本庶佑先生がノーベル賞を受賞されるという知らせが届き、私達夫婦も本庶先生の話で盛り上がりました。
タラレバの話が嫌いな夫にしては珍しく、
「学生時代に本庶先生の研究室を訪ねていたら、今の状況は違っていたかもなあ」
という言葉まででて驚きました。(今、よっぽど弱っているようです…)
私は1回本庶先生の講演を聞いただけですが、学生向けの講演にも拘わらずイントロ部分をどんどん割愛して要点だけを強い口調で説明されていて、とても印象に残る講演でした。
その講演は僅か1時間程度でしたが、感銘を受ける言葉がたくさんありました。
何ができるかでScienceを考えてはいけない
研究を進める動機によって研究者の質がわかる
- 「何ができるか」 → 凡人
- 「何が知りたいか」 → 資質あり
- 「何が課題なのか」 → 大物
「自分たちにできるかどうか」を基軸にして研究を進めている人は多いと思います。
現実的にしょうがない部分もあるでしょう。
「知りたい」という気持ちを追求したいという欲求は、どんな研究者にもあると思います。
ただ、実行するためにはそれなりの環境と、資金提供者を納得させるだけの根拠や説得する力が必要です。
「何が課題なのか」を見極めてそれを追求できる人は極少数だと思います。
けれども、今はここを目指したいです。
そうでなければ、私の場合、臨床医として目の前の患者さんの為に働く方が世の中への貢献度が高いと感じます。
自分の資質を磨く「3C + 3C」
- Curiosity: 好奇心を大切にして、
- Courage: 勇気をもって、
- Challenge: 困難な問題に挑戦すること。
- Confidence: 必ずできるという自信をもって、
- Concentration: 全精力を集中し、
- Continuation: 諦めずに継続すること。
特に、Curiosity, Challenge, Continuationの3Cが最も重要だと仰っていました。
PD-1の発見から創薬へ実現させる過程には、まさにこの信念を貫いてこそだと感じました。
環境を選ぶ
- 世界トップレベルのサイエンスのレベルを学ぶ
- 失敗したときにどうするのかを学ぶ
今のラボは世界トップレベルだとは思うのですが、どこまで学べるか…これからの自分次第です。
良い研究とは何か(流行を追わない)
歴史に残る研究は、なぜ歴史に残るのか。
それは、独創的、原理的だから。
流行を追わないとは?
流行を追うという意味は2つある。
これをしてはいけない。
2つ目は、「今現在における課題がはっきりした研究に取り組む」という意味。
例えば、物理学の論文には著者が1000人くらいいるものもあるが、それは、課題がはっきりしていて、大きな装置がいるから。
課題が何かを追求するということと、流行を追うという事は別である。
今のラボは、いい研究を断続的に発表しているとは思うのですが、中に入ってPI達の話を聞くと、やや目先の結果を重要視しているようにも感じます。
これは、このラボだけでなく、アメリカ全体の研究室にある程度共通すると、他の大学の研究者から聞きました。
アメリカでは皆が同じ流行に飛びつきやすい傾向にあるそうです。
これに比べると、日本の研究の方が独創性なものが多いようにも感じます。
また、これは講演の内容ではないですが、本庶先生の過去のインタビュー記事でも気になる言葉がありました。
研究は一朝一夕のものではない。
サポートする側も、研究者と研究内容を長い目でみないと
いい研究は生まれない。
オックスフォード大学のAndrew John Wiles博士が
こっそり10年くらいかけてフェルマーの最終定理を証明したように、せっかく研究するなら、10年、20年かかってでもコツコツと続けて目的を達成できるような研究を持っていたいです。
けれども、最近の研究資金は大体2,3年や5年区切りのものが多いので、そのような研究だけを続ける事は難しいです。
数年で結果がでるような現実的な研究で資金を繋ぎつつ、追求するのに何十年もかかりそうな、自分が本当に大事だと思える課題にこっそりコツコツと取り組めたら幸せだな~と、思う今日この頃です。