ある日の事。
長男 (12歳) が何気なく話しかけてきました。
「あのさあ……本当は僕だって、時々言いたい事はあるんだ。」
僕にだって、言いたいことはある……んだけど。
唐突な切り出しに私は少々驚きました。
―― なんか不満が溜まってるのかな?
どう返事をしたら良いか考えあぐねているうちに、彼は続けました。
「でもさあ、最初は僕の方が正しいって思っていても、お父さんやお母さんと話していたら、最後は必ずお父さんやお母さんの方が正しいように思っちゃうんだよなー。なんでだろ?」
……彼の言わんとしている事はなんとなくわかりました。
最近、自分の意見を持ち始めた息子
同い年の子供達と比べると、彼はあまりわがままを言ったり、激しく自己主張したりするタイプではありません。
が、それでも最近は、注意された時に言い返してきたり、時折自分の意見を主張してきたりするようになりました。
親からすると、息子の成長を嬉しく思いますが……
ただ、その主張にはまだ深みがなく、子供の浅知恵の域を出ることはありません。
同じような考えを何度か懐きながら子供時代を過ごし、その結末を要所要所で経験してきた私達大人からすれば、彼の主張の穴や論理性に欠ける部分が明白で、容易に指摘できてしまうのです。
彼の意見を尊重しながら、丁寧に言葉を選んで対話する事を心がけてはいますが、結果だけみると、息子の主張は毎回、簡単に論破されてしまっている形になります。
それを彼の立場からみると、
「なぜか毎回、最後はお父さんやお母さんの意見の方が正しいように思えてきてしまう。なんかいいように言いくるめられているのかな?」
という感覚になるのかもしれません。
相手の方が正しいと認める能力
ただ私は、このようなコメントができるところに、彼の、人としての素晴らしさを感じました。
ふつう、自分が論破された時、それを素直に認めて「相手の方が正しいと思う。」と言える人は、そんなに多くはないでしょう。
特に子供の場合は、立場が悪くなると感情的になって相手の話を聞かなくなったり、支離滅裂な事を言って話し合いにならなくなったりする事が多いと思います。
そこをぐっとこらえて、素直に相手の意見の良い部分を認め、論理的な会話を維持できる事は、彼の能力の一つと言っていいと思います。
Nintendo Switch と Wii のどちらのゲーム機を買うかで、プレゼン対決をした兄と妹。 結果は、長女の圧勝でした。 ここまでプレゼンの質に差がついた状態で、長男の希望している Nintendo Switch …
これから大人になっても、ずっと持ち続けて欲しいです。
息子とのディスカッションを楽しみに
今はまだ、主張が穴だらけで簡単に論破されてしまう息子ですが、このようなディスカッションを続けていくうち、私は、彼が少しずつ論理的に会話できるようになってきていると感じています。
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「まあ、お父さんやお母さんの方が長く生きていて、色々経験しているから、今はまだ、お母さん達の意見の方が正しいと感じる事が多いかもね。
でも、長男くんも分かっていると思うけど、お父さんもお母さんもただの人間だから、いつも正しいわけじゃないんだよ。
そのうち、お父さんやお母さんの言っている内容にも『おかしいな』と思うことがたくさん出てくると思うから、その時は遠慮なく『ここはおかしい』って言って、議論したらいいんだよ。
そんな話がたくさんできるようになったら、お父さんだってお母さんだって嬉しいと思うよ。」
私がそう答えると、彼は
「そっかー。わかった!」
と言って、この会話は終了しました。
……本当に、その日が来ることを楽しみにしています。