日本に帰ってきて見に行きたかったものの一つが精霊流し。
子どもの頃から毎年、何隻もの船が、爆竹と鐘の音とともに賑やかに通って行くのを見てきました。
お盆の夜、その一年に亡くなった方の遺族が「精霊船」を作り、爆竹を激しく鳴らしながら、滑車のついたその船をゴロゴロと曳いて道路を練り歩きます。
船の大きさはその家の資金力を反映しますが、一家庭で大きな船を出すのは大変なので、場合によっては複数の家でまとめて作ったり、町内会の船に名前を入れてもらったりして、みんなで盛大に故人を送り出しています。
幼子が亡くなった場合などは、ご両親やそのお友達などで小さな船を作って、数人で船を担いで歩く光景も見られます。大きな船と船の間に、そのような小さな船を見つけると、とても切なくなります。
手作りの小さな船には、子供の写真が掲げられ、キャラクターなどでたくさん飾られている事が多く、「この子は生前、このキャラクターが好きだったんだな。」と心に染みてくるのです。
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去年は仕事の都合で見に行けませんでしたが、今年は15日の夜に精霊流しを見られるよう、日程を調整しました。
子どもたちにとっても5年ぶりの精霊流し。次男にとってはほぼ初めてです。
カンカンカンカン、バチバチバチバチ⋯⋯
激しい音は、耳栓をしていても頭の奥に響いてきます。
子どもたちは「うるさーい!」とおおはしゃぎしながら、船と爆竹、時折燃え上がる爆竹箱の火柱などを眺めていました。
その姿を見ながら、私の頭の中には、自然とあの歌が流れてきます。
私の小さな弟が
何も知らずにはしゃぎまわって
精霊流しが華やかに始まるのです。
さだまさしさんの「精霊流し」。
この歌詞は、この激しく賑やかなお祭りのような雰囲気と、船を曳く人々の背景や心情を、的確に描写しているように思います。
私もいつか、船を曳く日が来るかもしれないし、その前に曳いてもらうことになるかもしれないし⋯⋯どちらが先かはわかりませんが、
ーー 船を曳く事になったら、たくさん爆竹を買って、めいいっぱい鐘を鳴らしていこう。
と思いながら、通り過ぎる船を眺めていました。