今後の方針等について話し合った後、私達は先生方と別れ、脳外科Dr.から説明を受けました。
本日はEICUへ入院すること、眼窩底骨折があるも、外眼筋はかんでいないようなので緊急手術までは必要なく、明日形成外科を受診して今後の方針を決めること、MRIの所見については現時点ではよくわからず、後日造影MRIにて精査すること……
「印象としては良性のgliomaのように思いますけどねぇ。DAIっぽくはないし、DAIだったら大変ですしね。」
主治医の先生は、軽い口調で説明してくれました。
けれども、良性のgliomaだった場合でも、場所が深くて脳室に近く、大きくなれば脳を圧迫して様々な症状がでる可能性があります。この深さだと手術で切除するのは難しそうです。DAIだった場合は、MRIで写っている部分は氷山の一角という可能性があります。今後CTEの症状がでる可能性だって……
―― 患者側に回ると、最悪のケースの方ばかりを考えるものなんだな。
私は、これまでの自分のムンテラを思い出しながら、主治医の説明を聞いていました。
その後、看護師さんから入院についての説明を受け、私たちはたくさんの書類を渡されました。
「お子さんはまだ小さいので、彼の性格とか、好きなこととか、落ち着くこととか、何でもよいのでたくさん書いてもらえますか?」
看護師さんから言われ、私は、その欄から書き始めました。
とても人懐っこく、どんな人にも話しかけます。
明るい性格で、いつも元気にしています。
好奇心が旺盛で、何でも人に質問してきます。声をかけてあげると喜ぶと思います。
物わかりがよく、日頃からあまりわがままを言いません。
とても我慢強い性格で、指示があるとそれをしっかりと守ろうとします。
書きたいことは、後から後から出てきて、枠が足りませんでした。
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EICUに移動し、私は息子と再び対面しました。
彼は病衣に着替えさせてもらっていて、看護師さんがベッドの周りを整理していました。
息子に近づくと、彼の両目頭の窪みにたくさんの涙が溜まっているのが見えました。
「ああ……」
私が小さく声を上げると、看護師さんが気づいて、彼の涙を拭いました。
「さっき、『お母さん』って言って、ちょっと泣いてしまって……。」
EICUでは付添ができないので、今夜彼はこの場所に一人で泊まることになります。
私は彼に話しかけました。
「このベッドにはAlexaがあるんだって。好きな動画見ていいからね。」
「おしりたんてい見れる?」
「見れるよ。」
「やったぁ。」
彼は目を瞑ったまま微笑みました。
「お、初めて笑った顔を見れたな。」
看護師さんは、彼に優しく話しかけました。