シナプスの記憶コードの可視化—ショウジョウバエモデル
動物達は、感覚刺激を受けて、常にポジティブ/ネガティブな状況予測をしている。
感覚の合図は、該当するニューロンでエンコードされており、シナプス可塑性をモニターするはず。
ドイツGöttingen大学のFialaらの研究グループは、ショウジョウバエの嗅覚記憶を司る、キノコ体γ葉のKenyon細胞のシナプス終末を、可視化して観察した。
彼らは、蛍光Ca2+センサーをKenyon細胞に発現させ、特定の神経の軸索週末のCa2+の動きをモニターした。
学習により、軸索の特定のコンパートメントでのシナプス可塑性が誘導された。
また、嗅覚刺激によるシナプス終末のCa2+流動は、連合学習の結果、無相関となった。
これらの結果は、ニューロンの細胞体よりも、シナプス終末の方が可塑性が高く、これらのコヒーレンスが記憶エンコードのパラメータとなる事を示唆した。
Glossary
ショウジョウバエのキノコ体(mushroom body)とKenyon細胞
キノコ体とは、節足動物の脳にあるキノコ型の構造物で、記憶中枢として働く主要な部分。
ショウジョウバエのキノコ体は、学習・記憶の研究に広く利用されており、そのキノコ体の主要神経がKenyon神経。
キノコ体はα lobe、β lobe、γ lobeと分類できるが、γ lobeのKenyon神経は一様な構造をとる。
References
- Bilz F et al., Visualization of a Distributed Synaptic Memory Code in the Drosophila Brain. Neuron. 2020 Apr 4. pii: S0896-6273(20)30217-8. doi: 10.1016/j.neuron.2020.03.010.
- 東京大学分子細胞生物学研究所脳神経回路研究分野HP<https://jfly.uni-koeln.de/lab/research.html>