LGBT

社会では、2-10%の人達が、同性のみ or 同性と異性両方のパートナーを持つと言われている。

双子や家族歴などを調べた研究結果では、これらの傾向に一部遺伝子の関与が示唆されてきたが、複雑性を調べるには検定力不足なものが多い。

 

今回、米ハーバード大学、米マサチューセッツ総合病院、豪クイーンズランド大学の研究者らは、UKバイオバンクと23andMeのデータ(477,522人)を用いてGWAS解析を行った。

LGBTと遺伝子

同性愛に遺伝子が関与するか

検査した全ての遺伝子の中で、遺伝子変異の関連が示唆する同性愛行動は、男女合わせて8-25%だった。

その結果は、其々の遺伝子が少しずつ関与しているというもので、特定の単一遺伝子の関与は認めなかった。

しかしながら、複数の遺伝子による関与(polygenicity)が示唆される中で、5種類の遺伝子変異が有意差を持って同定された。

その中で、SNPs (rs28371400-15q21.3) は男性型禿頭とリンクしており、性別に関与するTCF12遺伝子の近くにある事から、性ホルモン制御の関与が示唆される。

また、SNP (rs34730029-11q12.1) は嗅覚に関与するいくつかの遺伝子と強くリンクしており、興味深い。

GWAS

しかし、これらを全て合わせても、特定の遺伝子が同性愛行動に影響する割合は1%未満である。

 

今回の結果は、同性愛行動に単独もしくは数種類で関与する遺伝子(いわゆるゲイ遺伝子)と言われるものはなく、より多くの遺伝子が少しずつ関与している可能性を示唆し、その行動背景はより複雑である事が分かった。

今後、このような遺伝子背景の上に、社会や文化等がどのように影響するか等、さらに理解を深めていく必要がある。

My View

近年、LGBTQQ (lesbian, gay, bisexual, transgender, queer, and questioning) を特集した記事や番組などが増え、LGBT、LGBTQQへの理解が少しずつ深まってきているように感じます。

フィラデルフィアにある、独立記念、奴隷解放、女性の市民権の象徴として国民から愛されている自由の鐘(Liberty Bell)でも、LGBTに関する解説が追加されたそうです。

 

以前、現東北大学の山本大輔教授が1996年に、ショウジョウバエの変異体(satori)でfruitless遺伝子の変異でオスが同性に求愛行動をとるようになる事を明らかにした話(Fujitani et al, PNAS, 1996)を聞いていたので、私は何となく単一遺伝子の関与もあるんじゃないかなーと思っていました。

また山本先生の研究室では、2015年にfruitless遺伝子変異体でも環境因子によって異性に求愛するという研究結果を発表していて(Kohatsu et al, Nat Commun, 2015)、遺伝子と環境双方の影響が関与している可能性がありそうだと思いました。

LGBTと遺伝子についての研究を少し調べてみると、性的指向と遺伝子変異について示唆する論文(Hamer et al, Science, 1993Sanders et al, Psychol Med, 2015)や、エピジェネティックスの関連を示唆する論文(Ghahramani et al, Biol Sex Differ, 2014) などは他にもあるようです。ただ、今回これだけの数の人を調べて明らかでないのであれば、単一遺伝子や数種類の遺伝子関与の可能性はなさそうだということでしょう。

性的指向の決定にはより複雑な因子が関与しているのだと思います。

 

私はアメリカに来て、コメディアンのEllen Degeneresさんの番組をみる機会があり、彼女の人柄に惹かれました。その後、彼女がレズビアンである事で一度社会から疎外された事や、それに対してどう向き合ってきたかを特集した記事を読み、感銘を受けました。

一方で、今、日曜日に話を聞きにいっている教会では、聖書の教えに反するとしてLGBTQQに対して厳しい立場を通しており、全ての人の理解が得られるまでにはまだ時間がかかりそうな印象も持ちます。

” 理解するには、まず知ることから ”

これからも多くの情報がより多くの人々に届き、理解が深まっていってほしいと思います。

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