Nintendo Switch と Wii のどちらのゲーム機を買うかで、プレゼン対決をした兄と妹。
先日、第一志望校に滑り込みで合格した長男(12歳)……ノリノリです。 「合格したら、『犬』と『太鼓の達人』を買ってくれるんだったよね!」 と言い出しました。 その言葉に、私達両親は微妙な反応。 …
以前、Nintendo Switch と太鼓の達人を買ってもらうためのプレゼンの準備をしていた長男 (12歳) と、それを阻止するためのプレゼンの準備をしていた長女 (10歳)。 それぞれ、ネットで調べた情報等を元に、ス …
結果は、妹の圧勝でした。
ここまでプレゼンの質に差がついた状態で、長男の希望している Nintendo Switch を買うわけにはいきません。
「さすがに Nintendo Switch は買えないね……。」
長男激怒
プレゼンさえすれば、Nintendo Switch と太鼓の達人を買ってもらえると思っていた長男は、
「えー、なんでー!?」
と納得できない様子。
「プレゼンしたら買ってくれるって言ったじゃんか!」
―― うーん、私は「プレゼンでお父さんを説得できたら」と言ったのであって、「プレゼンしたら」買うとは言ってなかったけど……。
……彼の中では都合のいいように記憶がすり替わっているようです。
「大体、プレゼンしなきゃ買ってもらえないっていうのもおかしいじゃん!他の友達はこんな事しなくったって、簡単に親から買ってもらえるのに!」
……そうかもしれませんが、そこは「我が家」に生まれてきてしまったのだから仕方がありません。
私はやんわりと説得しようとしましたが、いつもは温厚な彼も、今回は怒りを露わにして抵抗しました。
私はついに声を荒げました。
「本来なら長男くんの方がずっと有利な情報を持ってたはずでしょう。Wii の生産終了の事だって、Parental control ができる事だって、もっと上手に主張すれば、確実に買ってもらえるくらいの強い情報をいっぱい持っていたのに、なんであんなプレゼンしかできなかったの?どーゆー風に伝えたら聴衆が納得するか、少しでも考えてスライド作ったの?プレゼンさえすれば買ってもらえるって思ってたんじゃないの?どこまでプレゼン甜めてるの?」
……彼は悔しさを顔に滲ませ、下を向きました。
―― あー、言っちゃった。こんな正論で攻めたって、人が納得するわけないんだよなー。
私は自分の発言を後悔しながら、彼を見つめました。
が、しばらくすると、彼は顔を下に向けたまま、口を開きました。
「……確かに、僕は聴衆の事を考えていなかった。僕はプレゼンを甜めてた……」
―― え?
彼が素直に認めるとは思っていなかった私は、少し驚きました。
彼は、悔しさをかみ殺すような声で、ゆっくりと続けました。
「……今度は、もっとみんなにわかってもらえるようなプレゼンにする。スライドも作り直す。そしてもう一度発表する。」
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長男の発言に、周りの大人達は驚き、そして拍手を送りました。
「偉い!よく言った!」
「次の発表を楽しみにしてるよ。頑張って!」
長女号泣
その一連のやり取りを受けて、今度は長女が泣き出しました。
「みんな私のプレゼンの方が断然良いって言ったのに、どうして長男くんだけチャンスをあげるの?結局 Nintendo Switch を買っちゃうんだったら、私は何だったの?」
……そのとおりです。
あえて敗因を言えば、Wii の生産終了や Nintendo Switch の Parental control の情報をしっかりと把握できていなかった、という事になるかもしれませんが、そこまでのことを10歳に求めるのは無理な話でしょう。
彼女は彼女が持てる限りの情報を駆使してスライドを作り、大人顔負けのプレゼンをやってのけたのです。
ここで大人達が「長女の希望する Wii を買う」という選択をせず、「長男にもう一度プレゼンのチャンスを与える」という結論を出した事に対して、彼女が納得できるはずもありません。
ただし、彼女の主張を聞いていると、「長男だけが Nintendo Switch を遊ぶ事になるのではないか」という事が一番の心配事だったよう。
私達は、
- Nintendo Switch を買うことになっても、それは長男に買うのではなく、家族の物として購入する事
- 長男だけでなく、家族全員で遊ぶという決まりを作る事
- リビングの外には持ち出さず、テレビの画面のみで遊ぶ事
- Parental control でみんな平等に遊べるようにする事
などを話し、長女に納得してもらいました。
ほとぼりが冷めたところで……
長男と長女がそれぞれ大人しくなり、「じゃあ、そろそろお開きに……」という雰囲気になったその時、ソファーに座ってみんなの話をずっと聞いていた次男 (7歳) が、すっと立ち上がりました。
「みんな、終わったね!じゃあ、今度は、僕がプレゼンするね!」
「え!?」
その場にいた全員がびっくり。
大人達「次男くんもプレゼンするの?」
次男「うん、僕は、スライド作ってないから、スライドなしでプレゼンするよ。」
大人達「何についてプレゼンするの?」
次男「僕の得意な折り紙について。じゃあ、今から発表します!」
そう言って、彼は自分の折り紙の作品と、参考にしている折り紙の本を数冊持ってきて、すぐに発表し始めました。
「これから、僕の得意な折り紙についてお話します。僕の得意な事は、折り紙を折ることです。折り紙は、このように山折りや谷折りを作って、形にしていきます。これが僕がこれまでに作った折り紙です。だいたい、この本やこの本を参考にして作ります。この本は……」
彼は、スライドも台本もない状態で、流れるように話し始めました。
一連の兄妹プレゼン対決騒動で疲れ気味だった大人達は、最初「えー、ちょっと……もう、明日にしてくれないかな……。」という雰囲気でしたが、
次男の流暢な発表に気持ちが切り替わり、再び座り直して聞き始めました。
「あ、ちょっと待って!これも動画に撮らないと。悪いけど、もう一度始めからお願いしていいかな?」
そう言って、私は慌てて携帯を手にとりました。