

     

    それにしても、同じADなのに、タウの進展や脳萎縮の経過が、よくみるADとこんなに違うって、不思議です。

    タウ病理の起源が異なったり、vulnerableな神経群が異なっていたりとか、するんでしょうか?

    そーゆーことも、いつかわかるといいな、と思いました。

    References

    1. Crutch SJ, Schott JM, Rabinovici GD, Murray M, Snowden JS, van der Flier WM, Dickerson BC, Vandenberghe R, Ahmed S, Bak TH, Boeve BF, Butler C, Cappa SF, Ceccaldi M, de Souza LC, Dubois B, Felician O, Galasko D, Graff-Radford J, Graff-Radford NR, Hof PR, Krolak-Salmon P, Lehmann M, Magnin E, Mendez MF, Nestor PJ, Onyike CU, Pelak VS, Pijnenburg Y, Primativo S, Rossor MN, Ryan NS, Scheltens P, Shakespeare TJ, Suárez González A, Tang-Wai DF, Yong KXX, Carrillo M, Fox NC; Alzheimer's Association ISTAART Atypical Alzheimer's Disease and Associated Syndromes Professional Interest Area. Consensus classification of posterior cortical atrophy. Alzheimers Dement. 2017 Aug;13(8):870-884. doi: 10.1016/j.jalz.2017.01.014. Epub 2017 Mar 2. PMID: 28259709; PMCID: PMC5788455.
    2. Chapleau M, La Joie R, Yong K, Agosta F, Allen IE, Apostolova L, Best J, Boon BDC, Crutch S, Filippi M, Fumagalli GG, Galimberti D, Graff-Radford J, Grinberg LT, Irwin DJ, Josephs KA, Mendez MF, Mendez PC, Migliaccio R, Miller ZA, Montembeault M, Murray ME, Nemes S, Pelak V, Perani D, Phillips J, Pijnenburg Y, Rogalski E, Schott JM, Seeley W, Sullivan AC, Spina S, Tanner J, Walker J, Whitwell JL, Wolk DA, Ossenkoppele R, Rabinovici GD; PCA International Work Group. Demographic, clinical, biomarker, and neuropathological correlates of posterior cortical atrophy: an international cohort study and individual participant data meta-analysis. Lancet Neurol. 2024 Feb;23(2):168-177. doi: 10.1016/S1474-4422(23)00414-3. PMID: 38267189.