長男(11歳)は、いわゆる「座学」が苦手です。
以前、COVID-19で授業がオンラインになっていた時、自主学習の宿題がたくさん出ていたのですが、彼は尽く未提出で、100個くらい提出が滞った事がありました。
先月末、長男(10歳)の Gifted Program の第1回 Zoom ミーティングが行われました。 参加者は、 Gifted Program 担当の先生 クラスの担任の先生 算数の授業 (Accelerated M …
帰国後の授業についていけるように去年から日本のオンライン塾を利用し始めたのですが、
その問題を解くときも、彼は時に強いストレスを感じているように見えます。
また歌を歌っていた方が集中できるらしく、結構な頻度で歌いながら問題を解いています。
彼は人の話を集中して聞くのが苦手で、長い話になると途中からぼーっとなって、他の事を考えているように見えます。
この間受け取った学年末の成績表で、得意だった算数の成績がちょっと落ちていたので、
「学校の授業が難しくなったの?」
と聞くと、
「授業は難しくないんだけど、例えば先生が "What is ....?" って聞いてきた時、
最初の方は大丈夫だけど、途中から頭の中に歌が流れてきて後半のパートが聞こえなくて、質問に答えられない時があるんだ。」
と話していました。
他にも、忘れ物が多かったり、物をよく無くしたり、部屋の片付けが苦手だったり……といった彼の日頃の言動から、私達夫婦は、長男に不注意優位型の注意欠陥多動性障害(Attention Deficit/Hyperactivity Disorder, ADHD)の気質があるのではないかと思っていました。
以前 Gifted Program で学校のカウンセラーと話す機会があったので相談してみましたが、
彼は学校生活には支障がないようで、その場合は ADHD のスクリーニングにはのれない、と言われました。
学校で問題がないのならよいのですが、
家では彼の妹弟と比べて言動を注意される回数が明らかに多く、
もし ADHD なら、彼は自分でもコントロールできない事で理不尽に叱られ、自尊心が損なわれていっている可能性があります。
私達夫婦は、ADHDの症状や、それに対する周囲の適切な反応の仕方について調べ、実行するよう心がけてきました。
けれども、元来努力家で、根性論が好きな夫は、頭では理解しようとしていても、なかなか感情がついていかないようです。
ある日、勉強を放棄した状態でゲームの時間がきて、友達と大声で叫びながらオンラインゲームをしている長男に、夫はとうとう "キレて" しまいました。
「なんで自分で決めたルールを自分で守れないんだ。
そう言って夫は家を出ていきました。
残された長男はポロポロと泣いています。
私は、
「やっぱり家族だけでなんとかするのは限界かもなー。
学校では問題ないって言われても、このまま有耶無耶にしてたら、
大人になって仕事を始めてから、今回みたいに上司から怒られまくって本人が辛い思いをする可能性が高いし……」
と考え、この機会に長男に ADHD の診断基準について話しました。
彼は、ADHD についての本を食い入るように読んだ後、
「僕、絶対コレだと思う!」
と言って顔を上げました。
その表情は晴れやかで、彼は、自分が今まで苦労してきた事柄が本の中で説明されている事に安堵したようでした。
その後家族で話し合い、長男にとって最もよい環境を整えたり、私達両親が彼の言動に対してどのように対応していったらよいか指導を受けるため、
ペンシルバニア大学の小児精神科で診察を受ける事にしました。
ペンシルベニア大学には、Children's Hospital of Philadelphia (CHOP) という小児科のとびきり大きな施設があり、アメリカ全土から小児の患者さんが集まってくるそうです。
そしてその CHOP の中に Center for Management of ADHD というデパートメントがあり、そこで ADHD の評価を行ってくれるとホームページにかかれていました。
Children's Hospital of Philadelphia has developed the region's largest and most comprehensive center for diagnosing and treating attention and learning problems in children and adolescents.
私はセンターに電話して、ADHD Evaluation を受けたい旨を相談しました。
保険など必要事項を伝えて、リストに載せてもらうと、センターから山のような書類の案内が届きました。
- 親からみた ADHD 関連症状に関する質問事項
- 発達歴や既往歴、家族歴や家族構成などに関する質問事項
- 宿題がどれだけできるかの自己評価&他己評価
- 最新の学校の成績表や心理検査の結果等
- 学校生活について、学校の先生への質問事項
すべてオンラインで記入していくのですが、それぞれ、50個以上の項目があります。
両親の学歴や職歴、離婚歴、兄弟は両親が同じか(full siblings)片親が違うか(half siblings)等、
家族一人ひとりの事柄についても詳しく質問されました。
学校の先生にもフォームに入力してもらうため学校に連絡すると、
さらにその開示依頼の書類を2種類提出する必要があると言われ、結局1日では終わりませんでした。
上記の書類提出が一通り揃った後で、数カ月後に受診のアポイントメントが取れる(早くて3ヶ月、平均で8ヶ月くらい)そうです。
帰国までに受診にたどり着けるかどうかちょっと心配ですが、
今回最初のアクションを起こすことができてよかったと思います。
また、今回ADHDの症状について長男と話し合った後から、彼の行動が大きく変わりました。
自分が自然ととってしまう行動に対して、周囲がどう感じるのか、
自分と周囲の反応のギャップについてある程度理解した事で、
「この時はこーゆーふうに行動した方が良さそうだな」
と、自分で考えるようになったようです。
ある意味、認知行動療法っぽい役割があったんじゃないかと思います。
学校での評価が基準に満たなかったり、受診時には症状が軽くなっていたりして、実際には診断がつかない可能性も高そうですが、
いずれにしても、息子の現状や将来にとって、最も適した環境を選択していくための、
参考資料の一つにできたら良いな、と思います。
ADHDっぽい気質こそ、これからの社会で生きていく上で必要なような気がします。自分を含む親世代は精神論で、そうした気質を修正されてきたのかもしれません。日本のような同調社会で生きていくには、そのほうが楽かもしれないけれども、オンリーワンが希求される近未来では正反対になるかもしれませんね。
そうですね。ありがとうございます。
私も日本で育ってきて、出る杭として打たれてきた感があるので、帰国後、和を重んじる文化で長男の個性が打たれてしまわないかちょっと心配です。
勉強に関しても彼は得意分野が偏っているので、今のような得意分野の強化を中心とした教育環境は彼に合っていそうですが、逆に不得意分野の補強を優先される教育環境だと、本人にとって辛い学校生活になるかもしれません。
私も、これからの時代は、多くの強い個性がパワーを生み出し、社会を牽引していくと思います。
色々な情報を集めながら、彼の長所が存分に発揮できる場所を、みんなで選択していきたいです。