私がお弁当を作るようになった理由

毎朝、家族5人分のお弁当を作る。

今では当たり前になりましたが、新婚当初から欠かさず続けている、、、というわけではありません。

 

その時は、次男が生まれて、まだ首も座っていない頃だったと思います。

夫の様子が少しずつ変わってきたと感じていました。

口数が少なくなり、話しかけても生返事が多くなりました。勉強時間になってもなかなか勉強を始めない子供たちに、きつい言葉を使うようになりました。

私には夫の変化の理由がわかりませんでした。元々、よくしゃべったりふざけたりするタイプの人ではなかったので、これが彼の性格なのかと不満を募らせていました。

ある時、些細な事がきっかけで夫と口論になりました。私は最近の夫の態度を非難し、夫からは家で居心地が悪いと非難されました。

しばらくして、夫から、最近、任せられる仕事が多すぎて自分の実験をする時間がとれず、心に余裕がなくなっている事を打ち明けられました。

私は驚きました。

修練医時代、要領が悪くいつも仕事が空回りしていた私に、効率的な仕事の仕方をいくつも示してくれたのは今の夫でした。その夫が、仕事で余裕がなくなるなんて、私には想像できていませんでした。

私は、夫の苦労に気づかず、サポートできなかった事を謝り、夫は、家庭に気を配る事ができなかった事を謝りました。

 

異変は次の日に起こりました。

 

朝起きると、夫の耳が聞こえにくくなっていました。診断は

「突発性難聴」

でした。

原因は不明ですが、私達には、最近のストレスと前日の口論が関係しているように思えました。夫はステロイド治療を開始し、任せられていた仕事を2/3ほどに減らしてもらいました。

 

私は何かできることがないか考えました。

「毎日大変だと思うから、お弁当はいいよ。」

と、以前彼から言われて、

「あまりお弁当は好きじゃないのかな。」

と、お弁当を作らなくなった事を思い出しました。

私は、

「明日、お弁当作ったら、持っていってくれるかな?」

と夫に聞いてみました。

夫は、たいていの私の提案をのらりくらりと断るのですが、その時は、

「作ってくれたらありがたいけど。」

と返してきました。

次の日から、私は夫のお弁当作りを再開しました。

 

数か月後、夫の聴力は以前の状態近くまで回復しました。

私にできることはほとんどありませんでしたが、お弁当が、彼を想っている事の意思表示になればと思い、毎日続けています。

 

最近、時々、夫の様子に、その時の出来事を想起する事があります。今回は、原因に心当たりがあります。

私にできることは少ないですが、せめて毎日のお弁当と優しい言葉がけは続けていきたいと思います。

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