取調室

アメリカに渡る前、携帯電話を解約しましたが、その際、「電話番号まで手放すかどうか」という事で悩みました。

月数千円払って電話番号を保持しておく、という選択肢もあったのですが、「もしかしたら結構長い間帰国しない可能性もあるし。」という気持ちもあり、迷った挙げ句、それまで使用していた携帯電話の電話番号を手放しました。

そして去年帰国した時に、新しい携帯の電話番号を入手したのですが……

この電話番号、いわゆる「事故番号」だったようです……

関係ない電話が次々とかかってくる

新しい携帯電話を使用し始めてからすぐに、私の携帯には知らない会社から次々と電話がかかってくるようになりました。

借金未払いの請求、借金の救済措置についての相談窓口や法律事務所、転職斡旋企業、引越会社、美容用品販売会社……

ほぼ毎日、複数件の会社から電話がかかります。

着信をそのままにしておいても、電話に出るまで何度もかかってくるので、必ず電話に出て「私は違う人ですよ。」と伝えなければなりません。

 

最初は「以前使用していた人のデータが残っているのかな。」くらいにしか思っていなかったのですが、相手は、私がこの携帯電話を使い始めた後も、継続してこの番号を使っているようです。

ほとぼりが冷めてきたかなーと思っても、すぐまた一斉に特定の種類の会社から電話がかかってきます。

 

電話の相手に確認すると、その人は、例えば借金返済についての見積もりサイトなどにこの電話番号で一斉問い合わせをしていて、その日や翌日などに関連会社から一斉に電話がかかってくる、というカラクリのようでした。

名前も、「イトウさん」「タカハシさん」等の複数の名前を使い分けている他、時々、「コウノタロウさん」など、「明らかに違うでしょ!」と思わず突っ込みたくなるような名前を使用している事もあります。

 

電話に出て「違いますよ」というだけですが、その度にウィルパワーを消耗していました。

電話番号を変えた方が良さそう……でも、今は変えると大変だからまた今度……などと考えていると……

ある日、「人違いですよ。」と返答するだけでは済まされない事態に遭遇する事になりました。

警察から電話

その日は、同じマンション内の話し合いの集まりで、気の合うお母さん達に、私この事故番号について話をしていました。

「この番号、やばいんだよ。知らない会社からどんどん電話がかかってきて……」

丁度その時、私の携帯が鳴りました。

……知らない番号です。

「ほらね!」

 

そう言いながら私はその場を離れ、電話に出ました。

「もしもし。」

「もしもし。こちらは◯◯警察署捜査第二課△△という者ですが、少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

―― 警察から電話が来たのは初めてだわ。

私は少し緊張して「いいですよ。」と答えました。

 

「ありがとうございます。実は今、ある事件の捜査をしておりまして……。」

警察の者と名乗る電話の相手から伺った話をまとめると、以下のような内容でした。

  • ある活動をしている弁護士のホームページのお問い合わせ欄に、「殺す」などの脅迫メッセージを送っている人がいる。
  • その脅迫者は、脅迫メッセージと一緒にこの電話番号を入力している。
  • IPアドレスは特定できないように細工している。
  • 他にも複数の電話番号を書き込んでいるので、該当する電話番号の持ち主に話を聞いて回っている。

 

一連の説明を受けたあと、私の職業や、特定の日の特定の時間帯に何をしていたか、被害者の活動内容を聞いて心当たりはあるか……などを尋ねられました。

また、警察署の管轄は別の都道府県でしたが、私の自宅近くの警察署にアポイントメントをとるので、次の日にその警察署に来て話を聞かせてほしいと言われました。

 

「あなたが本当に警察の人かどうか、確認できますか」と私が尋ねると、警察署の電話番号にかけなおすように言われました。

教えられた電話番号をネットで検索すると、確かに警察署……で、電話をかけると警察署に繋がり、担当の人に内線で繋がりました。

……色々手の込んだ詐欺を働く人もいるかもしれませんが、とりあえずホンモノのようです。

 

私は、翌日警察署に出頭することになりました。

警察署で事情聴取

翌日、指定の時間に警察署へ出向き、受付で名前を伝えました。

すると、スーツ姿の2人の男性がやってきて、名刺を差し出され、丁寧に挨拶されました。

「◯◯警察署捜査第二課巡査部長の△△です。本日はお忙しいところお越しいただきありがとうございます。」

その後、別室に移動しました。

 

別室は……いわゆる刑事ドラマで出てくる「取調室」のような感じの場所で、小さな机にデスクスタンド、その隣に記述用のもう一つの机、といった構成の部屋でした。

―― なんか、カツ丼でも出てきそうだな。

 

巡査部長さんは、捜査の詳細と、私が呼ばれた理由について話してくれました。

  • 脅迫事件の犯人を探しており、電話番号の持ち主に事情聴取を行っている。
  • 一応、電話番号の持ち主は容疑者という括りにはなるが、IPアドレスを隠蔽できる人がわざわざ本人の電話番号を書き込むなんてことはしないと思うので、ほとんど疑ってはいない。他に需要人物と思われる人も一人浮上している。
  • 関係なさそうな人達のアリバイを立証する捜査を、業界用語では「つぶし」と呼んでいるが、私はその捜査対象になっている。

 

そして、私は身分証明書のコピーをとられ、手帳をみながら該当日に何をしていたのか一つ一つ答え、それを立証する方法を伝えました(例えば、学会に行っていた時期だったらそのHPなど。)

最後に前姿と後姿の写真を撮られ、捜査は終了しました。

 

 

せっかくなので、警察の仕組みについても色々質問されてもらうと、

  • 捜査第一課 → 殺人事件 etc.
  • 捜査第二課 → 詐欺などの知能犯事件 etc.
  • 捜査第三課 → 窃盗事件 etc.

等、犯罪の種類によって担当の課がわかれているそう。

――刑事ドラマで捜査第一課という言葉をよく聞くのは、殺人事件だったからかー!

と、納得しました。

事故番号に気をつけて

今回はほとんど疑われていなかったので、二時間程度の事情聴取だけで済みましたが、もっと疑いが強い場合や、他に重要容疑者がいない場合は、拘束される事もあるそうです。

また、「犯人かも」と思う場合は、ご丁寧に前日に電話をかけたりせずに、令状をとってイキナリ自宅に踏み込むこともあるそう。

(相手が本当の犯人だったら、丁寧に対応している間に逃げられちゃうので、当たり前ですね。)

 

なので、私はこの事故番号を持ってアンラッキーだけれども、ある意味ラッキーだったのかも……などと考えました。

でも、仕事の時間を削って出頭しなければならず、その時間に時間給がでるわけでもないので……二度目は要らないかも。

 

警察の方からは、「事件が解決するまでは、できれば電話番号を変えないでほしいけれども、それが過ぎたら、この番号は早いこと手放した方がいいですね。」とアドバイスされました。

 



 

事故番号にはお気をつけください。

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