nat-2020-IFITM3

アルツハイマー病(Alzheimer's disease, AD)の病理学的特徴としては、

アミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)や過リン酸化タウの蓄積、炎症、神経細胞脱落etc.が挙げられますが、

Aβ/タウ → 神経炎症という構図がありました。

 

今回、アメリカ・Memorial Sloan KetteringがんセンターのLiらの研究グループは、

インターフェロンによって誘導されるinterferon-induced transmembrane protein3 (IFITM3) が、γセクレターゼに結合し、Aβ産生量に関与する、という事を報告しました。

炎症 → Aβ産生のメカニズム

著者らは、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を使用して、γ-セクレターゼに作用する蛋白を調べ、 Interferon-inducedd transmembrane protein 3 (IFITM3) を同定した。

IFITM3は、ニカストリン (nicastrin, NCT)やプレセニリン (Presenilin, PS)、アミロイド前駆体蛋白質(Amyloid precursor protein, APP)のタンパク量には影響せず、γ-セクレターゼ活性にのみ作用した。

 

野生型 (WT) のマウスでは、加齢とともにIFTM3とアミロイドβ(Amyloid beta, Aβ)の量が上昇していた。

しかし、IFITM3ノックアウト (KO) マウスを同齢のWTマウスと比べると、老齢でもAβ量が下がっていた。

さらに、5xFADマウスとIFITM3を交配させると、5xFADに比べてAβ産生量とプラーク量が減少した。

 

ADの患者さん脳内を調べると、健常人と比較してIRITM3量の上昇が見られた。

iPS細胞由来のニューロンとアストロサイトではIFITM3の発現があり、インターフェロンγ (IFNγ) 処置により、IFITM3の発現は上昇した。

 

4種類のactive site-directed photoaffinity inhibitorsを使って

IFITM3とγセクレターゼの結合を調べると、

IFITM3は、γ-セクレターゼ活性部位近傍のPS1と結合し、γセクレターゼ活性に作用しているようだった。

 

これらの結果から、

サイトカイン刺激
   ↓
IFITM3発現↑
   ↓
IFITM3とPS1の結合↑
   ↓
γ-セクレターゼ活性↑
   ↓
γ切断によるAβ産生↑
   ↓
Aβプラーク↑

のメカニズムが示唆され、

IFITM3がADのバイオマーカーや治療ターゲットとして期待できると考えられた。

My View

今まで、「Aβ、タウ → 炎症」だと思っていたのですが、

逆に「炎症 → Aβ」の構図もあるのだと知り、興味深かったです。

抗炎症剤内服中のリウマチ患者さんetc.にAD発症率が低いという報告もありますが、

IFITM3を抑えることでAβ産生が抑制されているのかもしれません。

 

ただ、NSAIDsの治験が相次いで失敗しているので、

治療ターゲットとしてイケるのかどうかは、

ちょっと慎重な気持ちになります。

 

AD患者さんでIFITM3のmRNAは劇的に上がってそうだけど、

タンパク量は、そこまで差があるように見えないしなー。

まあ、顕著に上がっているヒトもいるようだし、

少量でも活性に大きく影響することも多々あるようだし…

期待して待っておきたいと思います。

Reference

  1. Hur, J., Frost, G.R., Wu, X. et al. The innate immunity protein IFITM3 modulates γ-secretase in Alzheimer’s disease. Nature (2020). https://doi-org.proxy.library.upenn.edu/10.1038/s41586-020-2681-2
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